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第49踊 選ばれる水着、試される理性


「じゃ、次は私たちね!」


「いづみのも決まったし、選びに行こうかしら」


いづみと入れ替わるように、佳奈と咲乃が水着を選びに向かう。


二人が勢いよくショップの奥へと消えたあと、僕は残されたいづみと顔を見合わせた。


「秋渡くんのおかげでいいもの買えたよ~!ありがとう!」


いづみは満足そうに笑いながら、袋を両手で持ち上げる。


「そっか、それならよかった」


そう言うと、いづみはにこっと笑った。


無邪気で純粋無垢な笑顔。


つい見とれてしまった。


「そ、そんなに見つめられると……さすがに恥ずかしいよぅ」


いづみが頬を赤らめて目を逸らす。


しまった、じっと見すぎたか。


「あー、ごめん」


慌てて視線をそらしたが、なんとも言えない空気になってしまった。


変に意識したみたいで、なんだか気まずい。


「お?えちぎりが狼になった感じ?」


「佳奈の言う通りね!油断も隙もないわ」


そんな空気を吹き飛ばすように、佳奈と咲乃がすばやく戻ってきた。


まるで突撃してきたような勢いだ。


「二人が来なかったら、危なかったよ~」


いづみが冗談っぽく肩をすくめる。


佳奈と咲乃はなぜか僕をじとっと睨んでいた。


「……なんで俺が責められてるんだ?」


思わず呟いたが、答えは返ってこなかった。


佳奈と咲乃に連れられ、試着室前へ。


「じゃーん!」


数分後。試着室のカーテンが順番に開かれた。


そこには、日焼け跡が良く似合う水着の女の子、佳奈がいた。


佳奈が選んだのは、ネイビー×ホワイトのツートンカラーのビキニ。


トップスはスポーツブラ風のデザインで、肩紐がクロスしている。


彼女の引き締まった腹筋がしっかり見える形で、スポーティながらもどこか女性らしさを感じさせる。


しかし、それだけじゃない。


ビキニのボトムスは、ややローライズ気味で、彼女の太ももや骨盤のラインを強調するカッティングになっていた。


そして、一番目を引いたのは、佳奈の健康的な日焼け跡だった。


普段の練習でついたであろう、ショートパンツやユニフォームのラインが肌にくっきりと残っている。


その白い部分と焼けた肌のコントラストが、妙に色っぽく映る。


「どう? 似合ってる?」


佳奈がにやっと笑いながら、腰に手を当ててポーズを取る。


その仕草がまたエロ可愛くて、視線のやり場に困る。


「佳奈ちゃんえっちすぎるよ!でも可愛い!」


「……あー、うん、似合ってると思う」


「ふふっ、秋渡、なんか目そらしてない?」


「そ、そんなことは……」


「ふーん? まぁ、照れるのも無理ないかもね」


自分でも分かっているのか、佳奈はいたずらっぽく笑って見せた。


「じゃ、次は私ね」


佳奈が僕を冷やかす間もなく、咲乃が前に出る。


彼女が選んだのは、淡いピンクのワンピース水着。


胸元には小さなリボンがあしらわれていて、スカート部分には何重にも重なったフリルが施されている。


肩紐もリボンで結ぶタイプで、細い肩と華奢な鎖骨が際立っていた。


ワンピースタイプとはいえ、ウエスト部分が少しシースルーになっていて、ほんのり肌が透けて見えるのがポイントだ。


大人っぽさとは正反対の、可愛らしさを極めたデザイン。


咲乃の小柄な体にはぴったりすぎるほど似合っていた。


「……ど、どう?」


普段は横柄でクールな咲乃が、珍しく裾をつまんで恥ずかしそうにしている。


その仕草がまた破壊力抜群だった。


「めっちゃくちゃ可愛い!」


思わず食い気味に言ってしまい少し後悔した。


「そ、そう?」


顔を少し伏せて、視線を泳がせる咲乃。


いつもはクールな態度を崩さない咲乃だが、やっぱりこういう可愛い服装には照れるらしい。


「うわー、秋渡、めっちゃ顔赤いじゃん!」


「なっ、そ、そんなことない!」


「いやいや、めちゃくちゃ照れてるじゃん!咲乃の破壊力、やばいね!」


ほんのり頬が赤くなっているのが分かる。


「咲乃ちゃん可愛すぎ!持って帰りたいよ!」


いづみもなぜか興奮気味だ。


佳奈が茶化しながら、咲乃の肩をぽんぽんと叩く。


「……まぁ、たまにはいいか」


そう呟く彼女の表情が、どこか恥ずかしそうで、でも嬉しそうだった。


佳奈に手まねきされ、近づくといきなり腕を組まれた。


「ほら、これならデートでもいい感じじゃない?」


「デ、デート?」


佳奈が悪ノリで言うものだから、ますます混乱する。


というか、佳奈の胸が当たって何も考えられない。


「わ、わたしだってッ!」


咲乃も反対側の腕を組んできた。


咲乃は佳奈と違い少しよそよそしいが、白い肌はみるみる真っ赤になっている。


逆に恥じらう破壊力が僕を苦しめていた。


思春期にはキツすぎる。


「秋渡、すっごく照れてる!」


佳奈が面白がって僕をからかう。


恥ずかしすぎて、というか色々ヤバすぎてどうにかなりそうだ。


そして、そこへ第3勢力が現れた。


「ちょっと待ったーーー!!」


僕に向かって、ものすごい勢いで突撃してくるいづみ。


しかし、勢いが強すぎたのか、手前でつまづき僕に抱きつく形になる。


「秋渡くん! あんまりデレデレしちゃダメだよ!」


僕の胸の中で上目遣いで見てくるいづみ。


なぜか抱きしめたい欲にかられたが、理性が勝った。


いや、腕が封鎖されてたからだ。ごめん理性。


「えっ!? そんなデレデレしてないだろ!?」


「嘘だー! さっきからめっちゃ顔赤いし!ちゃんと女の子の前では冷静にしてなきゃ!」


「無理だろ、こんなの!!」


「……秋渡くん、これは訓練だよ!」


「な、なんの!?」


「耐性をつける訓練!」


「いらねぇ!!」


といいつつも名残惜しいがみんなを引き剥がした。


色々と危ないところだった。


みんながそれぞれ選んだものを購入して帰路に着いた。


佳奈の悪ノリの恐ろしさを改めて知った1日だった。


夏休みを楽しく青春するために、期末テストは頑張らないとな。

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