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選択肢『全部』がない謎

 一日と少し。

 それが、素材集めに費やした総時間。

 当たり前にぶっ続けで狩り続けたエルメル達は、当然の如くレベルが上がっていた。

 レイドボス討伐の功績と合わせ、レベルは20へ。

 

「お、アルファオートさん、ギフト感謝でござるよ。『レベル20記念』本当に感謝でござる~」


 それを祝したギフトが投げられ、読み上げるごまイワシだが、流石にその声には元気がない。


「とりあえずエンチャしたら落ちね? だいぶ意識が怪しい」

「さんせー。ていうか、狩ってる間は疲労も睡魔も来ないの笑うんだけど」

「素材集め終わった瞬間にドカッと来たよな。なんつーか、体が狩りに馴染み過ぎてる気がする」

「まぁ、素材集めが本番ではなく、エンチャが本番なんでござるが。……エンチャ次第では二週目突入でござるし」


 普通、一日もぶっ通しで狩りを続けていれば、寝落ちするか集中が薄れて被弾が多くなるか。

 そうならないにせよ、そのパフォーマンスは基本的に落ちていくはずである。

 しかし、当たり前に複数日数の徹夜で狩りを行ってきた四人に、そんな常識は当てはまらない。

 というか、狩りの最中は脳からヤバい物質出てんのかレベルでハイテンションになり、むしろ視聴者に心配されたりしていた。

 もちろん、現在は別の意味で心配されているが。


「一番原因になりそうなやつがフラグ立てるのはいかがなものか」

「これを逆フラグにして見事に突破するのが一級フラグ建築士でござるよ?」


 最奥のホルスの遣いを狩っていた場所から入り口に戻るため、移動中。

 天井に張り付いたスカラベに、マンチを[横薙ぎ]で天井付近まで飛ばし。

 そのまま[オーラブレード]で大量のスカラベを巻き込んで貫通させ、[パープルレイン]で追撃。

 残ったスカラベはマンチ以外の三人が秒速で処理し、一面から敵が消える。


「強くなりすぎたな」

「慣れただけでござるよ」

「複数ある通路の一つだけ殲滅しても胸張れねぇだろ」

「なんかこう、最初は虫だって嫌がったのに、本当に消えたよね、それ。パルティちゃんのハイライトが消える気持ちが今なら分かる」


 そんな光景も見慣れたもので、ミイラ地帯もミイラとスプリント勝負をして突破。

 今更ツタンサーペントに苦戦するはずもなく、あっさりピラミッドの外へ。


「ていうか、一日狩り続けてたのにユニーク装備落ちなかったな」

「やっぱ確率低いんでござるねぇ。エルたその武器が落ちたの、マジで奇跡レベルだったのでは?」


 狙っていた素材はもちろんのこと、他の素材も落としまくったが。

 ユニーク装備だけは、再びお目にかかることはなく。

 よほどの幸運か、とエルメル達は納得する中。


『むしろ確率的に出てない方が奇跡まである』


 というコメントが。

 続いて、


『五時間で一つくらいがユニーク落ちるペースらしいので、滅茶苦茶下振れてますよ』


 とのこと。


「うん。衝撃的な事実でござるが、傷つくのは拙者だけでいいでござる」


 しかし、そのことを他の三人には言わないごまイワシの優しさは、


「どうせ運がないだの言われてるんだろ」

「ごまさんのラックが感染したとか言われてるんじゃない?」

「全部ごまのせいになってそうだしなぁ」


 無情にも三人によって踏みにじられる。

 ――が、


「まぁ、言われ慣れているでござるよ」


 当の本人はどこ吹く風であった。



「さて、何とか意識保てて町に着いたでござるが……」

「エンチャは起きてからにしようぜ……。今の状態でリアクション出来ると思えねぇ」


 ポータルをくぐり、町に戻ると……。


「んあ?」

「何事?」


 突如として暗転。そして……、


「なんかクッソ重要そうなイベントなんですけどぉ!?」


 目の前には、それぞれ赤、青、緑、紫、白の髪をした女神のような存在が立っていて。


『ラルナの子よ。そなたに加護を与えましょう』

『選びなさい。我らの加護を』

『選びなおしは出来ません。よく、考えて』

『そなたに、光ある未来があることを』



 と、口々に言ってくる。

 そして、


「は? ……えーっと、女神の加護の選択?」


 画面に出てくるイベントガイド。

 どうやら、レベル20になったプレイヤーに訪れるイベントらしく、その内容は四択のステータス加護。

 物理、魔法、耐久、幸運。そして……生産。

 五つの選択肢は、それぞれに補正を乗せるという話らしく、さらには加護によってスキルを習得出来るらしい。

 それぞれの加護の効果を熟読し、果たしてどれを選ぶのが正解かを考えるエルメル。

 そんな中、


「拙者、もう決めたでござる」

「ほう」

「HP極でござるが、ここで安易に耐久を選択しては魔法防御も防御も上がってしまうでござる」

「なるほど?」

「だから、拙者は幸運を取るでござるよ!」


 そう宣言したごまイワシ。

 ――ただ、


「ごまさん? ゲーム内の幸運上げてもリアルラックは上がらないよ?」

「流石にわかってるでござるよ!?」

「マジか。絶対運って文字だけで選んだとばかり……」

「なわけないでござる。というか、幸運選んだのにはちゃんと訳があって……」


 先ほどまでの運の話を引きずっているのか、そんなツッコミが。

 けれどもごまイワシには、ちゃんとした根拠があるらしく……。


「拙者たち、狩りの部類は手数狩りでござろう?」

「まぁ、そうだな」

「その際にネックなのはスキルのクールタイムでござる」

「だから武器持ち替えてスキル回してるじゃん」

「それでござるよ。今後持ち歩く武器の種類が増えたらどうなるでござる? バフやデバフも必要になるはずでござるし、有用なスキルがいっぱいあるはずでござる。でも、所持量の関係で持てなくなる……そんな未来が来そうでは?」


 とのこと。


「なるほど? つまり今後を見据えた幸運――もっと言えば、幸運の項目に入った『所持量』というステータス狙いで、幸運にはこれっぽっちも惹かれてない、と」

「いぐざくとりー」

「本音は?」

「多少くらいはリアルラックがマシになってほしいでござる」


 結果として、四人ともが幸運。つまりは紫の女神を選択し。


『ではそなたらに、我の加護を与えよう』


 という言葉の後に、左手の甲に走る強いかゆみ。

 何事かとそこを見れば、そこには、四葉のクローバーを模した紋章が刻まれていて。


『ラルナの子よ。そなたらに祝福があらんことを』


 役割を終えたと、今度は視界が純白に染まり……。

 目の前にいた女神たちは、その姿を消すのだった。

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