戦いの幕は切って落とされた
「奴らだけは許しちゃなんねぇ!」
決意も新たに男は叫んだ。
視線の先には我が物顔で蔓延った孟宗竹の群れが見える。
茂ったササが折り重なり、向こうが見えない程だ。
男の家は山際であり、竹がすぐそこまで迫っている。
背の高くなる竹は朝日は勿論の事、昼の間でも日の光を遮り、男の家を暗くしている。
夕方になって初めて部屋に日が差し込むくらいだった。
「全部ぶった切ってやる!」
その目に宿る光は強い。
自信の程が伺えた。
男の手には苦労して手に入れた必殺の武器が握られている。
武器への圧倒的な信頼が男の自信を生んでいるのだろう。
マキタMEA3201M。
それが武器の名だった。
排気量32ml、2サイクルエンジンが生み出す脅威のパワーは、350mmのチェーン刃に伝えられ、あらゆる大木を切り倒す能力を作り出している。
噂を聞きつけ、足を棒のようにして探し回った結果、ようやく辿り着いたセカンドユースのお店で見つけたソレ。
前オーナーが大事にしていたのであろう、隅々まで磨き込まれた本体は、これまで潜り抜けて来た幾多の戦場を想像させた。
17000イェン。
セカンドユースとはいえ、やはりそれなりに値が張っている。
しかし、その武器がなければ、男の持っている貧弱なハンドソーで退治(対峙)するしかない。
圧倒的な数の孟宗竹を前に、ハンドソーで立ち向かおうなど自殺行為であった。
仮に命を失わないとしても、次の日には起き上がれない程の痛みに苦しむ事になるだろう。
男に選択肢はなかった。
「切れる、切れるぞ!」
MEA3201Mの持つ能力はすさまじく、瞬く間に孟宗竹を切り倒していった。
ハンドソーで戦っていた頃とは比べようもない。
一振りで倒す、そんな印象があった。
「楽勝だぜ!」
男に笑みがこぼれた。
これまでの苦労が嘘のようである。
明るい未来が見えた。
「なんだ?!」
突如、それまで快調であったMEA3201Mがその動きを止めた。
高速回転をして敵を切り裂くその能力が、あろう事か孟宗竹に止められたのだ。
その身を犠牲にして刃を受け止めたのだろう。
身動き一つ取れない程に挟まっていた。
「ヤバい!」
男は冷や汗をかいた。
MEA3201Mはその見た目に反して繊細な武器である。
手荒に扱うと壊してしまいかねない。
「ここはひとまず戦線離脱だ!」
男は冷静に状況を判断し、手に持っていたMEA3201Mをその場で素早く分解した。
その武器は工具を使わずに分解出来るので、本体からガイドバーとチェーンを取り外してバーが曲がるのを防ぐ。
「待ってろよ!」
MEA3201Mをその身に挟んだままの孟宗竹をその場に残し、男は駆けた。
刃を助ける為の道具を取りに戻った。
「これだ!」
男は道具小屋の中にあった鉄の棒を手に取り、戦場へと戻った。
状況はそのままだった。
鉄の棒を、刃を挟んだ孟宗竹の間に差し込む。
間を広げようとこじった。
「取れたぜ!」
危機一髪、MEA3201Mは孟宗竹の挟撃から逃れる事が出来た。
「切りつくしてやる!」
男は再び武器を整え、孟宗竹の群れに挑んでいった。
孟宗竹を刈って家に差し込む光を得んとする、男の戦いは始まったばかり。
連日竹を刈ってますが、筋肉痛がヤバいです・・・
切るのもそれなりに大変ですが、一番大変なのは来年の春、タケノコを残さず倒しまくらないといけない事です。
でないと元の木阿弥という・・・
因みに、竹が生えているのは自分の土地ではありません。
土地の所有者も時々訪れて竹を切っていますが、高齢の為にままなりません。
夏はもう少し明るいのですが、この時期は本当に夕方まで暗いままです。
土地の持ち主に了解を取り、自分で切る事を選びました。




