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追放者達の集い~取り敢えず目標は果たしたので魔王討伐は勇者に任せて魔物討伐に勤しみます~  作者: 久遠
第六章・龍人族編

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209/220

『追放者達』、出立する

 



「…………流石に、この状態から復活してくる、とかの冗談みたいな悪夢は無い、よな?」



「いや、流石にここまでやっても回復されちゃうとかだと、ソレ最早アンデッドの類いになるだろうから、オジサン的にも復活は無い……と思いたいんだけどねぇ〜」




 そうして言葉を交わす二人の視線の先には、骸、としか形容出来ない物体が一つ。


 元、と付けるのが相応しいであろうレオルクスであったソレは、無数の傷に塗れた状態でありながらも、未だにその背に二振りの刃が突き立てられている状態となっていた。



 勿論、言わずもがなではあるだろうが、アレスの長剣とヒギンズが振るっていた『聖槍ミストルティン』である。


 ほんの少し前、形勢を逆転させる事が不可能である、と判断したからか、それとも多勢に無勢での圧力に負けて恐怖を抱いたが為なのかは不明だが、唐突に背を向けて一心不乱な逃走を図ったが故に全員からの追撃を一身に受け、こうして屍を大地に曝す結果となっていた。



 とは言え、その際の抵抗もまた凄まじいまでの暴れ振り。


 真っ先に飛び出して刃を埋め込んだ二人に続く形で斧を振り下ろしたガリアンは、未だに強化の残されていた足による蹴りを予想外の角度にて受ける事となってしまい、肋骨を含んだ複数個所を骨折する重傷を受けて現在治療中。



 また、隙を縫う形で短剣を額に突き立てたタチアナも、半ば付随反射的に振るわれた爪に引っ掛かる形で負傷しており、ヒギンズと同じく治療中。


 更に、ナタリア本人は近付かず、またセレンは絶対に反撃されないタイミングを狙っての攻撃であった為に二人は負傷せずに済んだが、従魔達、特に怪力が持ち味であるヴォイテクは最後の悪足掻きを直接的に受ける羽目になってしまい、幾ら自然回復力が強い魔物である彼らであっても『ちょっと君安静にしてようか?』となる程にダメージを負う羽目になってしまっていた。



 状況的にみれば、最初(?)のアレスとヒギンズによる追撃が致命傷であったのは、まず間違いが無い。


 が、ソレを受けて尚それだけの被害が出るまで暴れ続け、最終的には予備であったり以前使っていた得物であったりを抜き放ち、無理矢理に首を落とす事でどうにか静かになったものの、直前までの暴れぶりを目の当たりにしてしまっていては、執念かそれともそれまでも見せていなかった何らかの能力によるモノかも予想すら付かないが、未だに動き出しそうな予感すらもしていたが為に、先のやり取りが発生した、という訳であったのだ。



 返り血に塗れた予備の得物にて、地面に転がる骸とその首を突くアレス。


 断面からは双方共に未だ流血が続いており、落とされた首の方も、瞳孔が散乱し中途半端に開かれた口からはダラリと舌が放り出されている状態となっているが、その表情は無念と刻まれているかの様なモノであり、壮絶なまでの最後を連想させると同時に、何処か怨念じみたモノすらも感じさせる形相となっていた。



 が、それに頓着する事も無く、寧ろ『だからどうした?』と言わんばかりの素振りにて弄っていたアレスが、今度はヒギンズだけにではなくメンバー全体へと向けて口を開いて行く。




「………で、コレどうするよ?

 取り敢えず、満場一致でぶっ殺した訳だけど、正直『その後』の事なんて欠片も考えて無かったんでね。

 バカ正直に『ギルドに提出する』以外の選択肢を挙げて貰えると助かるんだがね?」



「…………ふむ。

 確かに、そのまま提出するなり、情報を吐露するなりしてしまえば、リーダーを含めた全員が忌避する『英雄』へと祀り上げられる事間違い無し、であろうな」



「ですが、私達だけで黙殺する、というのも如何なモノでしょうか?

 少なくとも、死蔵する、以外の選択肢が無くなる事になるのは間違い無さそうなのですが?」



「あ〜、確かに、何処にも報告しないでアタシらで持ち続ける、ってなると、いざ何かしらの形で使おうか!ってなった時に、出所を問われると面倒な事になる、って訳ね。

 でも、そうでもしないと、それはそれで面倒な事になるんじゃないの?」



「あちらを立てればこちらが立たず、では無いのですが、流石にちょっと躊躇うのですよ……。

 何せ、今回は魔族、しかも六魔将なのですよ?

 その辺でSランクの魔物と遭遇して倒しました、コレはその素材です、と言うのとは、どの方面から見ても世情的にも大違いなのです」



「まぁ、だよねぇ〜。

 かと言って、黙りを決め込もうにも、コレの立場が面倒極まりないんだよねぇ。

 仮に、魔族に対して人類が優勢になった際に、順調に六魔将が撃破されました、って流れになれた場合、ここでオジサン達が情報を握り潰すと『最後の一体は何処に行った!?』って事になりかねないからねぇ。

 そうなってから『いや実は〜』とか名乗り出ても信用はされないだろうし、形勢が逆になった場合はもっと悲惨な事になるだろうしねぇ〜」



「魔族側が優勢になった際に、不在を隠されるならまだしも、既に倒されていて後釜が据えられていて、ソイツの継承条件が『先代を倒した者を倒す』とかに設定されたら、大々的な捜索を打たれる事になる、ってか?

 そうでなくても、コレが人望に厚いタイプだったりすると、その部下だとか信奉者だとかが言わずもがなで探りに来る可能性が高いから、どの道、じゃないか?

 まぁ、その手のタイプには見えなかったから、そっちの心配はしなくても大丈夫だろうけど、多分」



「では、どうするのであるか?

 黙っても、公言しても、どちらでも当方等に来たる未来に、さしたる違いは無いようにも思えるのであるが……?」



「「「「「…………うーん……」」」」」




 会議は踊れど、されど進まず。


 どちらの道を選んだとしても、待ち受ける未来予想図に大した違いは無い、と思えてしまう現状に頭を抱えるアレス達であったが、そうであったとしてもレオルクスを殺す事は確定事項であったのは間違い無いし、誰もその死体を有効活用しない、何処かにヒッソリと捨ててしまう、だなんて意見は出していなかった。



 それは、それだけヤツの能力が汎用的であり、かつ有用的なモノであったから、だ。


 基本的に魔物の素材を使って武具なり装飾品なりを作り上げる訳なのだが、その際に使用した素材の持ち主が強力であり、かつ作り上げた職人の腕が良いと、出来上がった品に元の魔物の能力が引き継がれる事がある。



 勿論、確実に、と言う訳では無く確率であるし、持ち主と掛け離れた様な能力、例えば火を吐く竜の素材から、氷を纏う力を持った剣を作る、だなんて事は不可能である。


 が、それと同じ系統の能力であれば幾らか劣化したモノであれば再現が可能であり、加工を担当する職人の腕が良ければ劣化の具合も少なくなり、中には条件付きとは言え元の持ち主すらも凌駕するだけの力を授ける様なモノまで、難易度と確率を考えなければ作成する事自体は可能となっているのだ。



 その為、レオルクスの素材をそのまま死蔵する、と言うのは冒険者であるアレス達にとっては大変勿体無く思えてしまい、出来ればその選択肢は取りたくない、と思わせる程である。


 何せ、能力が汎用的である為に誰が使っても腐る事は無く、更に言えばレオルクス自体がかなり大柄であった為に、それなりに量を作り上げる事も可能だろう、と思われた為に、やはり『勿体無い』との思いが先行する形となってしまっていたのだ。



 故に、彼らの話し合いは拮抗し、物音を聞き付けて駆け付けた家主であるマレンコと顔を合わせても尚続けられる事となった。


 そして、一旦の結論に達した彼らは、取り敢えずまたこの場に留まり続けると、追加戦力として魔族が送られて来るかも知れないから、として、僅かな時間を置いた後、里を後にする事となったのであった…………。













 ──────そして、それから然程時間が経つ事も無いままに、世界にとある噂が流れる事となる。



 曰く、何処かの誰かが、六魔将を名乗る魔族を討ち取った、と言うモノであったのだとか……。




取り敢えず、次回に閑話を挟んで次章へと移行します

また次章にて終章となる予定であり、また終章自体はそこまで長くはならない予定となっておりますので、出来れば最後までお付き合い頂けれは幸いですm(_ _)m

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