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第22踊片桐秋渡と高塚咲乃のクラスマッチ戦線

授業、お昼ご飯、部活。


慌ただしくも充実した毎日を過ごしていたら、気がつけばあっという間に4月の最終週になっていた。


入学当初はクラスの雰囲気にも慣れず、ただ流されるように過ごしていたけれど、今では自分の居場所が少しずつ見つかってきた気がする。


本格的な部活動が始まり、最初はかなり筋肉痛がキツかった。


ヒロキングには「鍛錬が足りてないんだろ、筋トレしろ」と笑われ、宮本さんには「マッサージしてあげよっか?」と柔らかい笑顔で言われた。


もちろん断った。


隣で冷たい目を向けていた高塚さんが怖かったからだ。


平野さんには「私と一緒に毎朝10km走ろうか!」と軽い調子で誘われたけど、それももちろん断った。


朝からそんなハードワークなんて無理だ。


いや、それ以前に高塚さん、なんで筋肉痛じゃないんだ……ズルすぎる。


それでも今は体が慣れてきたのか、筋肉痛もだいぶ和らいできた。

これが俗に言う「超回復」ってやつだろうか?

少しずつ練習が楽しく感じられるようになってきた。


午後のホームルームの時間は、クラス内では「天使の時間」と呼ばれている。


担任の天使先生が持ち前の明るい声で語り始めた。


「もうすぐ皆さんにとっては高校生活初めてのゴールデンウィークになりますね!調子に乗ってはめを外さないようにしてね」


ゴールデンウィークと聞いて、教室の空気が少し弛緩する。


確かに楽しみではあるけれど、まだ何も計画していない。

せっかくだから部活以外でも何かやってみたい気がする。


天使先生の話はさらに続いた。


「それともうひとつ!休み明けから2週間後には一学期のクラスマッチがあります。他のクラスに負けられませんよ!」


クラスマッチ。


その名の通り、各クラスがいくつかの種目で競い合う行事だ。


今回は男子はソフトボール、女子はバレーボール、そして男女混合の百人一首が種目として選ばれているらしい。


「ということで、今からメンバーを決めてもらいます。あとの進行は学級委員の新谷くん、上野さん、お願いね!」


学級委員であるヒロキングと上野さんに進行が交代される。


ヒロキングはさっそく立ち上がり、教室の中心に立った。

上野さんは黒板の前に移動し、メモ係を担当するらしい。


彼女は眼鏡をかけたザ・委員長タイプで、髪もきちんとまとめられていて清楚な女の子だ。


「それじゃあ、挙手制でいくから、やりたい種目がある人はそのとき手を挙げてくれ。希望者が多すぎたらジャンケンで決めることになるな」


ヒロキングの指示のもと、まずはソフトボールの希望者を募ることになった。


自分が選ぶならソフトボールだろう。

他の種目と比べてあまり目立たなさそうだし、クラスメイトたちの前で恥をかく心配も少なそうだからだ。


「じゃあ、ソフトボールに出たい奴、手を挙げろ!」


ヒロキングが声を上げると、クラスの男子たちが次々と手を挙げた。

その中には当然ヒロキング自身も含まれていた。

僕も少し迷ったが、結局手を挙げることにした。


次に女子のバレーボールの希望者が募られる。


ここでは高塚さんが迷うことなく手を挙げた。


彼女のやる気が漲る目つきが印象的だった。


その場にいた誰もが彼女の闘志を感じ取ったのだろう。


何が彼女を突き動かしているのだろうか。


最後に百人一首のメンバーも決まり、全体の割り振りが無事終了した。その後、ヒロキングが最後の確認をして進行は終了した。


「明日から体育の時間をクラスマッチの練習に使っていいって話だから、みんな気合い入れてこいよ!」


そう宣言するヒロキングの顔にはいつものように自信が満ち溢れていた。


部活動を終えたあと、高塚さんは帰り際に僕を振り返り、いつもの冷たい目を向けてきた。


「片桐、クラスマッチ、ちゃんと全力を出すんでしょうね?」


「……いや、最初から負けるつもりなんてないよ」


高塚さんは僕をじっと見つめたあと、フンと鼻を鳴らして歩き始めた。


「まあいいわ。私と同じクラスなんだから、ちゃんと勝ちなさいよね。宮本さんたちには負けられないわ」


いつもの冷たい口調。


でも、その裏にほんの少しだけ期待が滲んでいる気がした。


勝てるかどうかなんて分からないけれど、高塚さんが僕を見てくれているなら、それだけで少しだけ頑張れる気がする。


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