親親なアルシュ
次話を読んでいただきありがとうございます。
よろしくお願いします。
アルシュはヴィクティア母上が来ての、クレティア両親との話し合いが始まり…
ええ…オラ、アルシュだぞ。現在…父親と母親代理で、ヴィクティア母上が来てくれているぞ。ぶっちゃけ、産んでくれた母親のファリティアより、ヴィクティア母上の方が気が合うので、助かるぞ。
アルシュとヴィクティアは隣に並び合って座り、その対面にはクレティアの両親、ルクセオン共和国の大貴族ロディオン家の時期ご当主である父親とその妻でクレティアを産んだそっくりな母親が座っている。
その間に担任のアキコが座っていて
「こういう事なのです」
と、アルシュが起こした?事件の顛末を伝える。
ヴィクティア母上は微妙な顔で、クレティアの両親は俯いていた。
アルシュはクレティアの両親を見て思った。
そりゃ…そうなるわ。娘が飛んでも無い間違いをして、それで一人が退学寸前になったんだし…。
クレティアと同じ金髪の父親が頭を下げ
「ヴィクタリア皇帝陛下正妃ヴィクティア様、この度の事は、本当に申し訳ありません」
母親も同じく頭を下げ
「なんてお詫びすれば…」
ヴィクティアは冷静に
「まずは、お顔をお上げください。お二方…」
真面にクレティアの両親は顔を見られない。
ヴィクティアは右にいるアルシュに
「アルシュ。今後は…どうしますか?」
アルシュに振った。
問題ある答えを言うなら、ヴィクティアが止めるという感じにはするだろう。
こちらも横暴な所がありますので、ケンカ両成敗という事で…にしたいヴィクティアだが…。アルシュは冷静な故に…。
アルシュは口にする。
「ヴィクタリア帝国に帰ります」
アキコ担任が席を立ち
「待って。アルシュくん。今回の事は君に罪はないわ。だから…このまま、この学園で何時も通りに勉学に励むべきよ」
アルシュがアキコ担任を見詰めて
「それが本当に可能なんですか? ぼくは、ムリだと思います。このような大きな事件を起こして、はい、それで何時も通りとなりますか? なりません。絶対に」
アキコ担任が
「それは私が保証します。全力でサポートをします。だから」
アキコ担任をアルシュは睨み見て
「日光国の親王としての地位を利用してですか…」
アキコは怯み
「それを使っても…」
アルシュは項垂れ
「愚かです。権力を翳すと人心は付いてこない。その権力を翳す元に、ぼくがなると…ぼくはますます、悪評が立って、真面に暮らせないでしょう。良い経験でした。やはり、本国のヴィクタリア帝国で、自分の事を受け入れてくれる友人や、家族、許婚と一緒に勉学に励んだ方が、良いと…。ねぇヴィクタリア母上」
ヴィクティアはふ…と息を吐く。
見事な正論だ。全くの隙が無い。確実に女性には嫌われるが…。物事を通すには十分な正論だ。
元々、この留学もルクセリア共和国といった四カ国の戦争があって、アルテナの皇帝としての未来が揺らいだ所為での処置。
その戦争の影響で他国にも波及して上手く行かないとケチが付くとやはり、ヴィクタリア帝国で暮らした方が良いという結論になるだろう。
アルテナが次期皇帝という印象が変わる事もない。
なぜなら、アルシュが皇帝になると、こういう問題が勃発しやすいという側面が付くからだ。
まあ、何より、本人が帰りたがっている。
ヴィクティアが
「本人がそう言っていますので、本人の意思を尊重します」
アキコ担任が
「待ってください! まだ、話し合う余地が…」
ヴィクティアが右手に持つ扇子を強く閉じて、そこから凜とした音が放たれ
「話し合いの余地は、ありません。直ぐに転入手続きを行いますので…。これはアルシュの母上であり、ヴィクタリア帝国皇帝アルファスの正妃ヴィクティアであるわたくしの決定でもあります」
アルシュは内心でニヤリと笑み。
よし、決まったな…帰ったら色々と言われそうだけど…また、皆と暮らせるならいいか!
その間、クレティアの両親は何も言わなかった。
いや、言えない。ムリだろう。
ちょっとした事で、もしかしたら外交問題に発展する可能性が高い。
なにより、アルシュが消えるという程度で、全て済むなら…という打算もあった。
アルシュが黙っているクレティアの両親に
「この件で、ルクセオン共和国とギリシオ共和国、ルーレル共和国、ファリダン共和国への補償活動を止める事は絶対にしません。見方を変えれば、ぼく自身の発端でもありますから…」
クレティアの両親は黙って頷いた。
◇◆◇◆◇◆◇
その頃、クレティアに元へ、その原因となった叔父が来た。
クレティアは部屋に閉じ篭もっている。
叔父がドアをノックして
「クレティア。私だ。ルーティオだ。開けてくれないか?」
クレティアはドアの前に来て
「叔父様、ごめんなさい。わたくしは…叔父様に合わせる顔がありません」
叔父のルーティオが
「全ての話は聞いた。すまない。私が原因で…クレティアにこんな事をさせてしまって」
クレティアがドアを開けて
「叔父様のせいではありませんわ…」
と、告げた瞬間、涙を零す。
ルーティアは、大切な姪っ子を優しく抱き締め
「すまない。本当にすまない」
クレティアが叔父の胸で泣きながら
「ごめんなさい。本当にごめんなさい」
そこへクレティアの両親も来て四人で話し合いが行われる。
クレティアは話を聞いて
「そんな…原因はわたしな筈…」
父親が
「これで収めてくれるんだ。そうするしかない…」
母親が
「クレティア、貴女がやった事を深く反省して」
と、続きを告げる前に、クレティアが話し合うテーブルから立ち上がり、何処かへ駆けていく。
部屋を出て角を曲がった所にクロリアとクリティアの二人が、クレティアの部屋の遠くから見守っていたのと遭遇して
「クレティア様、どうかしましたか?」
とクロリアが尋ねると、クレティアがクロリアの肩をつかみ
「アイツの! アルシュの居場所を探して!」
◇◆◇◆◇◆◇
アルシュは、学園都市戦艦ムツに来ていた飛翔船に乗る寸前だ。
ヴィクティアと共に、直ぐに帰国するのだ。
アルシュはスッキリで背伸びして
「さあ、これからは」
と続きを言う前に
「待ちなさい!」とクレティアの声が後ろからした。
飛翔船との移動式渡り橋の入口にクレティアが、クロリアとクリティアの二人を連れていた。
クレティアは走ってきたらしく、息が荒いも
「逃げるの…です…か」
と、渡り橋を進み、アルシュとヴィクティアの傍に来る。二人の前後には、護衛の数名がいて、クレティアを止める。
クレティアは止められて暴れながら
「卑怯者! 臆病者!」
アルシュはフンと鼻で笑い
「けっこう、勝てない戦争はしないのでね」
ヴィクティアがジーとクレティアを見詰める。
おそらく、雰囲気から察するに、今回の件の主犯の彼女であると…。
止まっているヴィクティアに
「ヴィクティア母上、行きましょう」
とアルシュが告げる。
クレティアが押さえられながら叫ぶ。
「ヴィクタリア帝国正妃ヴィクティア様。今後のこの学園都市戦艦ムツに関しての、アルシュ・メギドス・メルカバー・ルー・ヴィクタリア皇太子に関しての学園生活を、わたくしが全力でサポートします」
「はぁ!」とアルシュは息を荒げる。
クレティアが続ける。
「わたくしがやってしまった罪の贖罪の機会をお奪いにならないでください!」
ヴィクティアが考え始める。
アルシュはそれを察し、結論が変わると…
「ヴィクティア母上、さあ、帰りましょう!」
と、ヴィクティアの手を引くが…ヴィクティアが
「アルシュ…少し話を良いですか?」
ヴィクティアがアルシュの肩を持ち
「アルシュ、彼女…クレティア・ハーベルト・ロディオンは、将来、ルクセオン共和国の大貴族の当主になる人物。ここで、彼女との関係性を作って置けば…後々、貴方の役に立つ筈です」
「ええええ…」とアルシュは青ざめる。結論が変わった。
ヴィクティアが諭すように
「アルシュ、貴方は…彼女が嫌いですか?」
「はい」と即答のアルシュ。
「どこが嫌いですか?」とヴィクティアが問う。
「高慢です。ワガママです。人の話を聞きません」
アルシュの即答に、ヴィクティアは
「その気質は、アルテナにもある素養です」
ヴィクティアが産んだ娘アルテナを持ち出した。
アルシュは顔を引き攣らせて察し
「つまり、そういう素養になれる為にも…あの、クソ、ワガママ、バカ女に付き合えと…」
「そうです」とヴィクティアは頷く。
アルシュは、ぐうの音が正論を翳され黙る。
気持ちより、論理の方が有用性を理解してしまった。
顔を引き攣らせるアルシュの肩をヴィクティアは離し、クレティアが捕まる下へ行き
「クレティア・ハーベルト・ロディオン」
捉えていた護衛がクレティアを離し、クレティアが真っ直ぐと姿勢を正し
「はい」
と、返事する。
ヴィクティアが鋭い目で
「良いでしょう。貴女の提案、贖罪というのを見せて貰います。ですが、もし…何か起こったなら…終わりです。アルシュは…我が帝国へ即時帰還です」
クレティアは真っ直ぐとした眼を向ける。美人な顔立ち故に、とても映える。
「はい、分かりました」
と、返事をした。
ヴィクティアはフッと笑う。
まるで、昔の自分を見ているような気がした。昔、夫のアルファスと出会った時も、自分が原因で事件が起きて、アルファスとの縁が出来た。
「よろしい、その覚悟、見せて貰いますよ」
こうして、アルシュの退学は頓挫、アルシュは一人…悶える事になった。
部屋に戻ったアルシュは、ベッドに飛び込むと
「クソったれーーーーーーー」
不満をぶちまけた。
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次話もよろしくお願いします。
ありがとうございます。




