関門突破
それは、ごまイワシが五回目の[桜花雷閃]を発動し。
発動中に攻撃を受けて、桜吹雪となって散り、スフィンクスへとまとわりついた時の事だった。
「んお!? キタ!! キタ!! 来たでござるよ!! 拙者の必殺スキル、目ん玉かっぽじってよく見るでござる!!」
どうやら必殺スキルの発動条件を満たしたらしく、エルメルと同じシステムメッセージを確認したごまイワシは。
一人テンションを上げ、そう叫ぶと。
短刀を一度鞘に戻し、居合の構えのような姿勢を取って。
「刮目せよ!! [桜花絢爛:春吹雪]!!」
必殺スキルを発動。
と同時に、スフィンクスを取り囲むように、一枚が大人程の大きさの桜の花びらが大量に舞い漂って。
その内の一枚へと、ごまイワシがきれいに着地。
そして……、
「拙者、これより人外な動きをするでござる。気分が悪くなったら、配信から離れるか拙者を見ないことを勧めるでござるよ」
必殺スキルがどんなものなのかを理解したごまイワシから、先程とは打って変わってそんな警告を口にして。
疑問符で埋まるコメント欄を余所に、ごまイワシ、まず一度目の跳躍。
スフィンクスを挟んで丁度対角線にあった桜の花びらに着地すると、その軌跡が桜色の線で示されて。
一瞬遅れるように、通常サイズの桜の花びらがその線から舞いあがり……。
それら全てが、スフィンクスへと襲い掛かる。
「うっとうしい!!」
それらを防ぐため、手で払おうとするスフィンクスだったが、払う手を巻き込むように花びらへと跳んだごまイワシによってその手は弾かれ。
移動したことで、移動した軌跡から桜の花びらが沸き……さらに襲う。
「ちぃっ!!」
流石にめんどくさいと感じたか、桜の花びらが展開するその場所から距離を取ろうと後ろに跳んだスフィンクスを。
「どうして逃げられると思ったんでござる?」
跳躍三回。大量の桜の花びらと共に追いかけるごまイワシは、スフィンクスの顔面目掛けて飛ぶと、[クロスポイント]にて目を強襲。
遅れて顔面に突き刺さる多数の桜の花びらに、たまらず顔を手で覆うスフィンクスへ。
「ごまイワシがうざいのは全面的に同意だし同情するけどさ」
「それで俺らの存在忘れるとか、素直にギルティだぞ?」
「てめーは俺らを忘れてた。だったら、体で思い出すがいいさ」
[オーラブレード]と、[ブレイクダンス]中の竜巻旋風脚と、[刃速華断]が同時に尻尾に叩き込まれると……。
「んぎゃん!!」
声を上げて飛び上がるスフィンクス。
そこへ、
「問一。拙者が引いた対角線の距離を求めなさい」
ジグザグに。人間大の桜の花びらへと跳びまくり、通常の桜の花びらをこれでもかと展開したごまイワシは。
「答え、拙者の気分次第でござるよ」
最後に、スフィンクスの背中側へと跳んで、奥義スキルの接続時間が終了。
スフィンクスへと襲い掛かった桜の花びらの数は、総数2068枚となった。
それだけの桜の花びらを、スキルのダメージを受けたスフィンクスの体には、大きな亀裂が走っており。
そして、それを当然見逃すような優しさなんて持ち合わせていない四人は……。
「弱いところは徹底的に攻めるに限る」
「サソリといい、ヒビ入れて割るってギミック好きだなここ」
「案外攻略のテーマだったりして。イエローデザート地域の」
「あり得るかもしれないでござるねぇ。エリアボスも何かしらヒビ入れてそこを活路に……とかあったら確定でござるのに」
それぞれスキルを振りながら、そんな会話を。
「……皆さん、なんて言うか、凄くリラックスしてますよね」
聞いたパルティは、自分の居るクランの戦闘中の雰囲気と比べ、幾分にも緩い雰囲気に、思わず言葉が漏れる。
緊張の糸は常に張り、動きをミスろうものなら何をしてるんだという目を向けられるクランメンバーとの狩り。
それに比べると、好きなように動いて好きなように戦う四人の姿は、パルティから見て非常に楽しそうであり。
誰かが動きをミスしたとしても、それは指摘されることなく、しかもミスした本人によって挽回されて。
単純に、プレイヤースキルや戦い方。そもそもの操作感すら、クランメンバーとは一線を画す四人はの姿は……。
「楽しいからな!」
「緊張して面白い所もあるかもだけど、やっぱり最初から楽しむ気がないと面白くないよ」
「普通に好きでござるからなぁ。このゲーム」
「過度な緊張は邪魔だしな」
とてもとても、眩しいものに見えた。
「もう、お前らほんまに……ホンマにブチギレたで!!」
そんな中、ヒビを全力で殴られたスフィンクスは、とうとう亀裂が全身へと回り、音を立てて最後の外殻が剥がれ落ちる。
「もうええ! 誰か一人でも道連れや!!」
ピラミッドの入り口にて、プレイヤーをピラミッド内へと転送するポータルを出現させていたころの大きさへと戻ったスフィンクスは、それまでよりも速い速度で、四人の中で一番近かったプレイヤーへと襲い掛かり。
ブレスに使用するはずだった魔力を集約させ、爆発を引き起こそうとした。
――が、スフィンクスは、襲い掛かるプレイヤーの選択を間違えた。
「いらっしゃいませー!!」
跳びかかってきたスフィンクスを剣の腹で受け止めたエルメルは、瞬間的に三人へとアイコンタクト。
それに気付き、頷いた三人を確認すると、スフィンクスを[横薙ぎ]で頭上へと打ち上げて。
「キャッチャーフライ!!」
「[クロスポイント]!!」
「[ハイウェイト]!!」
「[使役律令:撃]!!」
打ち上げたスフィンクスを、残りの三人が追撃し。
「クソッタレ!!」
断末魔を叫び、スフィンクスの姿が……爆ぜた。
「たーまやー」
「かーぎやー」
「汚ぇ花火だ」
「爆発オチなんて、最低」
そんなスフィンクスの姿を確認し。
システムメッセージの、
『拠点ボス【王家の守護者:スフィンクス】の討伐に成功しました。これにより、拠点の制圧が完了しました』
という文章も確認した五人は。
どや顔と、笑顔と、やりきった顔と。
五人五色の表情を見せ、拳を突き出すのだった。




