何もしてないわけじゃない
「はい! というわけで配信二回目が開始された訳でござるが~」
「はいじゃないが?」
「まぁぶっちゃけ今回は延々狩り配信の予定なんでござるよ。んで、超絶背伸び狩りの予定なんで、下手するとコメント読む暇ないかもしれないので~」
「まぁ、コメント読んでて床舐めましたとかってなったら俺らは全力で煽るけどな?」
「気になるコメントは拾うし、ギフトコメは読み上げるでござるが、それ以外は反応できなかったら申し訳ないということで」
配信を予約していた時間になり、開始直後に今回の配信の趣旨を説明するごまイワシ。
その説明に茶々を入れつつ、四人はエリア拠点、『ピラミッド』の前に到着。
「んで? これどこから入るの?」
「ポータルは見当たらんでござるね? ……うん?」
入り口らしい入り口が見つからず、ピラミッドの周囲を回っていると、そこには……。
「ちっちゃなスフィンクス?」
「スフィンクスと言えばー?」
「クイズー!」
現実世界の某ハンバーガーチェーン店を見つめるスフィンクスではなく、寝転んだ人間サイズの可愛らしいスフィンクスが存在し、
「汝ら、中に入りたくば我の出す問いに応えよ」
期待通りにクイズを出すらしい。
「どんなクイズなんだろ?」
「雑学なら得意だけど?」
「ゲーム内雑学とかだとぶっちゃけコメントで助けてもらえるだろ」
「まぁ、問題を聞いてみるでござるよ……。コメントで鬼難易度だから調べないと多分無理、って言われてるでござるな」
四人がそれぞれの意見を口にする中、既にその問いの中身を知っているらしいコメントをごまイワシが読み上げて。
「問い。ホルスの息子であり、ハヤブサの頭を持ち、死者の――」
「ケベフセヌエフ」
出されたスフィンクスの問いを、その問いの途中で解答する†フィフィ†。
「は?」
「なんて?」
「だから、ケベフセヌエフ。ホルスの息子は四人いて、ハピ、ドゥアムトエフ、ケベフセヌエフ、イムセティって四人なんだけど、その中でハヤブサの頭なのはケベフセヌエフなの」
「これ雑学の範囲か?」
嘘だろ、という表情で†フィフィ†を見るエルメルとごまイワシに、なんでその答えに行きついたかを説明する†フィフィ†だが、そもそも根本としてマンチが言うように知っていることが珍しく。
『うっそだろお前……』
『流石に事前に答え調べてたと思いたい』
配信のコメントでも、間髪入れずに答えたことに対する驚愕のコメントが流れるが、
「まぁ、たまたま? 気になって調べたことがあって」
「どこでどうこの事に触れたかは知らんが、とりあえず合ってるんだよな?」
たまたま、で済ませた†フィフィ†と、それをこれ以上深堀しない事にしたエルメルは、スフィンクスへと向き直り。
「正解である」
物凄く悔しそうに表情をゆがめたスフィンクスは、口を開くと――、
「あー、そこにポータルあるんだ」
「んじゃあピラミッドに潜入と行きますか」
「というわけで、背伸び狩り配信はこっからでござる~。頑張るでござるよ~」
「はい、というわけで予想タイム。この籠り狩りで全員総計で何回床舐めるでしょうか! 予想はコメントしておいてね~。当たったらなんかあるかも~」
ピラミッド内に進入するためのポータルが確認でき、これからが配信の本番だ、と気合を入れる四人。
エルメルが露骨なコメント数稼ぎを口にするが、景品があるかもしれないとなればコメントしたくなるのが人の性というもの。
怒涛の数字コメントが流れるのを確認しながら、四人はピラミッド内へと入っていった。
予想コメントの最小数は『0』。最大数は『152』であった。
*
「何と言うか、らしい雰囲気だな」
外見と同様に砂レンガで作られた壁や階段、柱。
定期的に松明が置かれているおかげで内部は明るいが、今の所敵の気配はない。
「けど敵が見えないのは変じゃね? 一階は敵がいないとかか?」
「あるいは出待ち対策で入り口からある程度離れた場所にしか敵がいないとかかな?」
そこに引っ掛かりを覚えたマンチだが、†フィフィ†の説得力ある仮説に納得した処、
「うおっ!?」
柱の陰から、何かが現れ襲い掛かってきた。
「ヒャッハー!! 敵だぁっ!!」
「世紀末で草。確実に強いから気を付けるぞ!」
それを回避しながら殺意の衝動を抑えきれないエルメルと、それに対して注意を促すマンチ。
襲い掛かってきたのはツタンサーペントという名前の蛇型のモンスターであり、
「名前的に毒持ってるでござるよ!」
「合点承知の助!」
エルメルと並びながらさらに注意を促すごまイワシと、回避した体勢を戻して武器を構えるエルメル。
再度飛び掛かってきたツタンサーペントへ、
「真正面から突っ込むとかカウンター希望のお客様ですかぁ!?」
スキルではなく通常の横振りを、回避と同時に敵に合わせて行うエルメル。
それでツタンサーペントは吹っ飛ばされはしたが、大したダメージにもなってないのであろう。
すぐに二度目の飛び掛かりをしてくる。――が、
『当たり前にカウンターしてるけど、普通は回避で精一杯なんだよなぁ』
というコメントが流れる中、それをあざ笑うように二度目のカウンター。
そして、今度は吹っ飛ばした先にはごまイワシが構えており、
「ふっ。拙者の新スキルの威力を見るでござる!」
薄い水色に光る、マンチからの属性追撃バフを受けた新たに装備屋で購入した武器、『シャープダーク』を構え、
「[乱雨斬]!!」
上段中断下段、それぞれに一回と、その途中を結ぶように斜め切りを二回。
計五回の連続攻撃の新スキルを放つ。
「何それかっけぇ」
「けど怯みすらしないからダメージは大したことないかな」
「冷静な分析はいらんでござるよ!」
けれど、そのスキルを喰らっても仰け反りすらしないあたり、威力はお察し。
というか、敵とのレベルが開き過ぎているのが一番の要因だが。
そして、体勢を整えたツタンサーペントは一番近くのごまイワシに飛び掛かり、
「ほい[切り抜け]」
すれ違いざまにスキルを貰い、けれども、やはり仰け反ることなく飛び掛かった勢いのままに、
「[ハイキック]!!」
†フィフィ†の迎撃が、顎に突き刺さる。
バク転しながらの蹴り上げかつ強制スタン。そんなスキルの一撃を貰ったツタンサーペントは真上に吹っ飛んで。
「[幅断ち]!!」
そんな空中にいるツタンサーペントに、エルメルのダッシュからの斜めに振り下ろす一撃と、
「[オーラブレード]!!」
マンチが飛ばした斬撃が交差する。
そして、そのまま落ちてきたツタンサーペントに、
「握力×体重×スピード=破壊力♪ [フルスイング]!!」
ノリノリの†フィフィ†がぶん殴りを放って吹き飛ばす。
「当たり前に武器交換して戦ってるの熟練者感凄いな」
吹っ飛んだのを確認し、マンチと†フィフィ†が当たり前に武器を切り替えて戦っていることを褒めるエルメル。
それに対し、
「配信まで時間有ったから練習したぞ? 結構早い方だと思うわ」
「うちもー。猛練習したー」
練習した、と返したマンチと†フィフィ†。
「和んでるとこ悪いでござるが、まだ倒しきれてないでござるよ!?」
そんな三人に対し、また襲い掛かってくるツタンサーペントを指差して叫ぶごまイワシ。
ピラミッドの外の敵ならば新スキルの三発で終わった。
しかし、未だ体力の半分程度しか削れていないツタンサーペント。
――ピラミッドに入って、最初に出会ったモンスターを倒すのは、これから五分後の事である。




