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追放者達の集い~取り敢えず目標は果たしたので魔王討伐は勇者に任せて魔物討伐に勤しみます~  作者: 久遠
終章・孤児院編

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『追放者達』、辿り着く

 


 話し合いの末に、使うべきルートを決定してから数日が経過したアレス達。


 そんな彼らは現在、とある山脈の麓へと辿り着いていた。



 彼らは結局、遠回りするルートを選んだのだ。


 やはり、中央を真っ直ぐに駆け抜けた場合に発生する、一時であれ帰還した、等の手続きや連絡、そしてそれに伴って発生するであろう諸々の騒ぎを厭い、多少時間が余計に掛かる事となったとしても、自分達のペースで進める方が良い、と判断したと言う事だろう。



 故に、彼らはカンタレラ王国の東側から入国し、一旦北側へと向かってから、こうして山脈が始まる端の方へと向かったのだ。


 既に、麓から見上げるだけでも雄大な姿を周囲へと晒しており、最端部とは言え最早壁にしか見えないそれらは、確かに途中からの横断を容易く許してくれる程に、人に優しいモノでは無いだろう、と見る者に確信を抱かせるには充分であった。



 普段からして、依頼で、とは言え深い森や暗い洞窟、と言ったモノには親しみが在る彼らであったが、此処までの天嶮の要害は流石に馴染みが薄かったのか、感心した様に眺めて行く。


 が、物心付いた時から遠目に、とは言えほぼ毎日眺める事となっていたアレスや、無駄に長く生きて各地を流離っていた経験の在るヒギンズは特にそう言った様子を見せる事も無く、懐かしさや歓心をわずかに滲ませる事はあっても、他のメンバー達の様に夢中になって惚ける様な事態にはなっていなかった。



 そうしている内に、山脈の端の部分から、広がる尾根の向こう側へと足を踏み入れる『追放者達』一行。


 とは言え、そうして多少移動した所で、未だにカンタレラ王国から脱した、と言う訳でも無い為に、前人未踏の未開の地が目の前に広がっていた、だなんてオチが待っているハズも無く、特にそれまでと変わる事も無い景色が広がり、彼らを待ち受けていた。



 予想と異なったからか、多少拍子抜けした様な素振りを見せるガリアン、セレン、タチアナ、ナタリアの四名であったが、その表情は次の瞬間には厳しいモノへと変化する事となる。


 何故なら、彼らの方へと目掛けて、一目散に大量の魔物が押し寄せて来る気配が感じ取れてしまったから、だ。



 どうしてそうなったのか?は最早説明は不要だろう。


 冬季が終わりを迎え、それに耐える為の冬眠から目覚めたか、もしくは自力で耐えきった魔物達は、須らくしてその腹を極限まで空かせた状態となっており、かなりの距離があったとしても、自分達の行動範囲の中に入って来た人間を獲物として認識し、決して逃す事は無い。



 確かに、この時期に商人も動き出す。


 が、それは自身と積み荷との安全を確保出来るだけの護衛を用意し、可能な限り安全が保証されている街道を通って、との条件が付けられており、彼らの様に、碌に人里も周囲には無く、道すらも疎らな場所に赴く事は基本的に自殺行為だとすらされているのだ。



 そんな場所に、わざわざ足を踏み入れたアレス達。


 元より棲み着き、その上で人間の血肉の味を覚えている魔物からすれば、極上で狩り易い獲物が自らやってきてくれた、とでも呼ぶべき状況だと言えるだろう。



 …………もし、仮にこの場に居たのが常人であったり、中堅程度の冒険者であった場合、彼らの未来は決して明るいモノでは無いだろう。


 多少の抵抗の後に魔物の腹に収まる事となるか、もしくは全く抵抗も出来ずに魔物の腹に収まる事となるか、の二択を迫られる事間違い無し、と言うヤツだ。



 しかし、魔物達にとって不幸である、と言える事があるとすれば、それはここに来たのが彼ら『追放者達』である、と言う一点であろう。


 そうでも無ければ、こうして彼らが得意とする範囲よりも更に先から一方的に殺戮を受けたり、近付いたとしてもご馳走にありつくよりも先に血反吐をぶち撒け、仲間諸共に素材として回収される事も無かっただろう、と考えると、やはり不運であった、と言えてしまう。



 仲間、という程に連帯意識も無いモノ達が、次々に討ち取られて行く。


 先程まで元気に咆哮を挙げていた隣の個体が、次の瞬間には額を半透明な矢を生やしていたり、短剣が突き立っていたり、飛来した手斧によって頭を割られていたり、何の前触れも無く首飛ばされたりしていたのだ。



 流石に、その光景には魔物と言えども肝を凍えさせるに充分なモノであったらしく、戸惑いと恐怖からか徐々にその足が鈍り、勢いが削がれて行く。


 中には、そうして倒された同胞に対して牙を剥き、自らの空腹を癒そうとする狡いモノも存在していたが、その手の類いの個体は謎の補足力により瞬時にアレス達によって認識され、最優先にて処理される事となっていた。



 そうして、戦い続ける事暫しの間。


 最早、表現を『戦闘』では無く『虐殺』に変えた方がより事実に近い形となるだろう、と思われる程の惨劇を作り上げたアレス達は、周囲に転がる骸を回収すると、文字通りに『血の海』と化している周囲に気を配る事も無く、予定の通りに移動を開始して行く。



 そうして開始された彼らの旅路は、困難を極めた凄まじいモノになる────事は無く、至極順調かつ迅速に進んで行く事となった。


 ほぼ辺境と呼んでも差し支えの無い分類に入る場所を目指しているとは言え、既に人外の域に達している者しか居ない上に、その手の行軍にも慣れ親しんでしまっていたが為に特に誰からも何の苦情も出る事は無く、至極スムーズに旅程が消化される事となっていたのだ。



 だが、それも考えてみれば当然の事。


 彼らをして『困難な旅路』となる程に過酷な旅程となるのならば、そもそも常人が居るだけで命を落とす様な場所に限定されるのは間違い無いであろうし、そんな旅路をかつての未だに力の無かったであろうアレスが、現在は袂を分かっている幼馴染二人と共に越えられるハズも無いのだから、長くともそこまで険しくは無い、としても当たり前の事だろう。



 そうして進む内に、更に季節は巡って行く。


 完全に気温は緩み、道とも呼べない道を雪が覆って通せん坊をする回数も減少を見せ、代わりに足下の泥濘みと山脈上部からの地崩れが顔を出す回数を増やして行く。



 同時に、魔物達も完全に冬眠から目覚め、本来の生態系として数を増やし、食って食われてを互いに行い始めて行く。


 それにより、アレス達が『唯一の食料』として遮二無二に襲われる事は減少したものの、それでも『与し易い獲物』として襲われる事は少なくは無く、彼らの食料の在庫、並びに財源が嵩増しを繰り返す事となって行った。



 斯くして、アレス達にとってはそれなりの、通常であれば半ば命懸けとなったであろう旅路は、僅か半月程で目的地へと到着する事となる。


 通常であれば、もっと危険なルートを通り、短縮に短縮を重ねたとしても尾根伝いに進んだのであれば、どれだけ早くとも一月は掛かる道筋を半分程で踏破して見せたのだから、やはり彼らは通常の物差しで測ってはならない、と言えてしまうだろう。



 そんな彼らの視界に写り込んで来たのは、疎らに広がる集落と、そこに寄り添う様に建てられた一軒の古びた教会。


 こんな危険な奥地に、しかも碌に外壁も無ければ柵も無い様な環境で、人が住んでいられるのか!?と五人が目を見開く中、アレスは一人橇から降りて前へと進み出る。



 そして、グルリと周囲を見回してから彼らの方へと振り返り、戯ける様に両手を広げながら仲間達へと告げて行く。





「…………ようこそ、最果てに。

 魔物に追われ、罪人として石投げられた者達の行き着く先、そして、それでもクソッタレなカミサマに祈り続けた凶人の作ったのが、ここタウロポロスだ。

 言った通り、何にも無い場所だろう?」





 そう言ってのけたアレスの瞳には、なんの感情も宿ってはおらず、悪い意味にて人形のもつ硝子玉の瞳の様だ、とすら抱かれるのであった……。




最後まで書き溜められたので今日から連続投稿開始します


…………え?そんな事をされても誰も喜ばない?

そんなー(・ω・)

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