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第25踊 宮本さんとの初めてのお出かけ


いよいよ待ちに待ったゴールデンウィークがやってきた。


ゴールデンウィーク中はそれぞれの予定を詰め込み、宮本さん、高塚さん、平野さんと一日ずつ遊ぶことになっている。


そして最終日はみんなで集まる予定だ。


今日は宮本さんとの特別な一日。


部活が終わった後、午後からの待ち合わせに胸が高鳴る。


午前中の部活では高塚さんがやたらと心配してくる。


「片桐、顔疲れてない? 今日どこ行くの?」


「疲れてないし、どこって普通に遊びに行くだけだよ」


「ふーん……ちゃんと楽しめるといいね?」


なぜか含みのあるその言葉に不安を覚えつつも、片桐は深く考えないことにした。


午後、駅前で宮本さんと待ち合わせをする。


片桐は少し早めに着いてベンチに座っていたが、時計を見るたびにそわそわしてしまう。


そして約束の時間、ふわりとした春の風とともに現れた宮本さんの姿に、思わず目を見張った。


「お待たせ、片桐くん!」


声とともに駆け寄ってくる宮本さん。


その姿は、いつもの制服姿とはまるで違っていた。


淡いピンクのカーディガンを羽織り、裾がふんわり広がる白いワンピースには、ところどころ小さな花柄があしらわれている。足元はベージュのパンプスでまとめられ、全体的に春の柔らかさを感じさせるコーディネートだ。


さらに、胸元には繊細なペンダントが輝いており、彼女の表情をより一層引き立てている。


そして髪型も、今日は少しだけアレンジされていた。耳元に軽く揺れる小さなイヤリングが、彼女の動きに合わせてきらめく。


「どうしたの? なんか変な感じ?」


宮本さんは少し不安げに片桐を見つめるが、片桐は慌てて首を振った。


「いや、全然。なんていうか……すごく似合ってるなって思って」


「ほんと? ありがとう」


彼女の頬がほんのり赤く染まり、照れたように微笑む。


その笑顔に、片桐は一瞬言葉を失った。


「今日はせっかくだから、ちょっと可愛い感じにしてみたんだ。こういうの、変じゃないかな?」


「全然変じゃない。むしろ……すごくいいと思う」


「ふふっ、そう言ってもらえると安心するよ」


宮本さんはそう言いながら、ほんの少しだけ片桐の横に近づいた。


その距離感に、片桐の心臓はドキドキと鳴り続けていた。


彼女の私服姿は、片桐にとって初めて見る宮本さんの新たな一面だった。


普段は動きやすい服装や部活のユニフォームしか見ていなかったからこそ、そのギャップが特別に感じられる。


そして何より、春らしい華やかな雰囲気をまとった彼女が、目の前で微笑んでいることが嬉しかった。


この日、片桐は改めて思った。

宮本さんは、やはり太陽のような存在なんだと。


二人は電車に乗り、郊外の総合ショッピングモールへ向かった。


電車内では近くに座るものの、どこかぎこちない雰囲気が流れる。


だが、それも宮本さんが話題を振ってくれるおかげで次第に緊張がほぐれていった。


「片桐くん、こういうお出かけって慣れてるの?」


「いや、あんまり。ヒロキングとどこか行くことはあるけど、こういうのは初めてかも」


「そうなんだ。じゃあ、私がリードしちゃおうかな!」


冗談っぽく笑う彼女に、片桐もつられて笑った。


モールに到着し、まずは服屋へ。


宮本さんがいろいろな服を選びながら、「これ似合うかな?」と聞いてくるたび、片桐は真剣に答えた。


だが、次第にその会話が少しずつ甘い空気に変わっていく。


「ねえ、片桐くんってどんな服が好みなの?」


「えっ、俺の好み?」


「うん。どうせなら、片桐くんに『似合う』って言われたいなって思って」


無邪気な笑顔でそう言われ、片桐は耳まで赤くなるのを感じた。


「そ、そうだな……さっきの白いブラウスとか、すごくいいと思う」


「ほんと? じゃあ、それにしよっかな!」


宮本さんは嬉しそうにその服を手に取る。


そして、お会計を済ませた後、そっと片桐に近づいてきた。


「ありがとう、片桐くんのおかげで選べたよ」


そのささやき声に、片桐の胸が高鳴る。


買い物を終えた後、二人はモール内のカフェで一休みすることにした。


窓際の席に座り、宮本さんが注文したのはふわふわのホイップがのったカフェラテ。


片桐は少し苦めのブレンドコーヒーだった。


「ねえ、片桐くんって普段はどんな休日を過ごしてるの?」


「基本は家でゴロゴロしてるか、げーむしてるぐらいかなぁ」


「そっか。じゃあ、今日は特別な日だね」


「特別?」


「だって、片桐くんを外に連れ出したの、私だもん」


宮本さんはいたずらっぽく笑う。


その表情に、片桐はどう返せばいいのかわからず、ただ頷くことしかできなかった。


カフェで過ごした後、夕方には電車で駅へ戻る。


日が沈み始めた空はオレンジと紫が混ざり合い、どこか物悲しさを感じさせる。


改札口の前で、宮本さんがふと立ち止まった。


「ねえ、片桐くん」


「うん?」


「今日みたいな日、また一緒に過ごせるといいな」


宮本さんは少し恥ずかしそうにそう言い、次の瞬間、片桐の手の甲を軽くポンと叩いた。


「じゃあ、またね!」


笑顔で手を振り、改札を通る宮本さん。


その後ろ姿を見送りながら、片桐は心の中で「また次も必ず」と誓った。


ゴールデンウィークの特別な一日が、心の中に深く刻まれる。

彼女が楽しんでくれてとても良かった。

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