表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

39/133

第28踊 2人で遊んだ時よりもラフな服装なのはなぜなのか


平野さんと遊んだ日から数日がたち、GW最終日を迎えた。


今日はみんなで遊ぶ予定になっている。


ヒロキングが「俺が計画を立てておく」と言っていたが、一体どんな予定を立てているのだろうか。


朝の部活の時間、高塚さんも気になる様子で「今日は何するんだろうね」とぼそっとつぶやいていた。


そんな彼女の様子を見て、何となく緊張感が薄れる。


相変わらず、彼女も含めてみんながこうしているのが不思議な感覚だった。


集合場所はお決まりの駅前だ。


田舎に住んでいると、どこかに集まるときの候補地は限られる。


駅前はその中でも最も分かりやすく、無難な選択肢だ。


15分前には着いておこうと少し早めに家を出て、集合場所に到着する。


すると、そこには既に宮本さんが立っていた。


「おはよう、片桐くん。早いね。」


宮本さんがにっこりと笑いかける。


いつもの制服姿とは違い、シンプルなカジュアルな格好だった。


白いTシャツに薄手のカーディガン、デニムのショートパンツというラフな服装が新鮮で、思わず視線が止まる。


「あ、おはよう。宮本さんも早いね。」


ぎこちなく返すと、宮本さんは軽く肩をすくめた。


「家が近いからね。でも片桐くんも早い方でしょ?」


その言葉に、思わず苦笑する。


少し会話を交わしていると、高塚さんが合流した。


「やぁ二人とも。早いじゃん。」


高塚さんもまた、普段の印象と違う。


小柄な体にオーバーサイズのパーカー、スキニージーンズを合わせたカジュアルな服装が、少し大人びて見える。


彼女がこちらに近づいてきながら、宮本さんと目が合うと軽く手を挙げた。


「あ、高塚さん、今日は楽しもうね!」


宮本さんが明るい声で挨拶を返す。


そのやり取りを見ていると、自然と口元が緩む。


最後に現れたのはヒロキングと平野さんだった。


平野さんは、鮮やかなグリーンのロゴ入りTシャツにショート丈のパーカー、そしてカジュアルなデニムスカートという装いだった。


3人とも以前2人で遊んだときよりも、ずっとラフな服装できていた。


もちろん、ラフでも可愛いのだが。


「やぉやぁみんな!もう揃ってる!?」


平野さんが嬉しそうに声をかけ、全員が笑顔で応じる。


「さて、今日は何するんだ?」


僕が尋ねると、ヒロキングが得意げに笑った。


「カラオケだ!」


予想外の答えにみんなで顔を見合わせ、そして笑いがこぼれた。


近くのカラオケボックスに向かい、受付を済ませて広めの部屋に通される。


さっそくヒロキングがリモコンを手に取り、「じゃあ俺がトップバッターだ」と流行りのドラマの主題歌を歌い出した。


彼の歌声は思った以上に力強く、しかもどこかノリノリでみんなを引き込んでいく。


次にマイクを手に取ったのは宮本さんだった。


「じゃあ私は…これにしようかな。」


画面に表示されたのは、最近人気のアイドルグループのヒットソングだった。


彼女の歌声は明るくて軽やかで、まさに曲のイメージにぴったりだった。


「じゃあ次は私が歌おうかな。」


高塚さんが選んだのは、清涼飲料水のCMに使われている爽やかな曲。


普段はクールで少し尖った態度を取ることが多い彼女が、楽しそうに歌う姿は意外で新鮮だった。


平野さんも負けじとアイドルソングを歌い、「やっぱりこれは盛り上がるよね!」と笑顔を見せる。


その楽しそうな様子を見ていると、自然とこちらまで楽しくなってくる。


僕も流れに乗り、アニメソングを選んでみた。


みんなが「いいじゃん!」と盛り上げてくれるおかげで緊張もほぐれた。


そしてヒロキングに「片桐、これ一緒に歌おうぜ!」と強引にマイクを渡され、最初のデュエットが始まった。


歌い終えると、平野さんが「私も片桐くんと歌いたい!」と声を上げる。


それを見た宮本さんと高塚さんも「じゃあ私も」「次は私!」と続き、結局全員とデュエットすることに。


一人ずつ違うペアで歌うたびに、それぞれの個性が感じられ、部屋中が笑いと拍手で満たされる。


カラオケは予定以上に盛り上がった。


気がつけば3時間があっという間に過ぎていた。


「楽しかったね!」


平野さんがそう言いながら部屋を出ると、みんなが口々に「またやろう」と話し出す。


みんなの新しい一面を知ることができたこの日。


普段は平穏を求める自分だけれど、こうしてみんなと騒ぐ時間は、やっぱり楽しい。


家に帰る道すがら、今日の出来事を思い出しながら、自然と口元がほころぶのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ