チャレンジ 『僕と妖精』
ヤマなしオチなし。文章を考えて、それに自分の描いた挿絵を組み込むってどんなものだろう?という試み。
なんでもやってみようというチャレンジと、その刺激によって「文章(物語)を書くって楽しかったよね?」を思い出したいがための自己満。そして、挿絵を入れたらレイアウトもしてみたくなるという…しかしスマフォなので限られる…
――と、いつもの描いてる過程ではないので、興味のある方だけ、どうぞ!
僕が妖精と出会ったのは、綺麗な月が浮かんだ夜だった。
いつもならとっくに寝ている時間、昼間に母さんが干しておいてくれたふかふかの布団に頬ずりしながら、薄っすらと開けた窓からそよぐ風を見ていた。
母さんには、今日だけは閉めて寝なさいと言われていたが、どうしても我慢できずに少しだけ開けていた。夜のひんやりとした風をぬくぬくしながら味わうのが好きだった。
だから、僕はバレないように、みんなが寝静まったあとで微かに浮かび上がる部屋の景色を楽しんだ。
そうして、どれくらい経っただろうか? 友達のマーシャが夢の端っこで手を振り、僕が駆け出そうとしたときに、それはきこえた。
くすくす、と誰かの笑い声――
母さんだろうか? いいや、母さんもそして姉さんも眠っているはずだ。父さん…ということはないだろう。その声は高くて柔らかくて、優しかった。
僕は、なぜだか声に惹かれた。こんな夜更けに、と思えば不気味に思うだろうが、僕にはそれが誘っているように感じられた。
目を擦り、耳を澄まし、そっとベッドから降りて薄暗い部屋を壁伝いに進み、窓へ向かう。そして、開けた隙間から外を覗き見た。
「妖精だ!」
僕は驚いて大きな声を出してしまい、咄嗟に口を押さえた。
妖精は、月の光を吸い込むように、霧とまじわりながら現れるところだった。
「……本当にいたんだ…」
妖精なんてずっとお伽噺のものだと思っていた。小さい頃におばあちゃんがよく話してくれたけれど、信じてなんかいなかった。
おばあちゃんは妖精を悪く言っていた。「いたずらばっかりで、しまいには自分たちの森へ連れて行って喰ってしまうんだ」嘘だと思っていたが、小さな僕は怯えて夜がこわくなったものだ。
けれど…あんなに光り輝く妖精に悪い奴なんているのだろうか?
僕にあるのは恐怖心よりも好奇心だった。あの妖精に近づいてみたい! 近くでもっとよく見てみたい! と、わくわくしていた。
僕は、窓をさらに開けた。
急に開けてしまっては妖精が驚いて逃げてしまうかもしれないと、ゆっくりゆっくり開けていった。
ギギィー…
「――っ!」
最後にもう一押しと思ったのがいけなかった。夜の空気を裂くように窓は音を立てて、僕と妖精の目が合った。
逃げられる!
僕はそう思ったが、妖精は違っていた。ふわふわと漂いながら僕に近づいて、それから言ったんだ。
「こんばんは、とてもいい夜ね」
頷くので精一杯だった。
妖精は、動かず、唾を飲み込むばかりの僕をじっと見つめた。
「ふふっ、人間はこんなに静かだったかしら?」
彼女はおかしそうに笑うと、空中でくるっと回った。
彼女はだんあまりな僕を気にした風もなく、月光を泳いで話し始めた。
「ねえ、一緒に遊ばない?せっかくの夜ですもの、あなたと私にはきっと運命があるのだわ。そうだ! 私たちの森へ来てみない? 人間は私たちのことを誤解しているの、だって――あなたには私が恐ろしい魔物にでも見えるっていうの? 私にはあなたは妖精ではないけれど、恐くなんてないわ。……ねえ、友達になってくれる?」
彼女の声は、甘い蜜のようにねっとりと僕に纏わりついた。
僕は、その甘さに酔いしれて、堪らず「うん」と頷いてしまった。
彼女は嬉しそうにまたくるっと回った。
僕もそんな彼女を見て、胸が温かくなった。
そういえば、マーシャが言っていた。「ロイは恋したことはないの?」僕がちっとも、って答えたら、マーシャは偉そうに胸を張り、恋について教えてくれた。
「誰でも好きな人が出来たら、その人から目も、心も離せないものよ。恋は単純でいて、難しいの。お子様のロイにはまだまだわからないかもしれないわね」
――なんて、僕を馬鹿にしていたけれど、今、わかったような気がした。
僕の目はずっと妖精を見ていたいと言っているし、僕の胸はドキドキと忙しなく喋っている。「ほら!どうした、もっと彼女に近づいて話しかけるんだ!ああっ彼女の透き通った手を握ったら、どうなるんだろうか…彼女もぎゅっと握り返してくれるだろうか?」――
ついに僕は、窓に足を掛け、裸足のままで降り立った。
「やった!一緒に来てくれるのね!」
ぐるぐると僕の周りを飛ぶ彼女は、とても可愛らしかった。僕より随分大人な女性であるように見えるのに、小さな女の子と話しているようだった。
僕は、やっと止まった彼女の手を取り、満面の笑みで言った。
「君とどこまでも一緒に行くよ」
彼女は、握り返した手に力を入れて、上目遣いに頬を染めた。
「嬉しい…」
そうして、僕と妖精は歩き出した。
彼女が棲む――彼女たち妖精の森へと手を繋いで向かった。
結果―― 「大変…」
文章と絵を同時に考えていたせいか、どちら片方だけっていうのより、より頭を使った感。こんな絵を描きたいんだよな〜とか、なんか挿し込むところと文章の一致がしないわ〜とか、挿絵って『見せ場』てことでしょう?文章は出来たのに、どこの場面を描けばいいのかすごく悩んだ。
ただ慣れてないせいかもしれないけど、文章に挿絵を入れるって意外と難しいものであると感じた。
絵の質もそうだろうけど、どうでもいいところの挿絵は描けないし、あまり入れすぎると次話もそのペースで入れにゃならんのか、描かにゃならんのか⁉ と、刺激や息抜きをポーンと越えて、プレッシャーになるのかもしれない。
でも、中途半端感は否めないが、これが普通と感じて、書き(描き)終えたあとの達成感は数倍にも膨れ上がるんだろうなぁ…
――しかし、そうなってみたいのも山々だが、人の顔を描く難しさにはまだまだ慣れそうにない。
以上でした。




