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ぼく最強の皇帝になります!  作者: 赤地鎌
12歳から

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39/63

ライアー・ラーテップの暗躍

次話を読んでいただきありがとうございます。

よろしくお願いします。


ライアー・ラーテップは動きを開始する。


 ライアー・ラーテップ。

 この男? 黒い外套に全身を包み、仮面で元を隠す人物の目付きは、鋭い。

 何かを見通すような瞳が映している場所は、孤島の牢獄だ。


 孤島の周囲は、巨大な絶壁の如き壁に覆われている。

 唯一の出口は、東側にある陸に向けられている海門だけ。

 孤島の周囲を覆う海は、孤島を囲む絶壁の隙間から、孤島へ流れ込み、絶えず海が荒れて渦を巻いている。

 海からの脱出は困難であり、脱獄するには、空へ逃げるか? 東側の海門を通るしかない。

 正直、空への逃避は、空を飛ぶ魔法や装置が無ければムリである。

 このワールストリアには、個人で飛ぶ魔法は存在していない。

 空を飛ぶには、飛翔船の両脇にある飛翔翼という魔導具が必要だ。


 東側の海門、厳重に管理されアリの子さえ入る隙間がない。


 この脱出困難な、孤島監獄には、多くの囚人が収監されている。

 そのほとんどが、殺人犯や大きな詐欺、強盗など、大事件を起こした者達である。


 三キロ程度の孤島監獄の主な仕事は、農業だ。

 孤島の畑をとある金髪の男が耕していた。


 伸び放題の金髪、髭を蓄えた口元、大凡の風貌からは、三十代後半に見えるが、これでも25歳の青年だ。


 彼の名は、ナレオン・ボルト・フィンディオット

 

 この孤島監獄がある国は、フランディオ王国だ。


 ナレオンは、7年前にフランディオ王国で、エドワードを王に担ぎ上げようとした、貴族の一派の重鎮だった。

 幼い頃より、エドワードと共に育ち、エドワードがフランディオ王国の王になるのを夢見て来た。

 なのに、七年前のエドワード王子強制王位継承事件の時に、エドワードに裏切られた…というより、エドワードの気持ちを察する事が出来ないで、勝手に色々やって自滅したのだ。

 

 この孤島監獄には、それに関わった多くの者達が、囚人として生活している。

 その殆どが、貴族の子息だ。

 名門家の彼らの家は、彼らを尻尾切りとして差し出し、家の存続をした。


 エドワードにも、家にも、家族にも裏切られた彼らは、淡々と囚人としての日課をこなしていた。


 彼らの刑期は、30年…。

 もう、その頃には、エメリアの王位が盤石になっているだろう。


 例え、刑期を終えて外に出されても、彼らに戻る場所はない。


 後、残り23年の刑期が彼らには短く感じる、エドワードを王にしようとした彼らには、希望がない。一生、絶望と失意の日々を過ごすだろう。


 刑務官の者達も、彼らが素直に日々を過ごしているので、仕事が捗り、去年…模範囚として表彰したくらいだ。

 だから、こそ…なんであんなバカな事をしたんだろう…。それが残念だった。



 黙々と、日々をこなすナレオン。

 そんなある日、一人の囚人が新たに来た。

 珍しい事ではない。

 ここにくるのは重罪人だ。

 捕まっている千人近くの内、若く思慮が浅い者がその男に尋ねる。

 実際、殺人をやらかすのは、99%男なので。

 まあ、犯罪者の95%が男なのは、ワールストリアでも同じだ。

 それ程、男はバカが基本システムなのだ。


 昼食の食堂で、その男が一人、食事をしていると、バカな反省のない囚人が男に尋ねる。

「何、やらかして来たんだよ?」

 ギロと、男が囚人を睨む。

 殺人詐欺を行ったバカ男は、その睨みで引き下がる。

 深淵の底のように暗い視線だった。

 本能で察する。コイツは…人ではない。


 そのバカ男が怯んだのを見て、厳つい男が近付く

「オレの舎弟に、何、イチャモンを付けてんだ?」


 男は淡々と食事をする。


 厳つい男は、二メータくらいの大男だ。

「てめぇ!」

と、男の胸ぐらを掴んだ。


「何をしている囚人0013番!」

と、刑務官が来るが、食事をしていた男が掴んだ胸ぐらの手首を持ったではない、握り潰した。


「ぎやああああああああああああ!」

 厳つい男が不様な悲鳴を上げて、複雑骨折した右腕の手首を握って押さえる。


 それを周囲の囚人達が驚愕で見つめる。


 刑務官が、複雑骨折した厳つい囚人に駆け付け

「大丈夫か?」


 握り潰した男が淡々と

「正当防衛で、問題ありませんよね」


 刑務官が驚愕で男を見つめる。


 無論、これは過剰防衛となり、男は単独監視独房で、反省という事になった。


 ナレオンが、近しい刑務官に、食堂で問題を起こした男の事を聞く。

「アイツは、バケモンさ。とある犯罪組織の一つを壊滅させたんだよ。

 その時、組織にいた者達を沢山殺してな…」


 罪は罪だ。人殺しは人殺しだ。それには変わりないが…。

 男のやった事は、ある意味、世間では正義のように見えるかもしれない。

 その犯罪組織は、人身売買を行う外道だった。

 女、子供を攫い、奴隷として売り渡す。

 逃げられないように、拘束の魔導首輪を付けて売るのだ。

 逆らえば、魔導首輪からの電撃が放たれる。

 魔導首輪の電圧を上げれば、殺せる。

 まさに、外道の所業にてお金を稼いでいた。


 国で大きな犯罪組織の一角を、男は潰してしまった。

 人間業ではない。

 だが、やり遂げた。僅か、二日程度で…。


 その奴隷犯罪組織にいた男達は、全身の両手足が引き千切られ、百数体の遺体として見つかった。


 そんなとんでもない男の噂はあっという間に広がり、誰しもが恐れて近付かないが…ナレオンが

「おい、アンタ…名前は?」

と近付く。

 

 男は、ナレオンを見つめ

「0999番」

 

 ナレオンは首を横に振り

「囚人番号じゃあない。おれは、ナレオン・ボルト…だ」


 男はニヤリと笑み

「アイラー・プッテーラ」


 ナレオンは肯き

「よろしく。アイラー」


 アイラーはナレオンを見つめ

「ここに囚人達は、オレと距離を置く。オレのやった事がバレたんだな」


 ナレオンは肯き

「アンタの噂で持ちっきりだ」


 アイラーが

「お前は、怖くないのか?」


 ナレオンは肩を竦め

「アンタは、本を読むだろう」


「ああ…」とアイラーは肯き


 ナレオンは

「じゃあ、一つ。戦争とはなんだ?」


 アイラーは淡々と

「外交の一つと、戦争論では記されているが…本当は違う。

 戦争論の著者、クライスビゼッツのメンタルが、そのように見たいからそうなった哲学的考察だ。

 本来は、とても、シンプルで残念な理由だ。

 利潤だ。そこを攻める事で、もたらされる利潤によって起こる。

 損害より、利潤が上回れれば、戦争は起こる」


 ナレオンはフッと笑み

「アンタ、以外とお喋りだな。だが、それでアンタの事が分かった。

 アンタは理性的で、知的なんだなぁ…」


「フン」とアイラーは笑む。


 その後、ナレオンと親しくなり、ナレオン達の仲間とも顔合わせをして話すようになる。


 数日過ごす内に、ナレオン達、嘗てのエドワード派と親しくなる。


 畏怖の対象だった囚人0999番が、ナレオン達と親しくしているので、刑務官達は一応の安堵を得ていた。


 そして、ナレオン達の事情を知るアイラー

「成る程…君達は、政治犯的な位置で投獄されたんだな」

 

 ナレオン達は、諦観した笑みをして

「ああ…もう、オレ達に居場所はない」

 ナレオンが告げる。


 アイラーが顎を擦り

「その…君達の気持ち…分かる気がするよ。

 確かに正道でない所に、正義はない」


 何か、分かってくれた事にナレオン達は嬉しくなった。

 ここの囚人達は、美味しい思いをしたかんだろう? 偉くなりたかったんだろう?

 そんな低俗な事でしか判断しない。

 まあ、犯罪者なんだから、その程度なんだけどね。


 とある夜、ナレオン達とアイラーが図書館で話していると、アイラーが

「君達にウソをついていた」

 ナレオン達の視線が集中する。

 

 ナレオンが

「どういう事だ?」


 アイラーが

「私の本名は、ライアー・ラーテップ」


 ナレオン達が顔を顰めると、一人がハッとして

「も、もしかして…ヴィクタリア帝国で…」

 それで全員が察した。

 

 嘗て、隣国のヴィクタリア帝国で大規模な内乱の原因となった皇位継承戦争の切っ掛けを作った魔導士の名だった。


 アイラーこと、ライアーは頷き

「その…フランディオ王国で、犯罪組織の一つを潰したのは…。

 犯罪組織から得られる情報を手にする事だ。

 まあ、人買いという犯罪組織が、嫌いだったのもあるがね」


 ライアーは顔を近づけ

「君達の話を聞いてね。良ければ、力になれればと思って…」


 ナレオンの仲間の一人が

「力になればって、ここは脱獄不能の監獄で…」


 ライアーが顔を更に寄せ

「後…一ヶ月後に…私が管理する。巨大な…ウェフォルさえも退治できる飛翔戦艦が現れる。

 どうだ? 逃げないか? 一緒に…」


 ナレオンが

「逃げたって…オレ達には…」


 ライアーが

「君達の支援をしたい。君達のやりたい事を手伝いたい。

 エドワード王子の王位継承のね…」


 ナレオン達は半信半疑だった。


 だが、一ヶ月後、ライアーと共に夜の図書館にいると、轟音が響き渡る。

 孤島監獄の上に、巨大な飛翔戦艦が出現した。

 六つの飛翔翼を持つ全長800メートルの飛翔戦艦は、各方面に砲撃し、監獄島は大混乱だった。


 ライアーが

「どうするかね? ここで、無為に日々を過ごすか? 再び、自分に準じるか?」

 

 ナレオン達は、ライアーと共に、飛翔戦艦に乗って脱獄した。


 ナレオン達の目に光りが灯る。

 再び、自分達が願っていた未来を叶えよう…と。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

次話もよろしくお願いします。

ありがとうございます。

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