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追放者達の集い~取り敢えず目標は果たしたので魔王討伐は勇者に任せて魔物討伐に勤しみます~  作者: 久遠
第六章・龍人族編

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『追放者達』、応戦する・8

 


 斯くして、事態は進み、レオルクスが地面へと手を突きながら、忌々し気にアレス達の事を睨み付けて行く。


 先の攻防にて傷付けられた脚も、既に出血は治まりつつあったものの、それでも少し前の様に白煙を挙げながら急速に肉が盛り上がって来る、という様な異様な光景を展開する事態にはなっておらず、彼らの優位を証明している様でもあった。



 勿論、そこに至るまでの道程は困難を極めていた。


 何せ、アレスがレオルクスの胴体に刃を突き立て、コレで仕舞いだ!と抉りながら魔法を流し込もうとした際に、その寸前まで骨と肉との塊であった二本の腕を無理矢理に急速修復して自らの身体が壊れるのを厭わずに振り回し、無理矢理に退避させる事で防がれてしまったのだから。



 その後も、ヒギンズとの連携により、再度二本の腕を斬り落とす事に成功していたアレス達であったが、その際に幾つか判明した事もあった。


 先ずレオルクスの強化の能力だが、コレはあくまでもヒギンズが『聖槍』によって攻撃した段階で付与されていた分が解除される、というだけであり、その後にアレスが同じ場所を中途半端に攻撃してしまえば、また強化し直されてしまう事が判明していた。



 また、強化される範囲に付いて。


 これは、身体能力だけでなく魔力まで強化されていた事に注目して見た結果分かった事なのだが、強化を解除しても魔力の総量自体は減少せず、先の腕の様に急速修復した場合は大きく削られる事となる。



 また、身体能力の強化の幅も、ある程度段階的に上限があるらしく、少し前までの最上限に達した際の状態を『100』とすると、どれだけダメージを受けてもいきなりそこに達する事は無く、あくまでも『10』や『20』程度で止まって何段階かに分けて上昇して行く事になる、と判明もした。


 なので、少し前の攻防の様に、それなりに大きくアレスが傷を付けた場合、即座にヒギンズが『聖槍』を用いて追撃し、発生するであろう強化自体を無効化する、という取り組みが自然と成立する形となっていたのだ。



 そうして二人が戦っている間、アレス達以外の仲間が何もしていなかった、だなんて事は勿論無い。


 レオルクスの腕を落とした際に足を負傷しており、その治療を優先しなければならなかったセレンであったが、アレスとヒギンズの二人がレオルクスを抑えてくれていた事により、どうにか魔力の消費を抑えながら回復する事に成功していた。



 また、それにより、他のメンバー達もアレスの次に、となってしまっていたが、セレンによって治癒され、戦線へと復帰する事が出来ていた。


 当然、ガリアンは最前線へと赴いてアレスとヒギンズに代わって攻撃を一身に受け止め、時折盾による痛烈な打撃を繰り出して怯ませたりしてダメージを着実に稼いで行く事に。



 残るタチアナとナタリアも、最低限命を繋ぐ、程度に留めていたのを完治レベルにまで引き上げ、戦線へと復帰すると同時にそれぞれの仕事を再開。


 自らを強化する、というレオルクスの特性上、あまりタチアナの相性は良くなかったし、遥か格上であり、かつ『獣系統の魔物の祖先』とでも呼ぶべきであろうレオルクスに対しては従魔達も尻込みしてしまう事が多々あった為にナタリアもあまり相性が良いとは呼べなかったが、それでも要所要所で唐突に妨害術を仕掛けたり、従魔達によって予想外の攻撃でバランスを崩させたり、と戦闘への貢献は確りと果たしていた。



 そうした連携も手伝って、レオルクスは徐々に追い詰められて行く事となる。


 元々、ヒギンズの本格参戦により優位を崩される事となっただけでなく、ソレに続く形でアレス達の連携によって徐々に削られ、強化されるよりも早く体力と魔力を削られる形となってしまっていたからだ。



 先の攻防により、脚の機動力も、片方とは言え奪われる結果となった。


 他の部分の強化も、能力によって増加した魔力を注ぎ込む事で補っている状態となっているが、やはりそのどれもが一度はヒギンズによって解除された箇所となっており、根本から強化された状態と比べると、到底比肩出来る状態とは言えないモノとなっていた。



 事がその段に至ってしまえば、流石に脳筋なレオルクスも焦りを見せ始めていた。


 元来唯我独尊的な性格が強く、アレス達は認識していないが六魔将筆頭であるアルカルダ相手にも引かずに噛み付く事も暫しある程に攻撃的であり、世で最強は魔王陛下を除けば己である!と公言して憚らない程度に自尊心が高い。



 故に、彼は慢心すらしていたのだ。


 幾ら、自身以外の六魔将と相対し、その尽くで取り逃すか、もしくは撃退の憂き目に遭っていはするものの、俺様がその場面にいれば間違い無く叩き潰していたハズだし、何より人間なんて下等生物連中に俺様が負けるハズが無いだろう!と。



 彼の中では、強い者こそが正義であり、弱い者は強い者に従ってこそ生きる価値が産まれる、という摂理がある。


 故に、レオルクスとしては、挑んで来る来ないは関係無く『六魔将を退け続けた人間』を討ち取った、との手柄には、高々人間共を潰す程度の労力で絶対の価値がある名声が手に入る為にアレス達を殺すし、それは逸れとして女性陣は自らの戦利品として『群れ(ハーレム)』に加えてやる、との考えを持っていても、価値観としては当然の事、となる訳なのだ。



 そんな価値観を持つ彼であるが故に、ここで『退く』と言う選択肢を取る事が出来ない。


 何故なら、常に強者で在り続け、常に奪う立場に在り続けたレオルクスが、弱者の行いであり、それまでの全てを投出すのと同義である『逃げる』と言う行動を取ってしまっては、自らを弱者である、と認める事になってしまうからだ。



 魔王に負けるのは、良い。


 この世で最も優れた存在である魔族を統べる王にして、自らの上に立つ存在であれば、いつかは打倒してその座を奪う事は確定事項であり、まだその時では無い今敗れたとしても、それは仕方の無い事なのだから。



 また、同じ六魔将に負けるのも、良くは無いが、良い。


 業腹ながらも上位に位置する魔王より、自らと同格である、と定められた者達であり、自らとの能力の相性の良し悪しによって結果がコロコロと入れ替わる事になる為に、負けたとしても次に勝てば良いだけの話しであり、現在は同格なのだから仮に敗れたとしても大した事では無い、と言えば無い。



 …………だが、人間に負ける、だなんて事態だけは、絶対に起きて良い事では無いし、許される事でも無い。


 レオルクスにとって人間とは、好きに殺し、奪い、犯し、喰らう、そういった己の欲望をぶつけるオモチャにして食料であり、戦うにしてもそれは嬲る為の行動であり、相手に一片の勝ち目すらも残してやるべき事では無い。



 そんな考えと価値観を持っている為に、己がどれだけ窮地へと追い込まれようと、彼は逃げる事が出来ずにいるのだ。


 己を己として擁立している最大の柱、それがレオルクス自身に苦しみを与え、選択肢を狭め、己の命を捨て去る状況へと追い込んで行くのを自覚しながらも、捨てる事が出来ずにしがみつき、背後から迫りつつある死神の足音を幻聴として聞きながらも、それでも尚自らを蝕む戦場を放り出し、何もかもを捨て去って、一目散に命のみを後生大事に抱えたままで、背中を向けて走り出す、という簡単な事が出来ずにいた。



 …………だが、それもこれまでの話。


 自慢であった四本の腕の内の三本目までもが斬り落とされ、ご丁寧に傷口を槍で抉られた為に修復する事も出来ず、更に言えば片足だけでなく片目までもが貫かれ、最早視界すらも覚束ない状態へと至って漸く。



 レオルクスの思考に『逃亡』の二文字が現れたのとほぼ同時。


 痛みを放つ足を無視してその場で唐突に踵を返し、正面に立っていたアレス達へと背を向けて恥も外聞も全て投げ捨てて逃走を図っていたのだ。



 魔王相手にすら、真正面から睨み付けながら敗北して配下となったレオルクス。


 それまで生きてきた中で初めて行う『逃走』は酷く不格好なモノであり、滑稽ですらあったが、それ故にアレス達の虚を突く形となり、危うくそのまま見送る寸前にまで行ってしまっていた。



 が、唯一その挙動に呆気に取られる事無く行動したヒギンズと、メンバーの内で最速にて立ち直ったアレスが放った刃が向けられていた背中へと突き立てられ、それによって出来た『逃げ傷』が原因となり、何処とも知れない龍人族の里の中にて、六魔将の最初の犠牲者としてその身を朽ち果てさせる事となってしまったのであった……。




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