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飼い主 vs パスバ・レイ


 開いたケージの扉から脱け出すなり、飼い主が叫んだ。


「チェンジ、マシャーン!」


 ピカーッ! と黄金色の光が包み、つい両手で目を覆ってしまったおれは危うく高いところから落ちかけた。


 優しく手が伸びてきて、おれを抱っこしてくれた。


「飼い主!」

 おれは、泣いた。

「おれ……、やったぞ!」


「よくやったな、うーたん」

 飼い主がそっとおれを下ろす。

「危ないから離れていろ」


 兄さんが後ろ向きにぐいぐい動いて、遂にハーネスから身体をすぽんと抜いた。

 後ろ姿からメラメラと殺気が立ち昇る。

 こちらを振り向くと、力を全身に込めた。


 大きくなっていく。

 兄さんが、黒い鎧を身に纏った鬼戦士パスバ・レイに変身していく。


「闘うのか……飼い主」

 おれは聞いた。

「あいつと闘えるのか?」


「やむを得ない」

 飼い主は金色の鎧に身を包み、背中の剣に手を添えながら、言った。

「あっくんは鬼になってしまったんだ。みんなを不幸にしようとする鬼は、退治しなければならない」


 みんなを不幸にしようとするのか……。

 それはダメだよな。

 でも……

 兄さんひとりが不幸になれば、みんな幸せになるのかな……。


「また、僕と、闘うつもり?」

 鬼の兄さんが飼い主と向かい合って、悲しそうに言った。

「今度は僕を殺すの?」


「あっくん……」

 飼い主が剣を兄さんに突きつける。

「許せ……。みんなのためなんだ」


 シシリーは床の上でまだ失神してる。

 よっぽど兄さんの殺し文句にキュン死したようだ。


「僕が死ねば、みんなが幸せになれるの?」

 兄さんが寂しそうに言う。


「そうだ」

 飼い主がはっきりと言った。

「天使のようだったおまえはもういない。鬼は滅するまでだ」


「悔しい……」

 兄さんの顔が、どんどん鬼らしく変わっていく。

「ぐ……ぐぐぐっ……! 僕は、また、おまえと……あの楽しかった生活を取り戻したいだけなのに……!」


「もう……無理だ。あっくん」

 飼い主が構えに入った。

「俺はうーたんと暮らしたいんだ」


 兄さんの顔が、歪んだ。


 ギャリィーン!


 ふたりの剣が合わさった。

 またしてもすごいうるさい音に、おれは耳を塞いだ。


 ギャンギャンギャンギャンギャン!


 ギャンギャンギャンギャンギャンギャンギャン!


 ギャギャギャンギャンギャンギャンギャフン!


 激しい……。

 激しすぎる……。

 おれ、激しい遊び好きだけど、これは限度を超えてる。


 兄さんがすごい形相で、飼い主を押してる。

 飼い主はなんか心に迷いがあるように見える。明らかに押されてる。


 そうだよな……。

 おれが飼い主と一緒にいたいのと同じなんだ。

 兄さんも、飼い主といたいんだよな。


 たぶん、飼い主も……。


 まっすぐにその気持ちをぶつける兄さんと、自分に嘘をついて兄さんを殺そうとする飼い主。

 決着は見えてた。


「あああーーッ!!!」


 兄さんの振り下ろした剣が、飼い主の肩を斬り裂いた。



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