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ぼく最強の皇帝になります!  作者: 赤地鎌
12歳から

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42/63

アルシュの答え

次話を読んでいただきありがとうございます。

よろしくお願いします。


アルシュの前にライアーが現れ、問う。

私と来いと…

アルシュは?

 オッス、オラ、アルシュ。目の前に飛んでも無いヤツが現れたぞ!



 190近い巨漢のライアーが、十二歳のアルシュを見下ろす。

 ライアーは金縁がある目元だけの白い仮面の奥にある瞳で鋭くアルシュを見つめる。

 アルシュは、その威圧に押されるが…。


「アルシューーー」

 

 学院の図書館で一緒にいたルシェルが、アルシュの元へ来る。


 アルシュは叫ぶ

「ルシェル! 来るなーーーーー」


 ライアーは、走ってくるルシェルを見つめて

「ほう…ガールフレンドか…」


 アルシュは急いで後退し、ルシェルの元に来ると、ルシェルを背中に隠して守る。

 背中にいるルシェルが

「アルシュ、逃げましょう」

と、告げた次に、ライアーの全身を覆う外套から、巨大な機械の両手が伸びて、ルシェルとアルシュの背後に巨大な機械の手を広げて、逃走できないようにした。


 ライアーが機械の巨腕を伸ばしたまま近づき

「さあ、アルシュ・メギドス・メルカバー

 返事を聞かせて貰おうか…」


 ライアーの仮面の奥にある目が、金色に輝く。


 まるで、夜闇の向こうにいる獣の如き、鬼迫だった。


 ルシェルはそれを見て、怯えて体が動かない。


 アルシュは、無論、今までに体験した事のない鬼迫に晒され、体が重くなるが、背中にルシェルの暖かさを感じた瞬間、身に掛かっていた重さが消えた。

 

 ルシェルを守らないと!


 アルシュの目に闘志が宿る。


 ライアーはそれを見て、近付く脚を止める。

 その距離、二メータ前後だ。


 ライアーの鋭い視線と、アルシュの闘志ある視線がぶつかる。


 ライアーは、アルシュの背中にいるルシェルを見る。


 その視線から隠すようにアルシュが盾になる。


 ライアーは顎を擦り

「ほうぅ…。この世界で大切な者を得たか…。前世であった中山 ミスルの時とは違うなぁ…」


 アルシュが更に闘志を込めた鋭い視線になり

「どうして…それを知っている?」


 ライアーは仮面だけの口元を笑み

「何でも知っているさ。お前達が…地球という星から転生したという事もなぁ…」


 ライアーは外套の中にある右手を上げて開き

「今まで、この世界で五人程、関わった。

 最初は、四千年前

 二人目は、二千年前

 三人目は、五百年前

 四人目は、二百五十年前

 そして、お前…五人目のアルシュ・メギドス・メルカバー」


 アルシュはライアーを見つめたまま考える。

 

 つまり、昔にいた自分と同じ者達の知っているという事は…それ程、長く生きているという事だ…。


 アルシュは問う。

「アンタは…人か?」


 ライアーは肯き

「人だ。だが、遺伝的やら、形といったモノに囚われるなら…人外といえるかもしれないが…。私は…己を人として認識している」


 アルシュは続ける。

「どうして、ぼくの力を上手く使えるなんて言えるんだ?」


 ライアーは人の腕を広げて

「全ての結末を知っているからだ。

 私が関わった五人以外にもいた。

 その結末も全て知っている。

 悲惨な結果だった。どうしてか…分かるか?」


 アルシュは顔を鋭くさせ「さあ…」と答える。


 ライアーは天啓の予言者の如く告げる。

「多くの者達が、皆…愚かに行動したのだよ。アルシュ、お前のようなドッラークレスの力を見て、それを我が物と欲し、その結末は…全ての破滅。その歴史を幾つも見たし、聞いた。

 故に、私なりの結論だ。

 アルシュ、お前のようなドッラークレスを持つ者は、世界の裏側に隠れて、世界と関わるのが正しい。

 私は、その窓口になれる」


 ライアーは、ルシェルを指差し

「お前が背にして大事にする陸軍系譜の貴族、ダルシュン家や、お前の生まれである王族系譜と関わるなら、必ずお前は、力を吸い尽くされて殺される。残るのは死骸だけ」


 ルシェルは、それを聞いて震える。

 自分が将来、アルシュを取り殺すと言われたからだ。


 アルシュは視線をライアーから反らさないで返す。

「そうか、なら…その歴史を知っているだけでも…十分、価値はある。

 そうなる傾向にあるなら、それを防ぐ事だって出来る!」


 ライアーは頭を振り

「アルシュ、お前は…人の愚かさを忘れている。中山 ミスルの地球時代を思い返せ…

 どれ程、人が愚かであったか…。

 それを自覚している者達は…確かに真っ当な人生を送れたが…どうだ?

 それを分かっていない愚か者ほど、お前の前世では、国や組織のトップとなった。

 その結末はなんだ?

 人々を食い殺し、己の私腹を肥やし、あまつさえ、その責任を取らずに逃げたではないか…。

 中山 ミスルのいた地球での日本は…崩壊した。

 私腹を肥やす役人や、政治家、権力のトップは全て、その座から転落、その責任を取ることなく、逃げるように消えた。

 残った国民で、国を立て直し…復興した所に…また! 愚かな権力者共が…戻ってこようとした。

 だが、それは成されなかった。

 真に示す者が、それを防いだのだよ」


 それを聞いたアルシュは、複雑な気持ちになった。

 自分がいなくなった後の日本がそんな事になっていたなんて…。


 その僅かな落ち込みをライアーは見逃さない。

「来い! アルシュよ! この世界にいる人もまた、同じ愚者が数多にいて、権力のトップに立っている。

 絶対にお前を、ソイツ等が食い殺すぞ!」

 

 ライアーは招くように両腕を広げる。


 アルシュは、脳裏に中山 ミスルの記憶が過ぎった。

 そうだ…確かに、そうだった。

 どんな綺麗事や理想を唱えても…結局は、権力やお金、権益を得れば人は、愚行に堕ちる。

 餓鬼、畜生、修羅、地獄へ

 絶対にそうなる。

 今の優しい父や母だって、暖かい周りの全てだって…。


 前世、中山 ミスルがアルシュから揺さぶり起きる。


 所詮、人は、悪であり善だ。

 

 善の皮を被って平気で、悪をやる。己の利潤の為なら。

 愛だって偽って演じる。

 今ある、愛だって…所詮、己の利潤になるから…装っているだけ…。

 求道に斜に解脱した中山 ミスルが示す。

 

 そして…アルシュはライアーの怪しい魔力に引っ張られように体が前に出た瞬間、グッと背中を引っ張る者がいた。


 アルシュは「邪魔だ…」と後ろを見ると、泣きそうな顔をしているルシェルが、アルシュの背中の服を掴んで止めていた。


 ルシェルが今にも泣き出しそうな顔で

「行かないで…アルシュ」


 アルシュの焦点が定まる。


 そうだ。オレは…ぼくは…中山 ミスルじゃあない!

 アルシュ・メギドス・メルカバーだ!

 自分の事を大切にしてくれる女の子を放ってしまうなんて…。

 前世の中山 ミスルだって赦さない!


 ライアーは、止まったアルシュが、再び顔を向けたの目に、闘志が戻ったのを確認した。

「そうか…それが、今のお前の答えか…」

と呟いた瞬間。


 ゴオオオオオオオオ

 紅蓮の獅子精霊と、緑の鎧巨人スプリガンの精霊の二柱がライアーの左右に立つ。


「見つけたぞ! この大罪人が!」

 緑の鎧巨人スプリガンの精霊はネモシスと、紅蓮の獅子精霊はルシェルの祖父、陸軍大将のダルシュンである。

「この時をどれ程、待ち構えたか…」

 ルシェルの祖父、ミリアルド・レド・ダルシュンは、額に怒りの青筋が浮かぶ。


 最大の宿敵、ライアーを前に、二人は怒りが頂点であり、二人の背後には、ヴィクタリア帝国で最も強い精霊と戦う技を持った精鋭部隊が続いている。


 アルシュはルシェルを抱き締め

「行くよ!」

 レッドリーレスのオーラで自分と抱き締めるルシェルを包み、超音速に近い残像が残る早さで、鋭角にステップし、ミリアルドとネモシスの背後に回った。


 ミリアルドとネモシスは、アルシュがルシェルを抱えてこっちに逃げたのを確認し、アルシュとルシェルが、従えている精鋭部隊に保護されて運ばれる。


 ネモシスとミリアルドは、お互いに抜刀し

「子供に殺しを見せないで済んでホッとしたよ」

と、ネモシスは告げ

「ああ…そうだな…」

と、ミリアルドも同意した。


 ライアーは気怠い顔で

「もう用事が済んだので…帰りたいのだが…」

と、告げた瞬間、両脇にいる二柱の精霊が攻撃を放ち、同時にネモシスとミリアルドが疾走する。


 だが、天井を突き破って巨大な金属が刺さる。

 ライアーと、ネモシスにミリアルドの間に入り、ライアーは攻撃しようとした精霊を別の機械腕で弾き飛ばした。

 

 刺さったのは巨大な剣だった。

 十五メータサイズのゴーレム、キングス級が使う装備だ。

 

 ライアーは空いた天井から上に逃げると、その上空に巨大な飛翔船が出現する。


 それに向かってライアーは飛翔、巨大な六翼の飛翔船に乗ったライアーは、アルシュとルシェルが精鋭達の守られて、学院から離れる姿を見て

「何時か、気付いたら…探すといい。何時でも迎えに行く」

と、告げた後、搭乗した巨大飛翔船が、周囲に攪乱の閃光弾と煙幕弾をバラ撒き、逃走していった。


 それを見上げるアルシュは鋭い顔をしていると、ルシェルがアルシュの手を握り

「アルシュ」

と、ルシェルが呼ぶと、アルシュがルシェルの手を握り返し

「ありがとう…ルシェル」


「うん」

 ルシェルは頷いた。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

次話もよろしくお願いします。

ありがとうございます。

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