15、王子の部屋
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「そして、ここが僕の部屋だよ」
ジェンスは戸を開けた。大きな部屋だ。庭中が見下ろせる大きなガラス窓がたくさん並んでいる。
ベッドもスゴい。天井っていうのか屋根っていうのか、それがついたヤツだ。広さは普通に見かけるベッドの四つ分くらいはありそうだ。
「わ~、きれい! これ、何するん?」
アルがベッドの枕元にある小さな机の上の物に気づいた。そこには小さな銀色の鐘が置いてある。
「触ってもエエ?」
「うん、イイよ。だけど、まぎらわしいから鳴らしちゃあダメだよ」
とジェンスが言うのが早いか、当たり前みたいにアルは鐘を思いっきり振った。鐘は小さいくせに意外に大きな音が部屋中に響く。
「お呼びでございますか、ジェラルド様」
すぐに部屋の外から戸を叩く音がして男の声が聞こえた。
「何でもないよ。呼び鈴を落としただけだよ」
「左様でございますか。ご用でしたら何なりとお申しつけください」
「うん。ありがとう」
それからジェンスは部屋の隅でゴソゴソやり始めた。
アルのヤツは、さっき拾ってたやつを自分の上着のポケットから出して絨毯の渦巻き模様に合わせて並べ始めた。
俺は仕方なく窓の近くにあったイスに座った。二人が自分の世界に入って黙ってしまやぁ、こんな部屋の中で俺にやることはなかった。
部屋が広いからって物がたくさんあるわけじゃないみたいだから、何だかムダに広い。部屋なんて大の字で寝転んだ広さがありゃ足りるんじゃないのか。
あまり広い部屋ってのも何だか落ち着かないな。
何時くらいかな? もうそろそろメシ時じゃないのか。
腹も減ったし、だんだん空も暗くなってきたし、今日は父さんにつれてきてもらってる所だからケジメもなくダラダラと遊び回ってるのが父さんに知れると叱られる。
それに、帰らなきゃアルの所が心配するだろう。
「なぁ。おい、王子。俺、もう帰んなきゃ。アルの家も心配するだろうしさ、腹も減ったし、ウチの父さんにも叱られるし」
こっちに背中を向けて何かしていたジェンスが振り返った。
「それなら使いの者を走らせるよ。ならイイだろう?」
「それでもあんまし良くねぇんだけど」
「誰か」
ともかく俺は帰りたかったんだけど、俺が言うのも聞かないでジェンスは呼び鈴を振りながら戸口のほうへ歩いていった。
「ジェラルド様、お呼びでございますか」
すぐに戸が叩かれ、向こうから男の声が聞こえた。
「伝言に使いをよこしたいのだけど、できるかい?」
「少々お待ちくださいませ。すぐに」
ちょっと待っていると、また戸が叩かれた。
「開けてもイイよ」
ジェンスが言うと、戸が開いておじさん二人が顔を出した。
ジェンスはおじさん二人に何やら言っている。
言い終わるとおじさん二人は頭を下げてから部屋を出ていった。あ~あ、今夜は帰れなくなっちまったよ。じっちゃん一人で寂しくないかな。




