特踊 私たちのクリスマス③平野佳奈
中学生最後のクリスマスパーティーが終わり、静かな部屋に戻ると、佳奈はふうっと息をついた。
ポニーテールをほどき、鏡に映る自分をぼんやりと見つめる。
「楽しかったはずなんだけどな……」
部屋には友人たちからのプレゼントが並んでいる。
開けるたびに「佳奈っぽい!」と笑って渡されたものばかりで、彼女自身もそれが合っていると思っていた。
でも、それがすべてじゃない気がする。
佳奈はベッドに座り、手に持った小さなアクセサリーを眺めた。
それは親友からのプレゼントで、「佳奈の好きそうなものを選んだよ」と渡されたものだ。
「本当にこれが、私の“好き”なのかな……」
いつも明るくて、みんなに囲まれて、笑いの中心にいる。
そんな自分が佳奈自身も嫌いじゃない。
けれど、誰かが自分の本当の姿を見つけてくれることを、どこかでずっと望んでいた。
「あの子は天然だから」
「佳奈ちゃんはそういう子だよね」
その言葉が時々、心に引っかかる。
天然って何? 私って、どんな子?
佳奈はカーテンを開けて、冬の夜空を見上げた。
街のイルミネーションの光は遠く、静かな星が瞬いている。
「いつか……私のことを、本当にちゃんと見てくれる人に出会えるのかな。」
ふと、そんな言葉が口をついて出た。
誰かに話したことなんてない気持ち。
どんなときも笑顔でいる彼女の、その裏に隠しているほんの小さな願い。
「見つけてほしいな……」
そうつぶやくと、いつものように少し恥ずかしくなった。
けれど、佳奈の心の中にあるその想いは、確かに本物だった。
星空に向かって目を閉じる。その願いが、いつか未来の誰かに届くことを信じながら。




