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あっくん

「あっくん! 会いたかった!」


 飼い主がそう言って感動したように涙を流しはじめた。中年男の涙はキモい。


「その子は誰?」


 あっくんがおれのほうを見ながら言った。紹介しろ飼い主。おれもそいつのこと知らん。


「こいつはうーたんだ」

 すごく簡単に紹介してくれた。

「お前の弟だよ」


 弟? おれ、そいつの弟だったのか?

 知らなかった! 確かに産まれた時3匹ぐらい兄弟いたような気がするが、小さかったからよく覚えてない。に、兄さーん!


 するとあっくんがおれを憎むような目で見た。同じフェレットだからわかる。あれは憎悪の眼差しってやつだ。


「僕だけを愛してくれてたんじゃなかったの?」

 あっくんが声を震わせた。

「僕が死んだら簡単に次の子をお迎えしちゃうんだ……? 僕のことなんか、忘れて……?」


「違う! あっくん!」

 飼い主が必死に言い訳する。

「お前はお前、コイツはコイツなんだ! あっくんのことは決して忘れてなかった!」


「おい、飼い主」

 おれは聞いた。

「わけわからん。おれにもそいつを紹介しろ。おれの兄ちゃんなのか? 違うのか? どっちだ」


「血の繋がりはない」

 簡単に説明してくれた。

「お前の前に飼ってた子だ。だからお前の兄さんみたいなもんだ」


「……憎い」

 兄さんが言った。

「お前らが憎い。飼い主、お前も……。アホ面した真っ白な……つまりはバカ色のフェレットも」


 誰がバカ色だ。これは天使のような純白と言うんだぞ。失礼な。


「でも飼い主……。僕はお前のことは、憎みながらも同時に愛してしまっている」


 わぁ。告ったよ、コイツ。兄さんが父さんに近親相姦のBLだよ。


「うーたんとか言ったか?」

 兄さんがそう言っておれを睨む。


 おれは「はい」とうなずいた。


「飼い主は僕のものだ」

 兄さんの声に本気がこもってる。

「だから、貰って行くよ?」


 凄い殺気と迫力に、おれはもう一度「はい」とうなずいた。


「飼い主……。勝負だ」

 そう言うとあっくんは背中の剣を抜いた。

「お前が勝ったらそのバカ色フェレットと暮らすがいい」


「やめろっ! 何をする気だ、あっくん!?」

 飼い主は剣を抜かない。


「僕が勝ったらお前を1階層下の地獄へ連れて行く!」

 あっくんがそう言いながら、飼い主に襲いかかった。

「お前はそこでまた僕と一緒に暮らすんだ!」


 いや、それはおれ、困る。

 一人ぼっちにされるの嫌だ。


 勝て、飼い主!


「やめろー! あっくん!」


 しかし飼い主は剣を抜かなかった。



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