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第27踊 平野さんとゲームセンターは青春そのもの


高塚さんと遊んだ翌日の朝、弓道部の練習が始まると同時に、高塚さんが興味津々な様子で僕に話しかけてきた。


「片桐、今日平野さんと遊ぶんでしょ?何するのか決まった?」


僕は準備運動をしながら、苦笑いで答える。


「いや、まだ特に決まってないんだ。ただ、集合は駅前ってことだけは聞いてるけど…」


高塚さんは「ふーん」と呟いて少し考え込んだ後、不敵な笑みを浮かべた。


「平野さんなら、きっと楽しいところに連れてってくれるでしょ。楽しんできなよ。」


その言葉に少し背中を押されるような気持ちになりながら、僕は部活を終え、約束の場所へ向かった。


昼前、駅前に到着すると、平野さんの姿はまだ見当たらなかった。


スマホで時間を確認しながら待っていると、軽快な足音と共に声が響いた。


「ごめーん、遅れちゃった!」


振り返ると、そこには私服姿の平野さんが立っていた。


短めのデニムジャケットに、白いタンクトップと薄ピンクのキャミソールを重ね着している。


下は白いショートパンツで、健康的な太ももがまぶしい。


足元はスニーカーだが、動きやすい中にも女性らしさが感じられるセクシーな服装だった。


「何その顔。似合ってない?」


平野さんは少し首を傾げて僕をじっと見た。

僕は慌てて言葉を探す。


「いや、似合ってる。その、すごく…」


「おーい、片桐くん?今どこ見てるの?」


彼女はからかうような笑みを浮かべて、僕の目線を追うように軽く足元を押さえた。


「ほんと、片桐くんって分かりやすいよね。じゃあ今日は、えちぎりくんって呼んであげる。」


「やめろ!」


僕は顔を赤くしながら言い返したが、彼女は楽しそうに笑っていた。


軽口にタジタジになりながらも、僕たちは歩き出した。


「今日はゲームセンターに行こう!」


平野さんの提案で、ゲームセンターへ向かうことになった。


店内に入ると、明るい照明と賑やかな音が響き渡っている。


平野さんは真っ先にUFOキャッチャーのコーナーへ向かい、ぬいぐるみに目を輝かせていた。


「これ、めっちゃ可愛くない?カバンにも付けられるし」


彼女が指差したのは、小さめのくまのぬいぐるみキーホルダーだ。


「挑戦してみる!」


意気込んで挑戦する平野さんだったが、アームは思うように動かず、何度やっても取れない。


悔しそうに眉を下げた彼女が僕に振り向いた。


「片桐くん、これ取れると思う?」


「ちょっと貸してみて。」


僕は慎重にアームを操作し、狙いを定めていった。


3回目の挑戦でアームがぬいぐるみをしっかりと掴み、見事にゲットすることができた。


「やった!」


ぬいぐるみを取り出して平野さんに手渡すと、彼女は目を見開き、驚いた表情を浮かべた。


「え、片桐くん、すごいじゃん!これ、私にくれるの?」


「もちろん。平野さんが欲しいって言ってたから。」


彼女はくまのぬいぐるキーホルダーをぎゅっと抱きしめながら、照れくさそうに笑った。


「ありがとう、大切にするね。」


その笑顔を見て、僕の心の中が少し温かくなるのを感じた。


次に向かったのは対戦型の格闘ゲーム。


平野さんは素早い動きのキャラを選び、容赦なく攻撃してきた。


「片桐くん、弱い弱い!次はちゃんと勝ってよ!」


次の試合では僕が辛うじて勝利を収め、彼女は悔しそうに唇を尖らせていた。


そんな様子がどこか子供っぽくて、つい笑ってしまう。


「何笑ってるの!次は絶対負けないから!」


その後、協力型のシューティングゲームでゾンビを倒しながらステージを進んだ。


2人で息を合わせて敵を倒すたび、平野さんは嬉しそうにハイタッチを求めてきた。


「片桐くん、いい感じじゃん!私たち最強のコンビかもね!」


「そうだな。平野さんがいると頼もしいよ。」


最後に平野さんが提案したのはプリクラだった。


「これ撮らなきゃ締まらないでしょ!」


「え、プリクラって…」


「ほら、いいから!思い出作り!」


そう言われて断る理由もなく、僕はブースに引きずり込まれた。


撮影中、平野さんは自由自在にポーズを決めていたが、僕は終始ぎこちない笑顔を浮かべるのが精一杯だった。


撮影が終わると、平野さんはプリクラを眺めながら満足げに笑った。


「ほら、いい感じじゃない?」


「そうだな」


正直、僕の写りは微妙だったけれど、平野さんの笑顔がそれを補って余りあるほど魅力的だった。


夕方、駅前で別れの時間がやってきた。


「今日は本当にありがとう!すっごく楽しかったよ。プリクラもくまのぬいぐるみキーホルダーも大切にするね!」


平野さんはそう言うと、軽快な足取りでホームの方へ向かっていった。


「じゃあまたね、バイバイ!」


振り返らずに手を振る彼女の背中を見送りながら、僕は今日の出来事を思い返していた。


本当に楽しかったな…


彼女の無邪気な笑顔と、大事そうにくまのぬいぐるみキーホルダーを抱きしめる姿が、胸の奥にじんわりとした暖かさを残していた。

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