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第40踊 スーパー佳奈! 必殺技は咲乃を超える?!


オッス!オラ佳奈!

みんなに必殺技見せてやるって啖呵切ったけどよぉ実際は何もねぇんだ!

とりあえず、キッチンへと逃げ込んできた!

次回 佳奈ピンチ、必殺技なにもない。

ぜってぇーみてくれよな!


……なんて幼い頃見た某アニメの次回予告を頭の中で真似するくらい、私、平野佳奈は追い込まれていた。


仲間だと思っていたいづみの裏切り。


しょうが焼き普通に美味しかったんだけど!


こっそり練習してるのはうすうす感じてはいたがここまで差を付けられるとは思ってもみなかった。


そして咲乃のオーバーキル。


ずるいよあんなロールキャベツ出されたら勝てるわけないじゃん。


だが、私だって運動部の端くれだ。


負けっぱなしは性にあわないし、相手が強ければ強いほど燃えるタイプだ。


一矢報いたいし、同じ土俵で勝てないなら違う土俵に上がるしかない。


だから、私は無い頭を振り絞って考えたのだ。


2人とは違うジャンルで攻めようと。


私は素早く調理に取り掛かった。


私がやることはずるだし、負けることもわかってる。


でもインパクトは、記憶には残るはず。


試合に負けて勝負に勝つ!


「これがスーパー佳奈ちゃんの必殺技だ!」




僕たちは佳奈の必殺技が何なのか議論していた。


「咲乃ちゃんは必殺技何だと思う?」


「佳奈は天然よ、何かわかるわけないわ。でも、安心していられるほど簡単な女の子でもないわね」


どうやら2人とも楽な相手ではないと踏んでいるようだ。


しばらくすると佳奈が調理を終えて戻ってきた。


時刻は3人目ということもおり2時過ぎになっている。


「これがスーパー佳奈ちゃんの必殺技だ!」


佳奈が持ってきたのはデコレーションされたホールケーキだった。


佳奈が誇らしげに差し出したホールケーキは、色鮮やかなフルーツとふわふわの生クリームで見事にデコレーションされていた。


その中央に描かれた文字「秋渡♡」が、全員の視線を釘付けにした。


「平野らしいな」


ヒロキングはケーキを見て吹き出した。


「お前のそういうストレートなとこ、なんか笑えるよな」


「でしょ!」


佳奈は胸を張る。


「これぞインパクト勝負ってやつよ!」


僕は、言葉を失ったままケーキを凝視していた。


「秋渡くん?」


いづみが悪戯っぽく笑いながらこちらを覗き込む。


「顔赤いよ。もしかして嬉しかったりする?」


「な、なわけないだろ!」


僕は慌てて否定するが、声が裏返ってしまった。


「へぇ、そういうことなんだ?」


佳奈がニヤニヤしながら顔を寄せてくる。


「違うって! これは……その、ただビックリしただけだ!」


「ふふっ、秋渡、ほんとわかりやすいわね」


咲乃が冷たい目で俺を見つめながら、ため息をつく。


「まあまあ、佳奈ちゃんのこういう大胆さって、なんだか羨ましいよね」


いづみが肩をすくめた。


すると、咲乃が視線を落としてぽつりと漏らす。


「……私だって」


「えっ?」


僕が聞き返す前に、咲乃は顔を上げ、いつものクールな表情を取り戻していた。


「なんでもないわ。とりあえず、佳奈のケーキ、食べてみたら?」


促されるままに、僕はフォークを手に取り、ケーキを一口頬張る。


「……おいしい。ちゃんと甘さ控えめで食べやすい」


「でしょ! スーパー佳奈ちゃんの必殺技だからね!」


佳奈はガッツポーズをする。


「でも、佳奈ちゃん……」


いづみが苦笑いを浮かべながら言った。


「スポンジ、やっぱりスーパーで買ったやつだよね?」


「その通り!」


佳奈は胸を張る。


「スーパー佳奈ちゃんの“スーパー”は、その名の通りスーパーのものをそのまま使用したってことだから!素材の味を生かしてるんだ!」


「堂々と言うことじゃないけど……まあ、佳奈らしいか」


咲乃が呆れながらも微笑んだ。


全員の料理が出揃い、審査タイム。最後に優勝が決まったのは……


「優勝は……高塚のロールキャベツです!」


代表してヒロキングが結果を告げた。


みんな納得の表情で拍手する。


「あのロールキャベツは正直レベルが違った」


僕がそう呟くと、いづみも頷いた。


「うん、味も見た目も完璧だったし」


「ありがとう。でも……」


咲乃が少し複雑そうな顔をしているのが気になった。


「どうしたんだ? 優勝したのに嬉しくないのか?」


僕が尋ねると、咲乃は微かに笑った。


「試合には勝ったけど……勝負には負けた気分なのよね」


「え?」


「佳奈のやり方、ずるいけど強いわ。記憶に残るっていう点では、私より完全に上だった。『秋渡♡』だなんて、あんなの誰も真似できないわよ」


「でしょでしょ!」


佳奈が得意げに笑う。


「私だって……少しはそういうこと、やればよかったのかしら」


咲乃はぽつりと漏らした。


「咲乃ちゃんまで?」


いづみが驚いたように反応する。


「だって……」


咲乃が少し顔を赤らめながら続ける。


「秋渡、ああいうのされたら嬉しいのかなって思ったから」


「な、なんで僕の話になるんだ!」


僕は焦って声を上げる。


「……私だって考えたよ。秋渡くんにインパクト残す方法くらい」


いづみまで顔を赤くしながら呟く。


「ちょ、ちょっと待て! みんな落ち着け!」


僕の必死の叫び声をよそに、佳奈が勝ち誇ったように笑う。


「どうだ! やっぱり私が一番でしょ!」


「佳奈、そういうのはもういいから!」


僕は頭を抱える。


ヒロキングはそれを見てくすくすと笑っている。


こうして、咲乃の優勝で料理対決は幕を閉じた。


だが、何か妙な余韻を残したこの一戦。


僕の胃よりも心が疲れたのは間違いない。


ただ、ケーキの「秋渡♡」の甘さと、咲乃やいづみの意味深な態度が、妙に頭から離れそうにない。


……てかこれ勉強会だったよね?

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