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追放者達の集い~取り敢えず目標は果たしたので魔王討伐は勇者に任せて魔物討伐に勤しみます~  作者: 久遠
第六章・龍人族編

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202/220

『追放者達』、応戦する・2

 


 四本ある腕を振りかざし、そこに生える鋭く長い爪にてアレスを切り裂こうとしたレオルクス。


 外見の通り、獣系統の魔物に特有である、身体の大きさに比例しない圧倒的な身体能力によって生み出された爆発的な加速により、残像を残す程の速度にて彼の間近へと迫り、それらの()を振り下ろす!



 当然、狙われたアレスは反応する事が出来ず、哀れにもその凶刃によって真っ先に退場する事になる…………ハズも無く、スルスルと全ての攻撃を紙一重の所で回避してしまう。


 それに驚愕したレオルクスが目を見開くが、別段アレスとしてはそこまで大した事をした、と言う認識では無い為に、遠慮も呵責も無いままに反撃の拳を再度レオルクスの鼻面へと叩き込んでしまう。



 四本の内、一本で再度流血が始まった鼻を抑えるレオルクス。


 その瞳には信じられないモノを見た、と言わんばかりの色が浮かんでいたが、ソレをやってのけたアレスとしては、先述の通りに『大した事はしていない』と思っている為に、この程度で何を?といった顔をしてしまう。



 …………確かに、二十に届く短剣により、同時に、かつ連携して攻撃をされる、と言えばその回避は非常に困難であり、斬撃の嵐、とでも形容出来るであろうソレを凌ぐ事は不可能にも思える事だろう。


 だが、それはあくまでも操作しているのは単独であり、二十という数字に惑わされそうにもなるが、それらを使っているのはたったの四本の腕のみ、なのである。



 別段、同等の練度を誇る二十人の刺客から連携されて同時に刃を振るわれている、という訳では無いのだ。


 仲間を盾にしての特攻や体制崩しからの致命の一撃、死角からの同時攻撃だとか、逃げ道を潰されての一斉投擲等の回避不可能な状況を作られる訳でも無く、ただただ真正面からの連撃を繰り出されるのみなのである。



 しかも、己の身体を傷付け無い、という事が前提となっている動きで、である。


 ならば、アレスにとってみれば、別段唐突に腕が伸びてカーブして来る訳でも、腕が切り離されて自律行動する訳でも無いのだから、行動の起こりが見えている以上は見切れるし、捌けるし、避けれるのは自分ならば出来て当然、という訳なのだ。



 流石に、誰でも、とまでは言わない。


 元々非戦闘要員に近いナタリアは多分無理だろうが、そもそも彼女は近寄らないので大丈夫だろうし、若干タチアナが厳しいかも知れないが、先に見せられた動きが本気のモノであれば、Sランク相当の実力があればまぁ出来ない事では無いだろう。



 と、そこまでレオルクスの様子を観察しながら内心にてそう分析していたアレスは、ふと違和感に思い当たる。


 これまで幾度か遭遇した、同格の称号として『六魔将』を名乗ってきた魔族の連中は、もっと強かったハズなのでは?と。



 確かに、オルク=ボルグを名乗った小鬼は戦闘力、という点に於いてはそこら辺に居る小鬼とほぼ変わりは無かったし、テンツィアに関してもアレス一人でも互角に戦う事が出来ていた。


 故に戦闘力のみが名乗りを許されている基準である、という訳では無いのだろう、とは理解出来るが、先に挙げた二名に関しては戦闘力以外の部分、その他の面が主であり、どちらかというと戦闘力云々はオマケに近い事を鑑みれば、やはりそちらに特化しているで言うのならば、スルトやゴライアス級の実力が必須になると考えても良いのだろう。




 では、翻って見てみれば、眼の前のコイツはどうだろうか?


 戦闘力に特化しているパターン、は流石にアレス一人で殴り飛ばせてしまっている以上、何かしらの奥の手で戦闘力倍増!とかにならない限りは、対多数に特化してました、とかのネタバラシが無い限りは判断が付かないが、まぁ無さそう、というのが彼の正直な感想。



 では、その他に何かしらの一芸を持っているのか?


 それはそれで、あんまり賢くなさそうな外見をしている上に、それまで聞こえていた噂話を総合すると、恐らくは原因は目の前のコイツである、と考えるならば、他に何かしらの得意分野があっての任命、という感じでもなさそうな気がしていた。



 戸惑いを視線に宿しつつ仲間を見回してみれば、そこには腑に落ちない、と言わんばかりの表情を浮かべている面々の姿が。


 手にはそれぞれで得物を構えてはいるが、それでも戦闘態勢、と呼ぶのは躊躇われる程度には困惑が彼らの意識の大部分を占めており、本当にコイツで良いのか?コイツがそうなのか?という疑問が彼らの脳裏を埋め尽くしている状態となっていた。



 そんな彼らの様子とは裏腹に、鼻血を垂れ流しにしている鼻を抑えながら、殺気を抑えようともせずに放つレオルクス。


 どうやら、開幕出会い頭の拳打だけでなく、再度カウンターとしても拳を叩き込まれた事で怒り心頭な状態となっているらしく、その視線はそれだけで相手を貫けそうな程に熱量を持っており、アレスに対しての怒りや殺意を滾らせているのが容易に見て取れた。




「…………テメェ、ふざけてやがるのか!?

 得物を使われてたら死んでいたんだからお前の負けだ、とでも抜かしやがるつもりか、あぁ!?

 平和主義で皆仲良し小好ししたいから、お前は殺さないんで降参しろ、とでも抜かしやがるつもりか?んなもん、クソ喰らえだってんだよ!!!」



「…………いや、普通に突っ込んで来たから、反射的に回避してぶん殴ったってだけなんだがな?

 それよりも、お前本当に六魔将とやらか?

 その割りには、オルク=ボルグみたいに一芸に秀でてる、って感じでも、スルトみたいに個体として強過ぎる、って訳でも無さそうなんだが?」



「……………………テメェ、余程死にたいらしいな……?」




 アレスから放たれた純粋な疑問が、レオルクスの逆鱗に触れる。


 少なくとも、彼にその意図は無かったものの、相対するレオルクスがそうとは受け取ってはおらず、また本人としても気にしていたのであろう点を指摘された事により、それまでよりも怒りのボルテージを上昇させ、正しく怒髪天を衝く状態へと変化して行った。



 …………そのせい、なのかは不明だが、レオルクスの放つ圧が、それまでのモノよりも強くなって来た様に、アレス達には感じられた。


 爆発的に、という程でも無いにしろ、それまでの『本当に六魔将か?肩書を騙る偽物じゃないのか?』と思える程度のモノであったのが、今度は『肩書は本物、かも?』と思える程度には高まっており、一般人では立ち上がって相対するのは難しい程度となっていた。



 何らかの能力の類いか、それとも何かしらの道具でも使ったのか?とアレス達の視線がレオルクスへと集中する。


 それまで、本気では構えられていなかった得物が構え直されると、彼らも戦意を昂らせて行く。




「…………何となく、このままだと面倒な事になりそうな雰囲気がしてるから、手加減とか抜きにして殺しに行こう。

 情報とかも引き出したかったけど、それよりも優先しないとならない事もあるからな。

 具体的に言えば、俺達の命とか、だけど」



「ハッ!!

 だったら、そのお大事な命とやらを、後生大事に抱えたままくたばりやがれ!!

 心配しなくても、野郎共は道連れにしてやるから、寂しい思いはしなくても済むだろうさ!

 まぁ、そこのメス共は、生かして俺様の群れ(ハーレム)に加わる栄誉を与えてやるよ!

 たっっっっぷりと可愛がって、ガッツリ孕ませてから何匹でも産ませてやるから、楽しみに待ってやがるんだな!!」



「「「決めた、コイツは殺そう今すぐに」」」




 レオルクスが放ったその言葉。


 それにより、意図せぬ形で男性陣のセリフが重なる事となったが、その表情と殺意は形容し難い域にまで達しており、女性陣は自らのパートナーから向けられている愛情の深さと独占欲の様なソレを前にして、嬉しい様な恥ずかしい様な、そんな複雑な感情を抱く事となるのであった……。




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