アルシュとヴァルハラ
次話を読んでいただきありがとうございます。
よろしくお願いします。
アルシュは、同じくレッドリーレスを発動するヴァルハラの後を追う。
オラ、アルシュ、なんか、宝石が人を取り込んで巨大な双頭のドラゴンになったり、事態が訳の分からない事になったぞ。
アルシュは、レッドリーレスで、ヴァルハラの青いレッドリーレスを追随する。
ヴァルハラが追っている双頭のドラゴンは、夜景が輝く町に下りた。
町は大混乱である。
三十メータの双頭のドラゴンが咆吼を放ち、町の建物を破壊する。
それにヴァルハラは、低空飛行で接近、懐に突貫を食らわせる。
双頭のドラゴンの巨体が浮き上がり、背後にあった河川に落ちる。
双頭のドラゴンが、河川を荒らしながら起き上がり、双頭の顎門を開いて、光線のブレスを吐く。
それが、地面を這って町の方へ向かう。
「チィ!」
ヴァルハラは舌打ちして、その光線のブレスの前に立ち、町への被害を防ぐ。
ヴァルハラが盾として展開する青いレッドリーレス。
それの前面に光線のブレスが衝突して、霧散する。
このままでは埒が明かない。
そこへ、アルシュのレッドリーレスの突進が双頭のドラゴンの脇から入り、双頭のドラゴンが転がる。
光線のブレスが止まり、ヴァルハラは
「ナイス」
と、アルシュのアシストを喜び、倒れた双頭のドラゴンへ疾走。
双頭のドラゴンの胸部へ、ヴァルハラは再び突貫して、自身が纏う青いレッドリーレスを両手に持つ、大型拳銃に集中。
「全く、バカなヤツだったぜ」
大型拳銃の引き金を引くと、圧縮した青いレッドリーレスの力が双頭のドラゴンの胸部を粉砕し、双頭のドラゴンは息絶えて、河川へ沈んだ。
倒れた双頭のドラゴンの上にアルシュが着地すると、双頭のドラゴンの体が光を放って分解していき、消えていく。
消えた双頭のドラゴンの光が、最後の一欠片になると、あの艦橋を襲った男が握っていた宝石が出現、それをヴァルハラは回収した。
アルシュはそれを見つめ
「終わったの?」
ヴァルハラは無言で肯き
「助かった…」
アルシュは首を横に振り
「いいよ。それより、これから面倒な事になるから…」
アルシュは、河川の道路を覆い尽くす警察である治安隊の車両を見つめた。
そう、双頭のドラゴンの事で、大量に駆け付けた。
『動くな! 手を上げろ!』
治安隊が、銃剣を構えてアルシュとヴァルハラに向ける。
ヴァルハラはその場に座り
「後の事は、任せろ」
アルシュも同じく座り
「うん。何とかしてね」
二人は捕まった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
アルシュは治安隊の客室にいた。
アルシュの身分は、ハッキリしている。
ヴィクタリア帝国、皇帝の庶子で、それが信用を…いや、まあ…国の打算で、丁重に扱うとされ、お菓子と紅茶まで付けてくれる好待遇だ。
アルシュはお菓子と紅茶を食べながら
「ここ…どこだろう?」
そう、呟いていると、部屋のドアが開き。
「どうも…アルシュくん」
ニコニコと営業スマイルの男、スーツではない。制服で、胸元に階級を示すバッチと、勲章がぶら下がっている。
この国の軍関係の人だろう。
「どうも…アルシュ・メギドス・メルカバーです」
自己紹介して置いた方が無難だ。
男性は肯き
「礼儀正しいなぁ。私は、この国…インダルネシア連邦国の軍に所属する。
トルーティだ」
アルシュはトルーティを見つめ
「ぼくは、どうなるんですか?」
トルーティは微笑み
「心配ない。君と一緒にいた者達が迎えに来ている。直ぐに会えるだろう」
アルシュはちょっとホッとして
「そうですか…」
トルーティが
「だが、君にお願いがある。今晩、あった事は秘密にして欲しい」
アルシュは「ああ…」と唸り
「はい。どういう風に、みんなにお話をすればいいですか?」
トルーティはニヤリと怪しい笑みをする。
アルシュの察しの良さに、歓心する。
アルシュは、皇帝の妾腹という事で、国でも色々と苦労があり、そのように察する力が付いたのだろう…と、理解出来た。
トルーティは告げる。
「今回の事は、偶々、飛翔船に小型のドラゴン型ウェフォルが衝突、それに巻き込まれた。
その対処をしたのは、我が軍の特別な力を持つ部隊によって処理された…と」
アルシュは肯き
「分かりました。じゃあ、ぼくは…」
トルーティが
「ああ…まだ、君と話がしたい人がいてね。いいかね」
「はい」
トルーティがドアへ行き、その人物達を入れる。
ヴァルハラと、金髪の美女だ。
アルシュは、ヴァルハラは知っているとして、金髪の美女を見つめる。
「あの…貴女様は…」
金髪の美女は微笑み
「わたしは、七大連合国を纏める組織、ミッドガルの総統括
フレア・オーディンよ」
アルシュは察した。
そう、ミッドガルのトップだ。
ヴァルハラを見て
「ぼくにどんな…」
フレアは、左にいるヴァルハラの頬を抓み
「ごめんね。コイツの所為で、面倒に巻き込んで…」
ヴァルハラは、されるがままだ。
フレアが
「君に秘密にして貰う代わりに、本当の事を教えるわ。まあ、ヴァルハラが、色々と喋ってしまった所為だけどね」
ヴァルハラがアルシュを見つめる。
警戒ではない。どこか…見守るような柔からさがある。
フレアが告げる。
「今回、とある新型魔導兵器の強奪があったの。それはまだ…未完成で危険な代物だった。
ヴァルハラは、それの奪還を遂行していた。
だけど、その兵器が発動した。君が見た通り、人がドラゴンに変身した。
でも、本来はそういう兵器じゃあない。未完成だけど、使い所があったから強奪され
君がそれに遭遇した」
アルシュは「はぁ…」と溜息を漏らし
「分かりました。この事は胸にしまって置きます。ですが…父上や、正妃様達に問い詰められた場合は…」
フレアは
「問題ないわ。きっと公にしないでしょうし…一・二年後の完成した場合には…多くの国が知るでしょう。それまでの間、広まらなければいいわ」
アルシュは納得して肯き
「分かりました。では…そういう事で…」
フレアは微笑み
「ヴァルハラの言う通りね。君は物わかりがいい。ヴァルハラと同じ輪廻転生だけはあるわ」
アルシュはヴァルハラを見つめ、二人の視線が交わる。
アルシュが
「ぼくは、日本で死にました」
ヴァルハラが
「オレは、中東のインダス川中流域だ」
アルシュとヴァルハラは無言になる。
フレアがヴァルハラを見つめ
「二人にしか分からない事?」
アルシュは俯き、ヴァルハラは左を向く。
フレアが立ち上がり
「そういう事だから、よろしくね。アルシュくん」
フレア達が居なくなった後、ノアドとユースに二人が来てくれた。
ノアドが
「全く! お前は!」
怒っていた。
こうして、二人に連れられて、アルテナ達が宿泊するホテルへ行った。
明日、ヴィクタリア帝国へ行く飛翔船の手配がしてあり、直ぐに行けるらしい。
ホテルに行くと、心配したアルテナがアルシュに抱き付き、それにルシェルが嫉妬して、離そうとしたり、ノルンとカタリナが微笑ましく、その取り合いを見つめる。
寝るとき、右にアルテナ、左にルシェルと抱き付いているベッドにアルシュは
寝返りが打てない…。
上を向いて寝るしかない。
アルシュは目を閉じながら思う。
自分以外に、同じように、このワールストリアの転生した者がいた。
きっとヴァルハラ以外にも…。
考えて混乱してき。
休もう…とアルシュは目を閉じて眠った。
◆◇◆◇◆◇◆
ヴァルハラは、ミッドガルが投資して建造した、アーコロジー(完全環境都市)の特別待遇室にいた。
アーコロジーの外側にある夜景を見つめるヴァルハラに、バスローブ姿のフレアが近付き
「あのアルシュって子、並大抵ではないわねぇ…」
ヴァルハラは目を細め
「当然だ。オレと同じなら…そうだろう」
フレアがヴァルハラの肩により掛かり
「そうね。アナタも子供の頃から並大抵じゃあなかったわ。私達の味方になると思う?」
ヴァルハラは真剣な目で
「それは分からない。アイツが取り巻く環境によって変わる」
フレアは肩を竦め
「そう…じゃあ、わたし…ベッドで待っているから…」
フレアが去った後、ヴァルハラはシャワーを浴びに行きながら
「まあ、敵同士になると…世界が潰れるわなぁ…」
最後まで読んでいただきありがとうございます。
次話もよろしくお願いします。
ありがとうございます。




