表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼく最強の皇帝になります!  作者: 赤地鎌
11歳から

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

29/63

ルシェルの攻撃

次話を読んでいただきありがとうございます。

よろしくお願いします。


アルシュは、何時ものレイールの道場での稽古を受けていたが…ルシェルが…

 オラ、アルシュ。何時ものように、また、レイール師匠の道場に来て、稽古してるぞ。

 だけど…今日は…。



 アルシュは、レイールのグラディエーター武術の稽古に来ていた。

 総合ドームの人工芝トラックで、同じく習う子供達が大人と一緒に稽古していた。


 アルシュは、一人、体を動かす身体の武術訓練をしていた。

 一人黙々と型の訓練を続けるアルシュを、レイールは微笑みながら見つめる。


 他の子供達は…持ち精霊を出して、大人も持ち精霊を出し、子供の精霊を使った稽古の相手をしてあげる。


 そんな中、レミリア師範代に精霊を使った稽古をして貰っているルシェルが


「ねぇ、レミリア師範代。どうして、アルシュくんは…私達と同じ精霊を使った稽古をしないの?」


 レミリアは、持ち精霊の鎧武士で、ルシェルの炎の獅子を相手しながら

「アルシュくんは、精霊を持っていない珍しい子なのです」


 ルシェルは、精霊を使いながら

「じゃあ、なんで、精霊を使うグラディエーター武術の稽古をしているの?」


 レミリアは

「グラディエーター武術には、精霊を使わない。魔法と組み合わせた技もあります。

 それをアルシュくんに教えているのですよ」


 ルシェルは「ふ…ん」と肯きつつ小声で「嘘つき…」と、告げた。


 ルシェルは知っていた。アルシュが、精霊とは違う特別な力を持っているのを、稽古に来ている大人達が影で言っていたを聞いたのだ。


 本当の力を出さないアルシュ。

 そして、アルシュと仲良くなりたいユース兄様、とノアド兄さん。

 アルシュは、別に問題がある訳ではない。

 だが…他の大人達もアルシュからは距離を取っている。


 なんで? おかしい!


 ルシェルはそう、疑問に思った。


 ルシェルは知らない。アルシュと距離を置く大人の事情を…。

 確かに子供のルシェルには、関係ない事だが、それでも親の影響は、子供に伝染する事が多いのだ。


 ルシェルは、ユース兄様とノアド兄さんをアルシュと仲良くさせる為に、とある行動に出る。


 アルシュが休憩して座っているそこへ、ルシェルが来た。

「ねぇ…アンタ。アタシと戦いなさいな」


「はぁ?」

 アルシュの目が点になる。


 ルシェルが

「アタシが勝ったら、アンタはアタシの言う事を聞く。

 アンタが勝ったら、アタシがアンタの言う事を聞く」


 アルシュが首を傾げ

「いやいや、別に…なんで、そんな事をする必要があるの?」


 ルシェルがアルシュの手を取って

「いいから、やるの!」

と、無理矢理に引っ張って行き、道場の芝生トラックの真ん中に来させた。


 ルシェルは構えて

「さあ! 行くわよ!」

 蹴りを放ってきた。


「えええ!」

と、アルシュは驚きつつ避ける。


「何よ! 攻撃してきなさいよ!」

 問答無用でルシェルは蹴りや拳を放ってくる。


 アルシュは後退しながら

「いや、なんで? どうして? 始まっているの!」


 周囲はアルシュとルシェルが戦う姿を見てノアドが

「何をやっているんだ?」

 ユースが

「どうしたんだルシェルは…?」


 端から見て、ルシェルの攻撃をアルシュが、上手く後退して避けているので、危険な感じではない。

 ルシェルはそれなりのセンスがあり、綺麗な動きをする。

 アルシュは、まあ、ルシェルよりは才能はないにしても、避けるならそれなりに出来るので問題ない。

 

 ルシェルが

「なんで! 逃げるのよーーーー」

 怒り出す。


 アルシュが

「いやいや、この勝負、ぼくは受けるなんて、一言も言っていないよ…」


 ルシェルが地団駄を踏み

「なんでよ! 勝ったら、相手を好きにしていいのよ!」


 アルシュが冷静に落ち着けようとしながら

「いや、その…それのどこに、ぼくの得があるの?」


 ルシェルは更に怒り

「いいじゃん! そういうもんでしょう!」


 アルシュは呆れた顔をして

「えええ…それっておかしくない? 勝ったら好きにしていいとかって

 勝てば官軍なんて、卑怯者が言う言葉だよ」


 ルシェルは頭を掻き上げ

「何よ! 難しい言葉を言って! 誤魔化しているのよ!」


 アルシュは、十歳の子供には厳しい言い方だったと反省し

「分かった。分かり易く言うね。

 じゃあさあ、君の父さんと何処かの男の人が戦って、君のお父さんが負けたとしよう。

 君のお父さんは負けたから悪い。だから、好きにしていい。

 だから、君のママを取って自分の奥さんにする。

 これ、正しいと思う?」


 ルシェルは「う…」と黙る。

 そう、正しいとは思わないのだ。


 アルシュが

「ね。君の反応通り、正しくないよ。おかしいよ。

 勝ち負けだけで、相手の全てを奪うなんておかしいでしょう」


 ルシュルが「う…」と唸って腕を組む。


 アルシュがたたみ掛ける。

「じゃあ、君と勝負して、ぼくが勝った。じゃあ、君のママを頂戴ってどうよ」


 ルシェルが

「イヤかも…」


 アルシュが

「でしょう。君の出した条件は、明らかにおかしいんだよ。

 だから、ぼくは君と戦わない。分かってくれた」


 ルシェルが項垂れた後

「でも、アタシは! アンタを従わせたいの! だからーーー」


 ルシェルは、精霊の炎の獅子を出した。

 大きな炎の獅子。


 それに周囲の大人達は驚き固まり、ユースが

「ルシェル! 何を!」


 ルシェルは

「アンタに勝って、アタシはアンタを従えるの!」

 訳の分からない傍若無人のジャイアニズムを振り翳して炎の獅子精霊でアルシュを攻撃した。


 アルシュは、そこまでするとは予想できなかった。


 炎の獅子の突撃を食らい、炎に包まれて数十メータも吹き飛んだ。

 

 人工芝トラックの周囲にあった、用具倉庫のドアに炎に包まれたアルシュが追突して、ドアを破壊して、その中へ消えた。


 それにルシェルは、真っ青になる。

 アルシュは、何かの特別な力を持っているので、それで防ぐと思っていた。

 だけど、現実にあったのは、アルシュが炎に包まれて吹き飛ばされた場景だった。


 大人達は大騒ぎとなり、アルシュが消えた用具倉庫へ走ると、用具倉庫から炎が出て来た。

 厄介な事に、普通の炎でない精霊の炎は、精霊の力で出来た水でしか消えない。

 水の属性の精霊を持つ大人が、急いでその精霊を出して炎を消して、アルシュがいる倉庫へ入ると、アルシュを見つけ外に担ぎ出した。

 アルシュは、額に火傷を負い、体もダメージを受けていた。


 そう、アルシュが力の暴走を防ぐ為に、レッドリーレスに抑制の命令をしていたので、レッドリーレスも最小限の防護しか展開出来なかった。

 精々、炎を広げない程度と、衝突によるダメージの軽減だが、その軽減を越えてアルシュにダメージが到達していた。


 そこは大騒ぎになり、急いで救急を寄越してアルシュを病院へ運んだ。


 ルシェルは、ユースを始め、レミリアと多くの大人達に囲まれて

「なんで、あんな事をしたんだ!」

 ユースがルシェルの肩を掴み、問い質した。


 ルシェルは

「だって、防げると思って…」


 レミリアが

「言いませんでしたか? アルシュくんは、精霊を持っていないと…」


 ルシェルが

「だって大人が、アルシュくんには、特別な精霊と同じ力があるって…」


 囲む大人の一人が

「アルシュくんは、その特別な力の操作が上手くないから、この道場に来ていたんだぞ」

 

 ルシェルが涙を零して

「だって、だって…」


 ルシェルは囲む大人達は、最悪な想像をした。


 確実に陸軍は、皇帝アルファスからの信用を失った…と。


 


 ◇◆◇◆◇◆◇


 アルシュは、特別な魔導治療ポッドに入り、治癒を高める回復の魔導液に包まれ、そのポッドから処置の手を伸ばす医者達。


 そして、直ぐにアルファスのいる皇帝城に、アルシュの事が報告された。

 アルファスは皇帝の座から立ち上がり

「直ぐに、アルシュのいる病院へ向かうぞ!」



 アルシュが処置を受ける部屋の前にアルファスが来ると、そこには、アルシュの送り迎えをしているアリアと、母親のファリティアに、正妃ヴィクティアが部下を伴って、先に来ていた。


 治療処置室のドアが開き、医者が出て

「何とか、大丈夫でしたが…。目覚めるまでは…このまま、回復魔導ポッドに入れたままにしますので」


 アルファスが

「アルシュの具合は…」


 医師が厳しい顔をして

「額に火傷と、数カ所、追突による骨のヒビが…」


 ヴィクティアが

「何処ですか?」


 医師が苦しそうな顔をして

「右肩の関節、左足の関節、背骨の中腹部分に…。普通の骨折なら、問題なく治療出来ますが…。可動部を支える部分のヒビは…後々に…長期の治療が必要かと…」


 魔法が発達したワールストリアでは、遙かに医療システムが進んでいる。

 普通の骨折でさえ、一週間で直る。

 だが、アルシュにヒビ、骨折が入った場所は、負荷が掛かる可動部だ。治療には時間が掛かる。


 項垂れるアルファス。

 その肩をに手を置くファリティア。


 そこへ、問題を起こした娘ルシェルの祖父、陸軍大将のダルシュンが顔を見せる。

「陛下…申し訳ありません」

と、ダルシュンは両手を床に付け土下座した。


 アルファスは、アルシュが負傷したショックでそれどころではない。


 正妃ヴィクティアがダルシュンの前に立ち

「どういう事だ。陸軍総大将ユグリット・アファード・ダルシュン!」

 その声色には怒りが篭もっていた。


 真面に受け答え出来ないアルファスをファリティアが支え、了見を聞くのをヴィクティアがする。


 まさに、誰しもが…こんな事になろうとは…思いもしなかったからだ。


最後まで読んでいただきありがとうございます。

次話もよろしくお願いします。

ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ