表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/133

第74踊 団体競技は波乱の予感

「じゃあ今から団体競技の種目を決めるぞ~」


翌日のホームルーム。


天使先生の朝のあいさつが終わり、上野さんとヒロキングの2人が司会進行をはじめた。


「昨日と同じく、やりたい種目の時に挙手してくれ」


上野さんが黒板に団体種目を板書していく。


・クラス対抗リレー

・チーム対抗リレー

・部活対抗リレー

・男女混合二人三脚

・ムカデ競走

・綱引き

・玉入れ

・大縄跳び


「それじゃあまずは、クラス対抗リレーからだ。やりたい人いるかー?」


クラス対抗リレーは、800mを4人でリレー形式で走る種目だ。


いづみと佳奈との約束もあるし、咲乃もチラチラこちらを見てきている。


僕は咲乃をみて頷き、そっと手を挙げた。


ヒロキングは僕が手を挙げたことで驚いた顔をしていた。


「おぉ!片桐、お前がやるとは意外だな!なら俺もやるか!」


「いろいろあんだよ。ヒロキングもやるんだな」


「そりゃもちろん!片桐がやってやらないわけにはいかんだろ」


グッと拳をこちらに向けてくるヒロキング。


なんか無性に恥ずかしいから辞めてくれ。


僕らのやり取りが終わってから咲乃も手を挙げた。


「高塚もやるのか!悪いが片桐にバトンを渡すのは俺だ!」


ヒロキングはビシッとポーズを決めている。

なにを張り合っているんだ。


「なっ、なんで私があいつにバトン渡さなきゃいけないのよ!」


おいおいバトン渡さなきゃリレーじゃないだろ。


「まあまあ2人とも片桐くんが好きということで、他にやりたい人はいませんかー?」


上野さんはそんな2人を無視して司会を続ける。


何か言いたげな咲乃とヒロキングだったが、上野さんの有無を言わせない圧に負けたようだ。


「はいはーい!私やってもいいよ~、面白そうだし」


勢いよく手を挙げたのは中谷千穂さんだ。


咲乃を上手く転がす女の子って印象だ。


「他にいなさそうだし、中谷さんお願いね」


4人目は中谷千穂さんに決定した。


「こほん、気を取り直して。チーム対抗リレー、やりたい人いるかー」


僕はクラス対抗リレーに出るし、今回は遠慮させてもらおう。


結果、ヒロキング含む運動部が立候補して決定した。


次は部活対抗リレーだが、各部活の顧問が決めるそうなので省略された。


「男女混合二人三脚だけど、出たい人いるかー?」


周囲の様子をみんなが伺って誰も手を上げない。


それもそうだろう。


男子が手をあげれば下心丸出しのように思われても仕方がない。


どこかのカップル専門競技だろこれは。


仮にヒロキングが立候補すれば、女子も競うように手を挙げるだろうが上野さんの圧は怖い。


「じゃあ、後回しにするぞー?」


後回しになりそうなとき、手を挙げた人がいた。


「誰もやらないなら私がやるよ~!」


中谷千穂さんだ。

誰もやりたがらないことを察して手を上げるとは、尊敬できる人だと思う。


「中谷さんありがとう!おいおい男子、やりたいやつ居ないのかぁ?」


ヒロキングが男子を煽るように聞くが、余計にやりずらいだろ。


中谷さんは、普段は咲乃に隠れているが、

咲乃に負けず顔も整っていて悪戯好きなお姉さんのような存在でクラス内での人気も高い。


案の定、周囲の様子をうかがう男子ばかりだ。


「ねぇ、誰もやらないなら私が指名してもいいかな?」


中谷さんがヒロキングに問いかけた。


ヒロキングは上野さんに確認し、


「もちろんOKだ!指名された奴は拒否権ないからなー」


中谷さんに指名されるのは誰なのか。


クラス内の男子が固唾を飲んで周囲を見守っている。


「えーとそうだなぁ……」


中谷さんはクラス内をぐるりと見回した。


一瞬その顔がこれから起きることを想像してふふっと笑っているようにも見えた。


「じゃあ……片桐くんで!」


「えっ、僕!?」


「男女混合二人三脚は、片桐と中谷さんで決定だ!異論は認めん、手をあげないやつが悪い!」


中谷さんからの指名で二人三脚に出ることになった。


咲乃も中谷さんの予想外の行動にぽかんとしていた。


残りの種目はとんとん拍子で種目が決まっていき、僕は最後に大縄跳びに出場することが決まった。


ホームルームが終わり、体育祭の練習がある運動場へと向かう。


咲乃は中谷さんに「どういうつもりよ」と問い詰めていたが、肝心の中谷さんは何処吹く風という顔だ。


ふと中谷さんがこちらを振り返って手を挙げた。


「よろしく片桐くん~」


咲乃も釣られてこちらを振り返り、僕であることを認識して、キッと睨まれた。


なんで僕が睨まれるのかわけわからん。


運動場には、全校生徒が集まっていた。


夏の日差しの暑さも相まって動かなくても汗をかくほどだ。


体育教師の指示の元、準備運動として、ラジオ体操を始める。


その後、行進の練習をしたりして、チームの練習へと移り変った。


「藤朋チームで二人三脚出る人集まってー!」


3年生の集合の合図で、運動場の隅に集まった。


「よろしく頼むよ片桐くん、いや、秋渡くんかな」


そこにはもちろん、中谷さんがいてふふっと笑っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ