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エンチャ沼

「出来る組と出来ねぇ組に分かれっから、まずは出来る組な。敏捷付与と魔法力付与は可能だからしちまうぜ?」


 装備と要望を受け取ったビルゴードは、エルメルとマンチを見ながら確認を取る。

 ここで拒否するくらいなら初めから要望として口にしないわけで。

 二人は静かに頷いて。


「本来は素材がいるんだが最初だから出血大サービスだ! 素材不要でエンチャントしてやるぜ!」


 そう言って大型のハンマーを肩に担いだビルゴードは、


「かっとびやがれぇっ!!」


 受け取った剣とペンダントを空中に放り投げると、それをハンマーでフルスイング。

 

「ちょっ!?」


 それが例え演出であると分かっていても。

 思わず抗議の声を上げたエルメルのもとへ。

 頭上から、ビルゴードに渡し、今しがた空の彼方へと飛んで行ったはずのペンダントが落下してきて。

 足元に、十センチほどのクレーターを作り、


「おら、成功だ」

「成功だ、じゃねぇよ! ビビるわ畜生!!」


 何食わぬ顔で拾ってエルメルに渡すビルゴードに向かって、怒鳴り散らす。

 ちなみにマンチの足元には、刀身から落下した剣が柄まで埋まっていた。


「お前のも成功だな。ほれ」


 同じように拾って――というよりは引き抜いてマンチに渡し、


「装備する前にアイテム確認してみろ。しっかり能力が付与されてっからな」


 と、にっかり笑うビルゴード。

 言われたとおりに確認してみると……。


「マジで?」

「ん? どうしたでござるエルたそ」

「今のエンチャで……敏捷『-2』が付与されてるんだけど……」


 レベル15まで上げてようやく『-1』になった敏捷に、装備するだけで『-2』されるペンダントが爆誕。

 つまり、単純計算でレベル45相当のステータス変化ということになるわけで。


「いや、でもあまり効果はないんでないの?」

「『-1』じゃ実感わかない程度なんだろ?」

「忘れたのか? ペンダントのスロットは3つだ」

「つまり……?」

「俺はあと二回の変身を残している」


 しかも残り二回もエンチャントが可能という、敏捷極の真価が発揮できる条件が……整ったのかもしれない。


「でも効果は未知数、と」

「こればっかりはやってみないと分かんねぇや。というわけでそっちのイベントさっさと終わらせてくんね?」


 俺は早くエンチャントがしたいから、と。

 出来る組と違い、出来ない組に分類されたごまイワシと†フィフィ†に対し、早くしろ、と催促。


「拙者、武器に最大HPつかないならペンダントに変えたいでござるよ。こっちになら付くでござろう?」

「うちも。今更火力伸ばすより突きぬけた方が面白いし」


 振られた二人は、エルメルがペンダントにエンチャントを施したのを見てそんな装備もあったなぁと思い出し。

 自分の極振りステータスが付かないならと装備を変更。


「あいよ。この装備なら問題なく付くぜ」


 それを受け取ったビルゴードは、エルメルやマンチの時と同じように受け取った装備を空中に放り投げ空の彼方へ。

 やがて落ちてきて同様にクレーターを作り。


「ほらよ」


 二人に手渡す。


「へー。最大MP『+652』かー。結構つくねー」

「拙者最大HP『+263』でござる。MPに比べて伸びが悪いとかあるんでござるかね?」

「そりゃあエンチャントするステータスに差はあるさ。ただ、HPもMPも最低値100の最大値1000だぞ?」


 受け取ったごまイワシと†フィフィ†はさっそく能力を確認。

 見えている数値を口にして、倍以上の違いがあったことを元に考察するが。

 そんなことはないとビルゴードに否定される。


「ごまのいつものだろ?」

「最低値引かなかっただけマシまである」

「全体的に運が悪すぎるからねぇ……」

「この程度では挫けないでござるけどね?」


 低い数値を出したごまイワシのリアルラックをいつものことと茶化されて。

 当のごまイワシも、いつもの事と割り切って。


「ちなみに数値が気に入らなきゃエンチャントは取り除けるぞ? ただし、素材は返ってこないし数値が悪くなることももちろんあるし、また素材は必要だし装備によって取り除ける回数は決まってるけどな」


 エンチャントのチュートリアルは終わりか? と四人でビルゴードへと視線を向けると、エンチャントの説明の続きを口にするビルゴード。


「エンチャリフレあるんだ。……ってかそんなの回数上限まで最大値狙うに決まってるよなぁ?」

「なんとこのペンダント、リフレ回数上限20回とか書いてあるでござるよ?」

「素材集めマラソンの時間か?」

「籠り狩りと似た様な絵面になっちゃうね」


 その事実を受け、各々のエンチャントを施した装備のリフレッシュ回数を確認すると、ペンダントには脅威の20回と設定されていて。


「俺の剣は3回だな。ていうかペンダントやばいな、そう考えると」

「それ自体にステータス補正ないとはいえ、好きな能力を三回エンチャ出来てリフレ回数も多いって中々だよね」

「とりあえずエンチャの数値の上限が知りたい。敏捷がもっと伸ばせるなら伸ばせるだけ伸ばしたいし」

「俺は平均にしなきゃだから魔法力このままでいいし、ほかの能力も上げられないんだよなぁ」


 最初の町で手に入った装備品。その割には、ある意味では核とも言える性能をしていたペンダントに驚愕し、エンチャント数値の厳選を行うことを無限で決めたエルメルは、敏捷の上限値をビルゴードに尋ねる。


「敏捷は『-1』から『-3』の中で変動するぞ」

「てことは三分の一……いや、絶対これ確率違うやつだな?」

「ちなみに必要素材はツタンサーペントの抜け殻だ」

「あ。マジで? アホほど持ってるぞ?」


 尋ねられたビルゴードは数値の変動幅を教えると同時に、エンチャントする際に必要なアイテムをエルメルに教え。

 教えられたエルメルは、先ほどまで籠って狩っていた相手の素材であったことに驚愕し。


「とりあえずこのままエンチャするわ。一回で三十個か……五回しか出来ねぇ」

「エルたそならいけるって信じてるでござる」

「ごまに格の違いを見せつけてやれよ」

「エルちゃんの~、ちょっといいとこ見てみたい~」


 エンチャント出来るからとそのまま追加でエンチャントしようとすると、ほかの三人から(はや)し立てられて。


「ごまとは違うとこ、見せてくるわ」


 サムズアップし、数字の沼の中へと沈んでいった。

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