アルシュの望み
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アルシュは同じドッラークレス『超龍』を持つインドラと対面し…
オッス、オラ、アルシュ。
ラエリオンの誘いに乗って来ましたジェネシス帝国、そこで…オラと同じ人にあったぞ。
ラエリオンは、インドラ達とアルシュの対面に座らせアルシュと見合わせる。
インドラと息子ロディーは、アルシュを凝視する。
アルシュは暢気に皿の料理を食べながら
「ああ…おじさん。インドラさんだっけ」
インドラは慎重に肯き
「ああ…そうだ。ジェネシス帝国でブラック・ジェネラル(黒の将軍)をしている」
アルシュは「ふ…ん」と頷く。
明らかにインドラから、他の者とは違う雰囲気をアルシュは感じている。
アルシュの隣にいるアリアが、アルシュに
「ここは、大人しくして…」
アルシュはニヤリと怪しげ笑み
「インドラおじさん。何が聞きたいの?」
アリアの忠告を無視するアルシュにディリアが立ち
「ごめんなさい。この子、ちょっと悪戯心に火がついたみたいで、お灸を」
と、ディリアはアルシュを引っ張って行こうとしたが…。
インドラが
「アルシュくんの望みは何だね?」
ディリアがアルシュを引っ張って行くの止めて、アルシュの背中を睨む。
その視線には、おかしな事を言うなよ!
と、威圧が篭もっている。
アルシュはそれを無視して
「そうだね…世界征服なんて…」
アルシュの左にいるラエリオンと、正面のインドラの目が鋭くなる。
アルシュはそれで分かった。
この二人は、特に世界に対して覇道なんて狙っていない。
あくまで、このジェネシス帝国の安寧しか望んでいないのだ。
アルシュは頭を横に振って
「冗談です。その…望みがないのが…」
アルシュの光が無い目に、ラエリオンが
「どうしてだね?」
アルシュは固い顔で
「ぼくは、微妙な産まれなんです。ヴィクタリア帝国の皇帝の妾腹です。
もし、何か望みを言ったら、それに乗っかって変な事を企む輩がいるかもしれません」
ラエリオンはそれを聞いて、目を細める。
アルシュは、自分の母国での位置を十分に理解しているのだ。
インドラが
「自分で道を切り開こうと思わないのか?」
アルシュの顔に僅かな悲しみが出て
「そうなれば、もしかしたら…ぼくの国が…大変な事になるかもしれません」
アリアはそれを聞いて目を閉じる。
アルシュの悲しい現実に対する理解の良さに、辛くなる。
皇帝の後継はアルテナで、アルシュは、絶対に皇帝の一門に加われない。
もし、加えたなら…国内で力が弱まっている陸軍が担ぎ上げて自分達の権勢を上げる材料にするのは、目に見えている。
インドラは腕を組む。
予備知識で、ヴィクタリア帝国が、陸、海、空の三つの軍の派閥に割れているは、知っている。
今、強いのが正妃や継室達の息が掛かった海軍だ。
空軍は中立を貫き。陸軍は後継者争いがあった皇帝よりだったので、その力が落とされているのだ。
それで理解した。
アルシュが望みを唱えれば、それを忖度して、陸軍が勝手に動くかもしれない。
このガキ、相当に頭が切れるぞ…と、インドラは思う。
ラエリオンが
「望みがないなら、私の所へ来るか? 何か…見つかるかもしれないぞ」
ラエリオンも、インドラと同じ結論に達していたが…。
その言葉は結論からの言葉ではない。
ただ、目の前にいる小さな子が困っているのを助けたいという、大人の気持ちからだった。
インドラは、アルシュの本心を理解した。
権力や、力、または執着する何かある者ではない。
先程の、世界征服は、自分達の本心を揺さぶる為の言葉で、おそらく、自分達の態度でこちら側の本心を理解している。
インドラは組んでいる腕の手を叩きながら
「もう少し、子供らしく甘えたらどうだ?」
アルシュが躊躇い気味に
「また…遊びに来てもいいですか?」
アルシュの目的は、ジェネシス帝国でも自分が繋がるパイプを持つ事だ。
ラエリオンがアルシュの力を知っているという事は、ジェネシス帝国に同じ力を持つ者がいる。
それは…目の前にいるインドラがそうだろう…。
それ故に、インドラが来たのだろう。
そんな推測をしていた。
後ろで見ていたディリアは、緊張感があったアルシュ達三人の空気が、いつの間にか柔らかくなった事と、アルシュがここでも繋がりを作ろうとしているのを察して
「私は、レアドの領主です」
ラエリオンとインドラがディリアを見て、ディリアが
「アルシュとは、縁があって…こうしています。この子の微妙な立場も理解しています。
もし、お二人がこの子と仲良くして頂けるなら…。
私のいるレアドが良きパスポイント(中継点)になるかもしれません」
インドラが
「アルシュくん。今度は私の所へ来るといい。その時は、息子のロディーが面倒を見てくれるだろう」
ロディーは戦う雰囲気ではなくなったので、ちょっとホッとして
「アルシュくん。ぼくの家にも来てね」
ラエリオンも
「私もだ。何時でも遊びにくるといい」
アルシュは微笑み
「ありがとうございます」
お礼を告げた。
そして、ラエリオンの邸宅で、破壊して良い場所で、高密度のレッドリーレスになり、赤いロゼッタストーンの小山を残した。
要するに自分は、この力を持ってますというアピールと、それなりに信頼しての手の内を見せる事をした。
ジェネシス帝国から帰る飛翔船で、アルシュは、インドラとラエリオンの二人に直通で繋がる連絡魔導プレートの二枚を手にして見つめる。
アルシュがいるベッドにアリアが来て
「ホッとしました」
アルシュはインドラとラエリオンの直通プレートを締まって
「別に戦うつもりで来たわけじゃあないから」
アリアが
「アルシュ様…。わたくしは、アルシュ様の味方ですから…」
アルシュは冷たい目をして
「それは、アルテナの味方である内だけだろう。アリアさんは…
ヴィクティア様の部下だからね。そのぐらいは分かっているいるから…」
アリアはアルシュを抱き締めようとしたが、アルシュがベッドから立ち上がり
「ちょっと、船内を回ってくる」
何処かへ行ってしまった。
アルシュは、甲板で飛翔船が雲をかき分けて進むを見ながら
一応は…ジェネシス帝国との繋がりは出来た。
これで、ディリアのレアド領も、ある程度は…守れるだろうし…。
最悪、ヴィクタリア帝国に居られなくなったら…ここに逃げられる算段は完成した。
◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆
ジェネシス帝国の皇帝ブルートスの前にインドラが来て
「ブルートス陛下、同じ力を持つアルシュ・メギドス・メルカバーは。
我が帝国に大きな財をもたらす可能性があります」
ブルートスは顎を擦り
「そうか…。それなら良い」
インドラが
「もし、時勢が重なれば…直ぐにでも手に出来るやもしれません」
ブルートスが訝しい顔をして
「それ程までに手駒にし易いのか?」
インドラは首を横に振り
「本人は、勇猛果敢な猛将ではなく。冷静沈着な知将の資質を持つ故に…
自身の置かれている不安定な立場を理解しています。
それが…本人の生存を脅かす時が来た場合には…」
ブルートスは腕を組み
「成る程、知将としての資質か…。
輝く一等星ではなく、一等星の傍にある伴星という事か…インドラ、お前と似ているなぁ…」
インドラは渋い顔をして
「は…その通りです。
ドッラークレスの力があっても、世の中を動かすのは…別の才覚ですから」
ブルートスは肯き
「分かった。だが、もし…我が帝国の害になるようなら…」
インドラは肩を竦め
「どうでしょうなぁ…。現状を知る力が強い者のは、相手の領分を侵しませんので…」
ブルートスはニヤリと笑み
「ますます、お前と似ているなぁ…」
インドラは肩を竦め
「同族嫌悪しないように、手にした場合は、ラエリオンに任せます」
「よかろう」
ブルートスは了承した。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ラエリオンは通信で、ヴィクタリア帝国の繋がりである南方陸軍大将ドルトルと通信をしていた。
ドルトルが
『どうでしたなかぁ? アルシュ様は…』
ラエリオンは少し考えワザと渋い顔をして
「まだ、幼い11の子供ですよ。特に筆頭する部分もありませんでしたよ」
ウソを言った。
『そうですか…』
ドルトルが欲しい答えで無かったので少し残念そうだった。
ラエリオンが
「ドルトル様達の立場も分かりますが…。それを叶えるような才覚は…あの子にはないでしょう」
ドルトルが
『どうして、そう…』
ラエリオンは淡々と
「余りにも思考が短絡的過ぎる。まあ…子供だからでしょうが…。
ですが…11歳であれは…ちょっと…」
ドルトルが渋い顔をする。
『はぁ…そうですか…』
残念そうなドルトルにラエリオンな
「まあ、何れ機会が訪れますよ」
そう、ウソを言った。
アルシュには、とんでもない知将としての才覚を見ていた。
だが、ここでそれをドルトルに教えれば、ヴィクタリア帝国陸軍の復権に消費されてしまうのは、目に見えていた。
ラエリオンが将来、アルシュを手にする算段の為と、アルシュを守る為の気持ちとして、ウソを教えたのだ。
ドルトルとの通信を終えてラエリオンは、アルシュに渡した連絡通信プレートと繋がる魔導端末を見つめた。
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