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追放者達の集い~取り敢えず目標は果たしたので魔王討伐は勇者に任せて魔物討伐に勤しみます~  作者: 久遠
第六章・龍人族編

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『追放者達』、応戦する・6

 


 何故その様な事態となっているのか?

 何故ソレに気が付く事が出来たのか?


 その理由は、アレス達が負傷の末に能力の概要を掴み、レオルクスの腕を追加で切り落とした時まで遡る事となる。




「…………硬ってぇな、チクショウめが!?

 だが、これでハッキリしたな!

 お前の強化、大方限界値でも在るんだろう!?

 そんで、その限界を漸く迎えやがった、って訳だ!!」



「だとしたらな、何だ?あぁ!?

 例え、俺様の強化が最大になってたとしても、その最大限強化された力でこれまでみたいに叩き伏せられ、叩き潰されるだけに過ぎねぇザコがほざいてるんじゃねぇよ!!!」




 手首の中ほどで切断された腕が宙を舞い、辺りに血飛沫が撒き散らされる。


 幾重にも強化が重ねられたが為か、既に金属質な硬度を帯びていた骨に刃筋を狂わせられる事数度の後に、漸く刃を通す事が出来たアレスが、激情のままに声を挙げる。



 対するレオルクスも、流れ出る血を気にも止めずに吠え返す。


 身体欠損に付き物の喪失感も、ソレに伴う痛みも気にする素振りを見せていない所をみると、強化される範囲は痛みや感覚に対する許容量も増加させているのか、それともそれまでの経験から無視する手段を獲得しているのかはアレスには判断が付かなかったが、やはり先のアレは演技のたぐいであった事が確定していた。



 とは言え、現状アレス達にとってはとてもでは無いがプラスに考えられる要素は見当たらない。


 精々、これ以上強化されるのでは無いか?と心配しながら刃を繰り出す、なんて事をしなくても良くなった、という一点のみが良い方向のモノであり、他の仲間の消耗具合だとかの面で見ると、最早『不利』だなんて生温い単語では表せない程に最悪に近い状況となっていた。



 そんな最中、どうしたものか、と刃を右手のみで構えながら考えていたアレスの背中へと、声が掛けられる。


 意識の幾分かと一瞬のみ視線をそちらへと向ければ、そこには奇跡的に負傷らしい負傷を受けずに済んでいたヒギンズが、何かしらに思い至った、とでも言わんばかりの表情で口を開いていた。




「…………ねぇ、リーダー?

 オジサン、ちょ〜っと試してみたい事があるんだけど、協力して貰っても良いかなぁ?」



「………その試したい事の内容次第かなぁ。

 ぶっちゃけ、そんな企みがあったから、これまで攻め手としても消極的だったんだろう事を責めるつもりは無いけど、だからってあんまり無茶な事要求しては欲しくない、かな?

 何せ、俺、今、片腕無いから」



「あはは〜。

 そこを突かれちゃうと、オジサンちょ〜っと厳しいかなぁ」




 アレスからの口撃に、苦笑いを浮かべながらヒギンズは己の頬を掻く。


 厳密にタイミングを指示して連携を取ろうとしていた、と言う訳では無く、その上でヒギンズ本人が積極的に前に出ようとしていなかった、と言う訳でも無かった為に、誰からも指摘や糾弾を受ける様な事にはなっていなかったが、確かに彼は普段であれば踏み込んでいたであろうタイミングでも踏み込まず、攻撃出来たであろうタイミングでも攻撃しなかった盤面が幾つか見られてはいた。



 それは、思い返してみれば、レオルクスの能力が判明するよりも前からの事であり、判明してからは更にその頻度は上がっていた様にも思えた。


 尤も、ガリアンが右腕を奪われて防御に専念させられる羽目になり、ナタリアとタチアナの二人も落ちる頃には得物を以前の槍へと戻して戦線へと本格参戦していた事も鑑みるに、やる気を無くして傍観していた、という事では無かったのだろう、とはアレスも思ってはいたのだ。



 そんなヒギンズが、自ら試したい事がある、と申し出て来た。


 しかも、それまでは碌に使う事もせず、何なら仕舞い込みすらしていた『聖槍』を持ち出して、だ。



 更に言えば、隻腕となっているアレスに協力まで申し出ている、というのが大きいだろう。


 先んじて、回復役として最後まで残っていて貰わないとならないセレン自身を優先しているが為に、簡易的に止血する程度で留めている状態であり、決して万全とは程遠いアレスに対して、である。



 これが、ガリアンに対して、であればまだ理解も出来る。


 彼であれば、普段は攻撃の為に使っていた右腕を喪っている状態であるが、本質としては盾を構える左腕こそが重要であり、役割を果たす、という一点に於いては事防御に関するのであれば、やはりガリアンこそが最適である、と言えるのだから。



 そうなると、ヒギンズが求めているのは防御に徹する壁役では無く、寧ろその逆。


 彼と共に相手を攻めたてる攻撃役であり、確かな攻撃力を持つ者こそが相応しいのだろう、とは理解出来たが、それはヒギンズ本人ではダメなのだろうか?とアレスは内心で首を傾げる。



 が、絶対に負けられない現状、考えがある、と言うのならば、従わない道理も無い。


 何せ、仮に自分達が敗れる様な事になれば、その最愛の存在が目の前の獣に陵辱され、穢され、弄ばれる事になるのだから、やはり絶対に勝たないとならない、負ける事は赦されない、と先んじてアレスが前へと出る。



 特に作戦を聞いていた訳では無い。


 が、どうせこういう事がして欲しかったのだろう?とばかりに、自らレオルクスの懐へと飛び込み、刃を振るってアレスが猛攻を仕掛けて行く。



 ソレに対するレオルクスは、最早防御なんて不要、とばかりにわざとアレスの攻撃を受けながら反撃して行く。


 既に最大限まで強化されている(と思われる)状態であっても、強化された魔力と回復能力に任せる事で新たに付けられた傷もほぼ時間を置かずに治ってしまう状況となっており、先に切断した二本の腕も、傷口に肉が盛り上がっている状態を通り越して、早くも手指の原型が作られ始めている状態となっている程である。



 故に、防御する一手間を入れるよりも、喰らってでも当てる、の方に舵を切った、という事だろう。


 余程の攻撃でもないと既に有効打になり得ない現状、一撃でも当てればそれでほぼおしまいに持っていけるレオルクスが、半ば無理矢理に相打ちに近い形であったとしても、相手に攻撃を当てる事を優先すれば、それまで有ったであろう戦闘経験と照らし合わせれば必然としてその形に落ち着く事となった、と言える。



 とは言え、苛立ちはレオルクスの方にこそ溜まっている。


 何せ、ほぼ一撃当てればそれで良い、当てられればそれで良い、と言う状況を未だに終える事が出来ず、ひたすらに動き回られる事となっているのだ。



 細かく攻撃しては繰り出された攻撃を回避して、更に攻撃を加えて来る。


 高まった防御を辛うじて貫いてはいるが、同じく高まった回復能力によってほぼ時を置かずに治ってしまう程度のモノばかりであり、一層のこと致命傷でも狙って深く踏み込んで来れば良いモノを!!とレオルクスの苛立ちが頂点に近付き、視界は極度に狭まってアレスしか見えてない状態となっていた。




 その為か。


 いつの間にか間合いに踏み込んでいたヒギンズの穂先が自らの身体に喰い込んで来るまで、レオルクスが接近されていた事に気付く事が出来なかったのは。




 正直、彼の内心は驚愕で満たされていた。


 俺様が気付く事も無く、いつの間にそこまで近付かれたのだ!?といった驚きが主なモノであり、攻撃を受けてしまった、という点に関しては全く気にしていなかったのだが、同時に手の届く範囲に新たな標的が現れた、という事でもあった為に彼は、嬉々としてユックリと腕を振り上げると、その爪にて相手を引き裂く為に、渾身の力で振り下ろして行く!







 ──────ペチン。







 …………その結果、齎されたのは、余りにも軽く何かを手で張った様な、そんな音のみであったのだった……。




予想外に長くなったので詳しいタネ明かしは次回となります

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