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追放者達の集い~取り敢えず目標は果たしたので魔王討伐は勇者に任せて魔物討伐に勤しみます~  作者: 久遠
第六章・龍人族編

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『追放者達』、応戦する・7

 


 ────ペチン。



 そんな、気の抜けた音が、戦場であったその場に響き渡る。


 大袈裟な迄に振りかぶった腕の動作からは信じられない程に軽く、まるで子供がふざけてビンタした、かの様な音と衝撃のみが、ヒギンズの顔へと降り掛かって来た。



 そんな謎の状態に、揃って驚愕を顕にして目を見開く事となったが、その中でも最も驚いていたのはやはりレオルクス当人であろうか。


 何せ、人一人の頭を吹き飛ばすつもりで繰り出した一撃が、直撃したにも関わらず子供の戯れと同程度の結果しか出す事が出来なかったのだから、その衝撃は図り知れるモノでは無いのだろう。



 唐突に発生した事象ながら、流石に原因不明で突発的に起きた事です、というのは道理が通らない。


 寧ろ、能力を一番把握していたであろうレオルクス当人が一番驚いている以上、自分で能力を解除した、という訳でも無いのだろうから、ヒギンズが突き刺し、そして彼の頭を吹き飛ばそうとしていた右上側の上腕に未だに刺さっている『聖槍』こそが原因か、と判断したアレスは、未だに驚愕抜けきらないままながらも、咄嗟に刃を振るって追撃を入れようと試みて行く。



 が、そこは流石の獣、とでも呼ぶべきか、驚愕の最中に居ながらも反射で残されていた左下側の腕を回し、長く伸びた爪にてアレスの攻撃を防がれてしまう。


 これには、てっきり強化自体が解除されているのでは?と思っていたアレスとしては困惑する事となったが、防いだレオルクスとしても似たような事を考えていたらしく、戸惑いが顔に浮かんでおり、今ならば追撃も無いだろう、と判断してヒギンズ共々一回退く事にした。



 そして、当然の如く視線にてヒギンズに説明を求めるアレス。


 何故この様な変な事態になっているのか?何故そんな事が出来ているのか?何故ここに至るまでソレをしないでいたのか?それらの疑問が込められた視線が彼の顔へと突き刺さるが、ソレに対してヒギンズも、いつもと変わらない草臥れた苦笑いを浮かべながら口を開いて行く。




「いやぁ、ねぇ?

 オジサンも、確信は無かったんだよぉ?一応は。

 でも、この『ミストルティン』の効果を考えてみると、やっぱり腑に落ちない所があってさぁ。

 …………だって、魔族に対する特効効果、だよ?

 火が出る、だとか、冷気を纏う、だとかなら、特定の能力や習性を持つ連中相手には特効になりうるかも知れないけど、それでも『魔族全般』に対しての特効って何よ?って考えたら、ねぇ?」



「………………つまり、どんな効果が発揮されるか分からなかったから、使わなかった、と?」



「平たく言えばそういう事ぉ。

 だって、ぶっつけ本番程怖い事も無いでしょぅ?

 それに、早々に試して、さっさと逃げに入られても嫌だったからねぇ。

 まぁ、結果としては確りと確認出来たんだし、今の攻防でオジサンに対してだけ非力になってた、って事も鑑みると、コイツの効果自体は『能力の解除』ってところかなぁ?

 尤も、多分『攻撃した場所のみ』って注釈が付く事になるだろうけど、ねぇ~」



「微妙に、残念な性能してるみたいだな?

 どうせなら、問答無用で強制解除、とかしてくれれば良いモノを」



「そこは、ほら。

 そこまで行っちゃうと、もう人の手に負える様な代物じゃ無くなっちゃう、とかじゃないかなぁ?

 それに、そっちの効果をメインとして考えるんじゃなくて、運悪く遭遇した非常時用のモノ、とかオマケ程度に考えてみたら、まぁまぁ納得出来る程度に落ち着くんじゃないかなぁ?」




 微笑みすら浮かべながらそう口にするヒギンズに、アレスは呆れた様な感情を隠そうともせず顔に浮かべる。


 が、そんな二人よりもこの事態に納得が出来ず、更に言えば荒々しい感情の発露を行う必要に駆られている者がおり、そいつが爆発するのは至極当然の事である、と言えただろう。




「…………テメェら、一体どんな巫山戯た手を使ってくれやがった?あぁ!?

 俺様の能力が、一部とは言え解除されてるなんざ、有り得ねぇ、有り得て良いハズがねぇだろうがよ!!

 しかも、黙って聞いてりゃ『聖槍』だと?巫山戯た事抜かすのも大概にしやがれ!!

 あのクソ忌々しいブツは、そんなに見窄らしい見た目なんざしちゃいなかったし、何より俺様達が直々に破壊してやったんだから、今に残っていやがるハズがねぇだろうがよ!?」



「とは言っても、ここに在るのが現実、ってヤツだからねぇ。

 コレ自体は、この里を作ったご先祖様が持ち帰って来た、って事だから、本物で間違いないハズなんだけどなぁ?

 それに、君がここを襲撃したのだって、コレが未確認ながらも発見されたからその確認の為に、ってヤツじゃなかったのかぃ?

 てっきり、そうだとばかり思っていたから、オジサンも序盤はわざと使わずにいたんだけど、だったらさっさと使っておけば良かったかなぁ〜」



「大方、アレじゃないのか?

 本物だと思って破壊したら、実は偽物掴まされて間抜け晒してた、ってオチ。

 んで、考えたくも無いが、目的は本当に俺達でソレがここに在ったのは凄まじいまでの不運による偶然、ってヤツ。

 正直、同情したくなる位にツイてないみたいだが、まぁ見られた以上はやっぱり殺しておくか」




 そうして言葉を切るアレス。


 既に、会話の途中にてセレンからの回復魔法が齎されており、細やかなモノは当然として、喪われていた左腕までも回復した状態となっており、戦闘力は全盛のモノとなっていた。



 故に、という訳でも無いが、彼が出せる最速にてレオルクスの懐へと飛び込んで行く。


 それまでは、相手の身体能力や反射速度等を測る事も行動に含まれていただけでなく、どれだけ戦闘が長引くのかも不明であった為にある程度の所で抑えていたのだが、それらの心配をしなくても良くなった為に、こうして後先を考えずに全力で動く事が可能となっていたのだ。



 当然、狙いを付けるのは、先程強化が解除された上側の右腕。


 魔法も放ちつつ接近して刃を振るってくるアレスの考えは当然レオルクスも理解しているらしく、強化が解除された腕では防御すれば切断される事になりかねない、と判断してか、それとも一度解除された箇所は強化出来なくなるからかは不明だが、以前の様に受けて強化のタネにする事をせずに回避するか、もしくは頑強になっている左下側の腕にて防御する形で受けて行く事となった。



 が、それは意識を真正面のアレスに集中させる、という事。


 生半可な意識の割き方では強化が解除されて柔くなっている腕を切り落とされかねないし、幾ら強化されている、とは言え相対的にそこまで強くは無い目や口腔と言った部分すらも普通に狙って攻撃してくるアレスを前にして油断出来るハズも無い為に仕方の無い事ではあるのだが、そうして意識を他に傾けてしまえば事態を好転させられる手段を持っている者がソレを利用しないなんて有り得ない訳で。





 ──────ゾブリ……。





 敢えて文字に起こすとすれば、そんな風になるであろう、湿った音。


 それがレオルクスの腰の辺りから発せられると同時に、それまでは大樹の如き安定性を見せていた体幹が喪われ、アレスの攻撃を防ぐ際の衝撃を殺し切る事が出来ずに体勢を崩す様になっただけでなく、自ら攻撃する為に腕を振るうだけでも身体をふらつかせる様にすらなっていた。



 それだけの隙を晒し、更に言えば致命的なまでの能力低下を悟られてしまったレオルクス。


 元より殺し切る予定であった為に、遠慮も加減もする事は無く、一切の呵責も無いままに振るわれた腕を屈んで回避したアレスは、その刃先を無防備に晒されていた胴体へと向けて滑り込ませて行くのであった……。

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