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追放者達の集い~取り敢えず目標は果たしたので魔王討伐は勇者に任せて魔物討伐に勤しみます~  作者: 久遠
終章・孤児院編

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『追放者達』、対話する

 



「…………ほれ、いい加減起きろ」




 意識を闇へと埋没させていたアレスの耳朶を、声が叩く。


 鈴を転がした様に涼やかに、それでいて爛熟した果実の如き甘さと魅惑に満ちた聞き覚えの有り過ぎる声の響きに、無意識下で警鐘が掻き鳴らされていた生存本能の効果により、彼の意識が急浮上して行く。



 咄嗟に飛び起き、声の方向へと向き直りながらその場から飛び退る。


 腰に差していた得物を今度こそ抜き放ち、自身に掛けられる最大限の強化を施しつつ、限界近くまで術式を並列展開し、一撃でも当たれば人体であれば軽く消し飛ぶ規模の魔法を、同時に四つまで展開して見せた。



 当然、そこまでの無茶をすればアレスとて無事に済むハズも無く、目や鼻から出血が始まり、脳の血管すらもプチプチと千切れて行く音が聞こえて来ている気すらしていた。


 しかし、先に見せられた超常的な力を前にしては、この位の無茶位は通さないと仲間を守れない!とまで思考したアレスは、少し前までの状態並びに、自身の今現在の状態を認識し、混乱する事となる。



 …………そう、こうして得物を構えて見せていられている以上、彼の両腕は元の通りに治されている、と言う事に他ならない。


 流石に、手甲や暗器と言った装備の類いは外されている様子であったが、それでもあの一瞬で喪ったハズの両腕がこうして自在に動かせる状態でくっついている以上、やはり『治っている』と言う事になるのだろう。



 しかし、その癒し手たる仲間は近くには居ない様子。


 少なくとも、彼が気配を感じ取れる様な状態に無いか、もしくはかなりの距離を離されてしまっているか、のどちらかであろう。



 そして、更にアレスの混乱を煽る要素がまた一つ。


 彼の両腕を奪い、仲間達を蹂躙して重症を負わせ、彼らを敗北せしめた張本人であるハズの【魔王】が、アレスが寝かされていた、と思わしきベッドのすぐ近くにて椅子に腰掛けていたのだ。



 あんまりと言えばあんまり過ぎる程に急な反応と、その後の行動に呆れの視線を隠せずにいた。


 しかし、同時に彼の反応を好ましくも思っているらしく、その口元は緩やかに弧を描く形を取っており、雰囲気からも攻撃的なモノを読み取る事は出来ないでいた。



 …………現在の状況のみを鑑みれば、恐らくは自身に治療を施したのは【魔王】なのであろう、とアレスは判断する。


 が、同時に、何故そんな事をするのか?それが必要な状態にしたのは自身であるのに?との疑問が彼の脳裏を駆け巡り、状況を呑み込む事が出来ず、ベッドを挟んで視線を絡め合わせた状態で、得物を構えて術式を展開させたまま固まる、と言った無駄に器用な事をする羽目になってしまっていた。



 そんな彼の混乱を察知してか、それとも最初からそうするつもりでいたのかは不明だが、固まったアレスを前にして【魔王】は穏やかな様子にて彼へと言葉を掛けるのであった。





「…………取り敢えず、起きたのであれば良い。

 が、先のやり取りを再現し、再度眠りに落ちたい、と言うので無ければ、流石にソレらはしまった方が良いぞ?

 まぁ、妾としては、その血気に逸る気質は好ましく微笑ましいが、全てがソレだけで解決出来るモノでも無いのだから、な」






 ******






【魔王】の言葉に宥められる形で、アレスが術式を解除して得物を鞘へと戻して行く。


 ソレを目の当たりにした【魔王】は、満足そうに一つ頷いて見せると、ついて来る様に、と指示を出して部屋を移動し、彼をとある部屋へと誘導する。



 連れられるがままに進んだ先にあった応接室には、仲間達の姿が。


 少し前に受けていた大怪我は見る影も無く治っている様子であり、それぞれが椅子に腰掛けたり壁に寄りかかったりしながら、納得の行かない顔をしつつカップを傾けていた。



 互いに気付いた事で、半ば駆け寄る様にして無事を確認し合うアレス達。


 全員が傷一つ無く無事である、と言う事を確認し、安堵すると同時に、最後まで意識を保っていたヒギンズから治療を施して命を救ったのは連中だ、と告げられた事で再度アレスの脳裏を混乱が支配する事となる。



 そんな彼の様子を知ってか知らずか、再度椅子へと腰掛けた【魔王】が、アルカルダから渡されたカップを傾けながら言葉を放ち始める。




「さて、全員揃った所で、始めさせて貰おうか?

 先ずは、自己紹介と行こう。

 妾はルチフェロ、ルチフェロ=サタナキアと言う。

 俗にいう所のかつて『勇者』に敗れて封印された【魔王】であり、此奴を筆頭とした六魔将を配下に従える者である。

 まぁ、まだ目覚めてから年を数えてすらもいないから、現代の世情には少しばかり疎いが、それでも復活の噂が立っただけで過敏な反応をされている、と推測と理解は出来る程度には人間の事は把握しているよ」



「………俺達は──」



「あぁ、そちら側からの紹介は結構だ、アレス君?

 君達の事は、オルクを通じて報告を受けているし、こちらでもある程度は調べさせて貰っている。

 だから、君達の名前や出身地、特技、懐具合程度であれば、既に把握しているから時間の無駄だ。良いね?」




 思わず言葉を喪うアレス。


 そこまで調べてあるのならば、どうせ他にも色々と調べてあるのだろう、と判断して、内心でドン引きしながら口を噤むと、結構結構、と満足そうに頷いて見せてから、ルチフェロを名乗る【魔王】が言葉を続けて行く。




「さて、今回こうして君達に接触を持たせて貰ったのは、他でも無い。

 妾達の間にて、君達のリーダーたるアレス君が『特異点』ではないか?との議論が為され、その結果ほぼ間違い無いだろう、と結論が下されたのだけれど、それだけでは説明の付かない事が判明してね?

 だから、妾の目で直接確かめてやろう、と決めた訳なのだよ」



「…………そも、俺達はその『特異点』云々がイマイチ理解出来て無いんで、俺がソレに該当する理由だとかも知らないし、それだけだと説明が出来ない云々も知った事じゃないんだが、その辺の説明とかはして貰えるのだろうか?」



「まぁ、その程度ならば構わないだろうさ。

 妾達が『特異点』と呼称する存在、それは即ち以前の大戦の際に妾達魔族へと唯一拮抗し、幾度と無く立ち塞がってくれただけでなく、それまでは個々に対応して来ていた人間達の国々を纏め、連携した抵抗をひて見せるまでに至った人間の特異個体、即ち『勇者』とその再来を意味する単語だよ。

 そして、妾達は、お主こそがその『特異点』である、と考えていた、という訳さ」



「………………はぁ?

 いや、それは無いだろう?

 だって、『勇者』なら他に居るんだが?」



「なに、お主らのいう所の『職業(ジョブ)』が『勇者』である、というだけの者を指す言葉では無いのさ。

 普通ならば集まらない様な規模での人の繋がりや、有り得ない程の確率で希少な力を持った仲間を揃えられたり、と言った、異様なまでの『縁』を結ぶ力、それこそを恐れての指定であったからね。

 お主が言っていた『勇者』の方も一応は把握しているけど、やはりそういった面で見ると、『特異点』として要注意人物と見るべきは君の方だった、という訳よ」



「…………まぁ、その『特異点』とやらが何なのか、については一応理解はした。

 つもりだし、納得もしちゃいないが、一応な。

 で、それだと余計に特異な云々については、どういう事なんだ?

 正直、仲間達と出会えたのがそう言った『縁』が出来やすかったから、って事なら納得も感謝もするが、それ以外に関しては欠片も自覚出来る様な要素が無いんだがね?」



「あぁ、そこに関してなんだが……」




 そこで一旦言葉を切るルチフェロ。


 特に気負う事も無く続けられたその言葉は、当事者たるアレスだけでなく、その仲間たる『追放者達』のメンバー全員に留まらず、ルチフェロの隣に控える形で話に耳を傾けていたアルカルダすらも同様に驚愕させるのに足るだけの、そんな破壊力を持ったモノであったのだった……。















「そこに関してなのだがな?

 多分、お主、妾の血が入っているかと思われるぞ?

 テンツィアの『魅了』が効かずに弾かれた、というのも、恐らくはソレが原因だろうさ」







ついに明かされた衝撃の事実!?

コレを予測していた、って方は素直に申し出る様に

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公(に近しい人物)が敵対勢力の縁者ってのは珍しくない(スターウォーズの旧三部作とかウルトラマンジードとか) でもこの作品でその流れは読めないっす。 作者にしてやられた…
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