表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼく最強の皇帝になります!  作者: 赤地鎌
12歳から

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/63

アルシュの悩み

次話を読んでいただきありがとうございます。

よろしくお願いします。


アルシュとルシェルは、順調に交際を重ねる。そんな、ある日


 オラ、アルシュ。レッドリーレスから前に来た同じ連中の話を聞いて凹んだぞ。

 利用され、出し殻にされ、殺される。お先真っ暗だぜ。


 アルシュは、レイールの道場で何時ものように修行を受けていた。


 レイールの手解きによって、何とか上手く動かない右肩と左膝が動く真面に動くようになる。

 それには、ルシェルの献身的な支えもあったのも、功を奏している。


 ルシェルと組み手をするアルシュ。

 相変わらず、ルシェルは良い動きをする。

 軽やかに華を舞う蝶のように、円形で流れがある動きをする。

 

 アルシュの方は、何処か固まった動きがあり、一つ一つの動作は良いが、動きから動きへの繋がりが悪い。


 アルシュは、思う。

 これがセンスがあるか…無いかの差か…。

 

 ルシェルには天性の格闘家としてのセンスがある。

 どんな技も直ぐに憶え、次々と繋げて踊るように組み合わせる。


 組み手の訓練が終わり、アルシュは水を飲んでいると、レイールが来て

「良い動きだったぞ。アルシュくん」


 アルシュは渋い顔をして

「動けます程度ですがね。他の子達と比べると…全然です。

 やっぱり、どんな事でも才能は必要ですから…」


 達観したような言い方に、レイールが

「そんな事は無い。確かに才能は必要だが…本当に必要なのは、続けるという努力だ。

 才能は1割、努力が2割だ」

 

 アルシュがレイールを見て

「後の7割は?」


 レイールは微笑み

「人だ。どんな事でも人があっての全てだ。才能だけでも、努力だけでも、物事は成さない。

 人との関わりがあってこそ、それは…花開く。

 それを忘れて、才能に溺れる者に、先はない」


 アルシュは、前世で合気道を習っていた事を思い返す。

 二十歳後半の時に習っていた合気道では、合気道に必殺技なんてない。

 目の前にいる人、相対する人を良く見る。

 そんな事を言っていた。

 前世の日本では、人を見ない人が多かった。いいや…そうでないと物事は動かせないとみんなが思っていた。

 人を動かすのは、その人を見下せる位置にいるから出来るという、醜い本性が一番強かった者達がトップがなっていた。


 アルシュはそれを思い出して

「それりゃあ…世の中…ダメになるわなぁ…」

と、呟いたそこには、十二歳の子供でない老成された人物をレイールは見た。


「アルシュくん、何を考えていたんだね?」

と、レイールは微笑みながら聞く。


 アルシュは頭を掻きながら

「昔の…事です」


 レイールは微笑みながら

「昔の事を気にするな…とは言わない。だが、過度に囚われる必要はない」


 アルシュは肯き

「はい。そうですね…」


 レイールは小さく溜息を漏らす。

 そう言って理解してしまう少年の諦観に、寂しさがこみ上げる。

 もっと、子供らしくすればいい…と思うが、これもアルシュの人生だ。

 否定するような口出しは、アルシュの道を狂わせる。

 

 世の中には、それを分からず、頭から否定して、人の人生を狂わせて、それが正しいとする愚か者も多いが…。


 レイールが静かにアルシュを見つめていると、ルシェルが来て

「アルシューーーー」

と、アルシュの右腕に抱き付く。


 アルシュは右腕にいるルシェルに

「どうしたの?」


 ルシェルが、アルシュの右腕に頬寄せ

「今日も、アルシュの家に泊まりに行って良い? アルシュとお話しをしたの」


 アルシュが微妙な顔をして

「ええ…三日前も…来たじゃん」


 ルシェルが、悲しげな目で

「私、アルシュの邪魔なの?」


 アルシュは顔を引き攣らせ

「いいや、全然、ルシェルと話していると楽しいけど…でも…」


 ルシェルは微笑み、アルシュに体を寄せ

「ユース兄さんには、伝えてあるから…」


 アルシュは項垂れ「分かった」と了承した。


 レイールは、アルシュがルシェルという小さなレディーに振り回されている姿に、微笑ましさを感じる。

 もしかしたら、アルシュの人生に暖かみを与えるのは、ルシェルのような純真な乙女の力なのかもしれない。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆


 アルシュは、アリアの魔導車で、ルシェルと共に自宅の屋敷へ帰る。

 車内では、後部座席でルシェルとアルシュが色んな事を話しているのを、運転席でアリアは見る。

 二人が話しているのは他愛もない会話だが、全く途切れない。

 それを見て、アルシュとルシェルは…馬が合っているのが、端から見ても分かる。


 アリアは

「アルテナ様…強敵ですぞ」

と、呟いた頃に、アルシュの屋敷に到着した。


 アルシュがルシェルを連れて来ると母親のファリティアが

「いらっしゃいルシェルちゃん」

と、暖かく迎えてくれる。


 もう、ユースの方から連絡が入っているらしく、問題なく受け入れてくれる。


 ルシェルがお辞儀して

「こんばんは、また、お泊まりに来ました」


 ファリティアは微笑み

「いいのよ。ルシェルちゃんは何時でも大歓迎だから」


 アルシュが

「また、連れて来ちゃった」

 どこか申し訳なさそうだ。


 ファリティアは首を横に振り

「いいのよ」


 アルシュとルシェルを屋敷にいれると、父親のアルファスの来ていた。

「なんだ。また許嫁を家に呼んだのか…アルシュ」


 アルシュは微妙な笑みで

「まあ…ルシェルと話していると楽しいから」


 それを聞いてアルファスは微笑み肩を竦め

「分かった。だが…変な事はするなよ」


 アルシュは「うん。分かっている」と頷いた。


 アルシュはルシェルを連れて、暖炉がある広間に行き、色んな事を語り合う。


 本当に他愛もない事だ。

 学校での事、アルシュが新しいゴーレムを作った事。

 こんど、二人してお菓子を作ろう…とか

 本当に日常の陽だまりのような会話だ。


 その後ろ姿を、父親アルファスと母親ファリティアは見つめる。

 それは嘗ての幼き頃の自分達のようだった。


 アルファスは、ルシェルがアルシュの許嫁になってくれて良かったと思っている。

 アルシュには何処か諦観した絶望のような雰囲気があったが、ルシェルと過ごす内に、その重く深いその雰囲気が和らいでいるのが、目に見えて分かる。

 それは母親ファリティアも同じだった。


 

 アルシュとルシェルは語り合うと、夜の遅くになり

「ああ…もう、こんな時間…」

と、アルシュは時計を見て

「もう…寝ようか…ルシェル」


「うん」とルシェルは頷く。


 お風呂は…もう十二歳の少年少女だ。別々に入り、アルシュは寝室へ行く。

 十歳にして男女同衾せず…があるが…。

 まあ、アルシュ自体、精神年齢的に40より上だから、変な事をするのはなが…。

 ルシェルは、アルシュと同じベッドに眠る。


 いいのかなぁ…とアルシュは何時も思うも、今の所は問題は出ていないので、一緒に寝ている。

 寝る前にルシェルが

「アルシュ…」

と、目を閉じて顔を向ける。おやすみのキスだ。


 良いのかなぁ…と思いつつも、アルシュはおやすみの口づけをする。

 ルシェルは満足そうに口元を押さえてアルシュと一緒に眠る。


 アルシュの鼻孔にルシェルの甘い匂いが漂う。

 ああ…なんか…落ち着く…。

 無意識にその匂いを求めてルシェルに抱き付き、二人はお互いに重なり合って眠る。


 静かになったそこへ、一応の確認として母親ファリティアがドアを開けて、ベッドの部屋の方へ行くと、大人しく寝ている二人を見て、ホッとして微笑み

「おやすみ、アルシュ、ルシェルちゃん」

と、小声で送り部屋から出て行った。



 ファリティアは、アルファスのいる自室の寝室へ行くと、アルファスが先にベッドにいた。

「アナタ…」

「なんだ?」

 ファリティアがアルファスの隣で横になり

「ルシェルちゃん…良い子ね」

 アルファスは肯き

「ああ…彼女がアルシュと居てくれるお陰で、アルシュが纏っていた行けない空気が薄まって来ている。良いことだ」

 ファリティアは微笑み

「きっと、良い未来がアルシュには訪れるわ…」

「そうだな…」

と、アルファスはベッドの脇にあるテーブルに付く魔法スイッチを触り暗くして、ファリティアと愛し合おうとしたが…。


 ドンドンドンと部屋のドアが激しくノックされ


「なんだ? 騒々しい」

と、アルファスがファリティアから離れると


「陛下! 陛下ーーー」

 声を張っているのは、帝都守護軍のネモシス大佐だった。


 アルファスは、苛立ちつつネモシスのいるドアに来て開けて

「なんだ? こんな夜更けに…」


 ネモシスは真っ青な顔をしている。


 アルファスは首を傾げ

「どうした?」


 ネモシスは絶望した顔で

「陛下…ヤツが…あのバケモノが生きていました」


「はぁ?」とアルファスは首を傾げ、その背にファリティアも来た。


 ネモシスは地獄の絶望を知ったような口調で

「ライアー・ラーテップが、現れました!」


 アルファスは、驚愕と怒りに眉間を上げ。

 ファリティアは、唖然として口元に手を置く。


 ネモシスが

「フランディオ王国のエドワード王子が、急いで駆け付けて、ライアー・ラーテップの事を…」

 

 アルファスは声を張り

「統合本部の招集は!」


 ネモシスが肯き

「急いで、回って貰っています」


 アルファスは肯き

「分かった。私も行く」


 ファリティアがアルファスの背を心配そうに掴み

「アナタ…」


 アルファスは、ファリティアの肩に手を置き

「大丈夫だ! 絶対のあの愚かな内戦の時のようには成らない!」



 アルファスは、急いで着替えて、ネモシスと共に皇帝城へ向かった。

 そこには、夜間にかかわらず多くの魔導車が止まり、人々が集まっている。

 その全てが軍や政府関係者だった。

 その全員が集まる程の事態なのだ。


 嘗て、ヴィクタリア帝国に凄惨な内戦を起こす原因となった男の再来に、帝国はざわめいた。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

次話もよろしくお願いします。

ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ