第28踊 2人で遊んだ時よりもラフな服装なのはなぜなのか
平野さんと遊んだ日から数日がたち、GW最終日を迎えた。
今日はみんなで遊ぶ予定になっている。
ヒロキングが「俺が計画を立てておく」と言っていたが、一体どんな予定を立てているのだろうか。
朝の部活の時間、高塚さんも気になる様子で「今日は何するんだろうね」とぼそっとつぶやいていた。
そんな彼女の様子を見て、何となく緊張感が薄れる。
相変わらず、彼女も含めてみんながこうしているのが不思議な感覚だった。
集合場所はお決まりの駅前だ。
田舎に住んでいると、どこかに集まるときの候補地は限られる。
駅前はその中でも最も分かりやすく、無難な選択肢だ。
15分前には着いておこうと少し早めに家を出て、集合場所に到着する。
すると、そこには既に宮本さんが立っていた。
「おはよう、片桐くん。早いね。」
宮本さんがにっこりと笑いかける。
いつもの制服姿とは違い、シンプルなカジュアルな格好だった。
白いTシャツに薄手のカーディガン、デニムのショートパンツというラフな服装が新鮮で、思わず視線が止まる。
「あ、おはよう。宮本さんも早いね。」
ぎこちなく返すと、宮本さんは軽く肩をすくめた。
「家が近いからね。でも片桐くんも早い方でしょ?」
その言葉に、思わず苦笑する。
少し会話を交わしていると、高塚さんが合流した。
「やぁ二人とも。早いじゃん。」
高塚さんもまた、普段の印象と違う。
小柄な体にオーバーサイズのパーカー、スキニージーンズを合わせたカジュアルな服装が、少し大人びて見える。
彼女がこちらに近づいてきながら、宮本さんと目が合うと軽く手を挙げた。
「あ、高塚さん、今日は楽しもうね!」
宮本さんが明るい声で挨拶を返す。
そのやり取りを見ていると、自然と口元が緩む。
最後に現れたのはヒロキングと平野さんだった。
平野さんは、鮮やかなグリーンのロゴ入りTシャツにショート丈のパーカー、そしてカジュアルなデニムスカートという装いだった。
3人とも以前2人で遊んだときよりも、ずっとラフな服装できていた。
もちろん、ラフでも可愛いのだが。
「やぉやぁみんな!もう揃ってる!?」
平野さんが嬉しそうに声をかけ、全員が笑顔で応じる。
「さて、今日は何するんだ?」
僕が尋ねると、ヒロキングが得意げに笑った。
「カラオケだ!」
予想外の答えにみんなで顔を見合わせ、そして笑いがこぼれた。
近くのカラオケボックスに向かい、受付を済ませて広めの部屋に通される。
さっそくヒロキングがリモコンを手に取り、「じゃあ俺がトップバッターだ」と流行りのドラマの主題歌を歌い出した。
彼の歌声は思った以上に力強く、しかもどこかノリノリでみんなを引き込んでいく。
次にマイクを手に取ったのは宮本さんだった。
「じゃあ私は…これにしようかな。」
画面に表示されたのは、最近人気のアイドルグループのヒットソングだった。
彼女の歌声は明るくて軽やかで、まさに曲のイメージにぴったりだった。
「じゃあ次は私が歌おうかな。」
高塚さんが選んだのは、清涼飲料水のCMに使われている爽やかな曲。
普段はクールで少し尖った態度を取ることが多い彼女が、楽しそうに歌う姿は意外で新鮮だった。
平野さんも負けじとアイドルソングを歌い、「やっぱりこれは盛り上がるよね!」と笑顔を見せる。
その楽しそうな様子を見ていると、自然とこちらまで楽しくなってくる。
僕も流れに乗り、アニメソングを選んでみた。
みんなが「いいじゃん!」と盛り上げてくれるおかげで緊張もほぐれた。
そしてヒロキングに「片桐、これ一緒に歌おうぜ!」と強引にマイクを渡され、最初のデュエットが始まった。
歌い終えると、平野さんが「私も片桐くんと歌いたい!」と声を上げる。
それを見た宮本さんと高塚さんも「じゃあ私も」「次は私!」と続き、結局全員とデュエットすることに。
一人ずつ違うペアで歌うたびに、それぞれの個性が感じられ、部屋中が笑いと拍手で満たされる。
カラオケは予定以上に盛り上がった。
気がつけば3時間があっという間に過ぎていた。
「楽しかったね!」
平野さんがそう言いながら部屋を出ると、みんなが口々に「またやろう」と話し出す。
みんなの新しい一面を知ることができたこの日。
普段は平穏を求める自分だけれど、こうしてみんなと騒ぐ時間は、やっぱり楽しい。
家に帰る道すがら、今日の出来事を思い出しながら、自然と口元がほころぶのだった。




