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追放者達の集い~取り敢えず目標は果たしたので魔王討伐は勇者に任せて魔物討伐に勤しみます~  作者: 久遠
第六章・龍人族編

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『追放者達』、応戦する・3

 



「「「決めた、コイツは絶対にここで殺す」」」




 アレス、ガリアン、ヒギンズの男性陣三人の声が、意図せずに重なる。


 表情からは色が抜け、感情も削ぎ落とされて残されたのは、剥き出しになった純然たる殺意であった。



 それもそのハズ。


 何せ、彼らの目の前にいるゴミ(レオルクス)は、彼らのパートナーを彼らの目の前で、攫い、穢し、犯してやる、と宣言してみせたのだ。



 なれば、彼らが怒りを通り越した境地へと辿り着くのも当然の事、と言えるだろう。


 普段温厚な彼らであったとしても、自身のパートナーを値踏みされ、更には真っ直ぐに愛を囁かれるのであればまだしも、その他多数と同じ雑な扱いでモノの様に『使ってやる』とまで宣ってみせた目の前の害獣を排除するのに、彼らにはソレ以上の理由は必要が無かった、という訳なのだ。



 そんな宣言と殺意を剥き出しにしていたからか、彼らが前へと踏み出した時には声の一つもそこには無かった。


 普段であれば、大なり小なりの掛け声や、身振りや手振り等によって合図が為されるのだが、既に意思の統率が成され、殺意が極まっている状態となっているアレス達にとっては最早それらは不要なモノと化しており、半ば阿吽の呼吸にも等しい連携を繰り出す事となっていた。



 流石に、無言のままで突っ込んで来る、とは予想すらしていなかったのか、レオルクスが慌てた様な様子を見せる。


 が、そのままでは一方的に殺られる羽目になる、と本能的に悟ったのか、四本の腕を大きく広げ、それぞれでアレス達へと対処しようと試みて来る。



 とは言え、当然の様に、アレス達は陣形を組んで突撃を仕掛けている。


 流石に、相手が一体だから、とバラバラに挑む様な事はしないし、何より実力は足りていない様にも見えているが、一応は六魔将を名乗っているのだから、感情的にも今後の敵戦力的にも、確実に殺しに行くのは当然の事であるのだから、一丸となって掛かって行った。



 普段の通りに、まず先頭に立ったガリアンが盾を構えてレオルクスへと目掛けて突撃を敢行する。


 全身鎧に身を包み、その上で各種スキルを発動させながら盾を構えて突っ込んで行くガリアンの総重量とぶつかった際の衝撃力は生半なモノでは無く、スルトですらまともに受ければ蹌踉めかざるを得ない程のモノであった。



 ソレを、レオルクスは真正面から喰らってみせた。


 …………そう、耐えるでも無く、回避するでも無く、何かしらの手段を用いて無効化するでも無く、ただただそのまま真正面から攻撃を受け、骨が砕ける音と共に、今回は鼻血以外にも多方から出血を振りまきながら、背後へと吹き飛んで行く。



 あまりにも呆気なく吹き飛ぶその姿に、思わず追撃の手が止まるアレス達。


 本来であれば、そうして吹き飛んだ先にでも回り込んで相手が体勢を立て直すよりも先に追撃を入れるか、もしくは致命の一撃を以てして片を付けてしまうのが常道なのだが、あれだけの大言を吐いた上でここまでアッサリと醜態を晒してくれる、とは欠片も思っていなかった故に、思わず手も足も止まる事となってしまったのだ。




 …………あれだけの大口を叩いていたのに、この程度で終わるのか?


 地位相応の実力も、なにも見ていないのに、この程度で?




 困惑によって止まった足は、よろけながらも立ち上がって来たレオルクスの姿を目の当たりにした事で、否応なしに再び動き出す事となる。


 …………いや、厳密に言えば、レオルクスの姿そのモノを目の当たりにして、というよりも、寧ろレオルクスから放たれている魔力や圧力、と言ったモノが、先程よりも強まっていた為に、と言うのが正しいだろう。



 魔族特有の回復力により、先の激突によって砕けた骨も既にある程度は繋がったらしく、よろよろとしながらも立ち上がって来る。


 そして、同時に発生していた裂傷の数々も、大きなモノは流石に残されたままとなっていたが、細かいモノは既に煙を上げながら塞がっており、中にはもう跡形も無く回復している箇所すらも存在している程であった。



 それらの現象を確認したアレスの背筋に、悍ましい程の悪寒が発生し、とある仮説が脳裏へと浮かび上がる。


 馬鹿な、そんな事有りえるのか?と言った疑問が彼の口から飛び出るよりも先に、その仮説が正しい予測であり、現状はほぼ最悪にも等しい状態てある、と言う事を告げる変化が彼らの目の前で発生していた事に気が付く事となる。




 …………そう、それこそ、立ち上がって来たレオルクスが、明らかに先程よりも強力な『圧』を周囲へと放っている状態となっていたから、だ。


 少なくとも、魔王が復活して力を取り戻した、とか言うスルトやゴライアスと同程度、少なくとも冒険者のランクで言えば『Aランク』は無いと立ったまま相対する事は不可能であろう、と予測出来る程度には強大な魔力を纏い、周囲へとそこに居るだけで圧力を掛ける程の存在となっていたのだ。




「…………これは、ちょっとばかり不味いかも知れないねぇ〜。

 アイツ、もしかしなくても、さっきより強くなってるみたいだよねぇ?

 なんでだろう?」



「…………さぁ、な。

 当方には、攻撃を受けた直後に魔力が増加した、という程度の事しか分からぬであるよ。

 まぁ、とは言え、魔力が上昇した、という事しか見ている限りでは分からぬが、な」



「あんまり楽観視するつもりは無いが、そこまで技量も高そうじゃなかったし、魔力による身体能力強化の倍率が上がって身体能力が凄まじい事に、とかは有り得ても、いきなり達人の動きをし始める、とかは流石に無いだろう。

 まぁ、どこまで強化されているのか、いつまでその強化の状態が続くのか、までは分からんがね」



「なら、いつもの通りに、一当てして確かめてみるとしようかねぇ〜。

 各員、あの妄言しか垂れ流さないクソ溜めにぶち殺される様な不様は晒さない様に、ね?

 流石に、アイツの言葉の通りに事が進む、だなんてのは、オジサン的にも絶対に許容出来ない事だから、ね?」




 そう言って飛び出したヒギンズを迎撃せんと、レオルクスが構えを取る。


 本の少し前までよろけていた足下は早くも確りとしたモノとなっており、まるで地面へと深く根を張った大木を前にしている様な存在感と威圧を受ける事となるが、ヒギンズがそのまま懐へと飛び込んで行く……事にはならず、直前で真横にスライドする様な動いて見せる。



 すると、そこにいたのは、先程と同じ様に全身で突撃を仕掛けているガリアンの姿。


 流石に、同じことを目の前でして見せれば何かしらの妨害を受ける、と判断した二人は、先行する形で飛び出したヒギンズを盾にする形でガリアン自身の姿を隠し、先と同じ手順で全力での突撃を再度仕掛けて推察がどの程度合っているのか、を検証しようとしていたのだ。



 そのまま軽症で受け止めるのならば、それだけ身体能力が向上し頑強さも増している、という何よりの証拠となる為に、ソレを前提として作戦を組めば良い。


 また、回避するなら回避するで、頑強さ、という点ではあまり強化が成されていない、という証拠になるし、その際の回避の仕方で、どの程度まで強化されているのか、技量の類いまで高まって居るのか、と言った諸々に対する推察を深める材料にもなってくれる為に、やはり『同じ条件の攻撃』を再現出来るのであれば、比較試験として仕掛けるだけ損は無いのだから。



 そうして仕掛けられた、再度の突撃。


 ガリアンの全体重と渾身の力を込められたその突撃は、再度轟音を周囲へと響かせながらレオルクスへと炸裂する事となり、その結果として…………その場で足を地面へとめり込ませ、二本の轍を刻む事になりながらも、その四本の腕を全て駆使したレオルクスによって、見事に真正面から受け止められる事となるのであった……。




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