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11 棒術




 オーガから長棍を奪ったカワードは、そのまま次の話を開始する。


「さて、せっかくお誂え向きの武器も手に入ったんだ、ついでに簡単な棒術の話もしておこうか」


 言ってから、カワードが長棍を構えてみせるのだが、その構え方を見て、キャサリンは意外に思っていた。

 カワードの構え方は、オーガがやっていたような中段に構える、さながら剣のような構え方ではなく、まず棒を握った右手を肩の近くに添え、さながら肩で担ぐような姿勢をとった。そして左手は、身体の前を通る棍の上からかぶせるように乗せて握り、この手を少し持ち上げることによって、長棍の下端が前に突き出る。

 キャサリンにとって、このカワードによる長棍の構え方は、あまり見覚えの無い構え方であった。


「棒を武器にする場合、極端に短い棒で無い限りは、この構え方が基本になる。さっきのオーガのように、中段に構えるのは剣の構え方で、正直棒には向いていない。というのも、棒というのは自在に操ることが出来れば、変幻自在な攻撃を繰り出すことが可能な万能の武器でもある。そのためには、剣のような中段の構えではいけないんだ」


 言うと、次の瞬間にはカワードは長棍を操り、素振りをして見せる。左手を引くようにしながら、右手を滑らせつつ長棍を振り下ろし、最終的には両手の力でもって打撃を放った。


「例えばこのように、振り下ろし一つでも大きな違いが出る。中段の構えからでは、まず振り上げてからでなければ振り下ろしが出来ない。だが、この構えならスムーズに振り下ろしから入れる。当然、こっちの方が早く攻撃が出来るため、圧倒的に有利だ。他にも、この構えからは様々な動きがスムーズに繰り出せる」


 言って、カワードは棍を構え直し、次の瞬間にはオーガに向かって接近し、戦闘を再開する。


「まずは突き」


 長棍を握る右手と左手、両方を突き出すように前を運びつつ、左手は同時に持ち上げる。これによって、長棍は下からえぐるような動きの突きを繰り出すこととなり、オーガはこれを回避する余裕も無いまま、喉を突かれ、骨を砕かれた。


「足払い」


 カワードは瞬時に手を元に戻すと、次は長棍の下端を下げたまま、オーガの足元を払うような動きで振るう。喉に打撃を受け、ダメージによって混乱したままのオーガは、片足の内側を強く叩かれ、痛みと衝撃のままに払われ、転んでしまう。


「薙ぎ払い」


 とどめとばかりに、カワードは棍を横から力強く薙ぎ払い、倒れたオーガの側頭部を狙う。右手を滑らせることにより支点を変え、より強い遠心力が働くような構えで長棍を叩き込む。

 これに慌てて、オーガは両腕を上げて己の側頭部を守るように、無様な姿勢で構えた。だが――カワードは薙ぎ払いの勢いを殺さぬまま、棍を握る右手を支点に、左手を上下させることで自在に操作してみせる。長棍の先端はまるでオーガの両手をすり抜けるように回避し、勢いを全く落とさぬまま、防御さえ抜けて、オーガの側頭部に打撃を加える。


 カワードの膂力、そして長棍という武器の硬さ、そして遠心力、全ての要素が加わった結果、破壊力は高まり、オーガの頭部は容易く砕かれ、頭蓋骨にめり込むようにして長棍の一撃は頭部を破壊。

 これにより、オーガは即死、カワードの圧勝であった。


「――とまあ、こんな感じで構え方次第では自在に棒を操る事ができる」


 オーガとの戦闘に決着を付け、カワードはキャサリンの方へと振り返りながら言った。


「すごいとは思うけど、アタシに出来るかな」

「何にせよ、キャサリンの獲物が杖である以上、棒術は必須になるんだが、まあ、俺がつきっきりで教えるから安心してくれ」

「分かった、よろしくね、カワード」


 その後、二人はオーガの死体を処分し、拠点へと帰還する。その日から早速、キャサリンは棒術の鍛錬を開始し、カワードがこれにつきっきりで指導をすることとなった。

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