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第23踊 ヒロキングは片桐とバッテリーを組みたい


翌日、僕たち放送委員(といっても1組の担当だが)は、放送室でお昼ご飯を食べていた。


相変わらず自由雰囲気の中、平野さんが適当な音楽を流し、僕たちはそれぞれ弁当を広げる。


今日は新しいメンバーがいる。

ヒロキングだ。


「みんなはクラスマッチ、なんの種目に出るの?」


弁当のフタを開けた宮本さんが、興味津々といった表情で聞いた。


「ちなみに私と佳奈ちゃんはバレーボールだよ。咲乃ちゃんもバレーボール?」


「ええ、そうよ」


咲乃さんは箸を止め、軽くうなずく。


「勝負だね咲乃ちゃん!負けないよ!」


宮本さんが挑戦的な笑みを浮かべると、咲乃さんも負けじと返した。


「私も負ける気はないから」


二人の間に目に見えるような火花が散る。


これが女子特有の対抗意識というやつだろうか。


その様子に平野さんが肩をすくめた。


「でもさ、クラスマッチって敵同士になるのは当たり前だし、燃えるのはいいけど、試合終わったあとに仲直りしてよね?」


「そんなの心配しなくてもいいわ」


高塚さんはクールに答えるが、その目はすでに戦う気満々だった。


「あ、片桐くんは私のプレーをちゃんと見に来てね!いいとこ見せるから」


平野さんはこちらを笑顔で見ながらサムズアップしていた。


「ん?わかったよ」


「約束だよ〜」


平野さんはどことなく嬉しそうだった。


「佳奈ちゃんだけずるい!私のプレーもしっかり見てよ」


「片桐、同じ仲間なんだから私の応援をしっかりしなさいよ」


先程まで2人で火花散らしていたのに急に揃ってすごんでくるからビックリだ。


「で、片桐くんとヒロキングは?」


平野さんが僕たちに視線を向けてきた。


「ソフトボールだな」


ヒロキングが自信満々に答えると、宮本さんが興味津々な表情で問いかけた。


「片桐くん、ソフトボールやるの? ピッチャー?」


「いや、小学生のときにちょっとやっただけで、中学ではソフトテニス部だったから。さすがにピッチャーはちょっとね」


僕が答えかけると、ヒロキングが僕の肩を叩いてきた。


「ピッチャーでいいだろ! 俺がキャッチャーやるからさ!」


「いや、無理だって」


僕は手を振って否定するが、平野さんも興味深そうに乗ってくる。


「いいじゃん! ピッチャー片桐くん、キャッチャーヒロキングで、バッチリじゃない?」


「でも……」


逃げ腰になった僕を、なぜか咲乃さんがじっと見ている。


その目は、期待しているような、試しているような、不思議な感情を含んでいた。


「……分かったよ、やるよ」


観念して返事をすると、ヒロキングがガッツポーズをした。


「よっしゃー! 優勝間違いなしだな!」


「優勝はさすがに無理だろ……」


僕がため息をつくと、平野さんが笑いながら肩をすくめた。


「ま、クラスマッチって楽しんだ者勝ちでしょ!」


その後、話題は自然とスマホの話へと移った。


「そういえばさ、みんな連絡先知らなくない?」


平野さんが言うと、宮本さんが即座に賛成する。


「じゃあ、LINE交換しよう! グループ作っちゃおう!」


僕たちはスマホを取り出し、QRコードを読み取ってグループを作った。


宮本さんのアイコンは可愛らしい犬の写真。

平野さんはどこかで見たことのあるゆるキャラ。

そして咲乃さんは小さな猫のイラストだった。


自分の連絡先に女の子が追加されるなんてなぁ…

そんなことをぼんやり思いながら、少しだけ現実感がない気分になっていた。


部活動をしてから帰宅した僕は、ベッドの上でスマホをいじっていた。


すると、LINEの通知が画面に表示される。

グループLINEかと思ったら違うようだ。


送信者は……宮本さん?


「片桐くん、今度のゴールデンウィーク、遊びに行かない?」


画面を見つめたまま、胸が高鳴るのを感じた。

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