砲弾撃つの気持ちよすぎだろ
「弾撃てば、敵が飛ぶなり、法隆寺」
「季語がないでござる。やり直し」
「法隆寺って季語じゃねぇの?」
「お前は建造物をなんだと思ってるんだ」
エルメルとごまイワシ。二人で気持ちよく撃っていた砲撃は。
マンチと†フィフィ†の強い要望により、ローテーションで撃つことが決定。
撃ち終わった後に次の人のために砲弾を回収し、入れ替わる。
この繰り返しを、およそ五分。
甲冑を着た蟻達は扉の前から綺麗に排除し、それと同時に扉の前の広場もボロボロの状態。
蟻達の掃除を終えた四人は顔を見合わせ……。
「拙者達、やり過ぎたでござる?」
「ぽいね」
全員揃って舌を出す。
「んで、あの扉の先に向かう訳だが」
「何か問題が?」
「いや、ここに砲台を置いておいていいのかなーとね」
舌を引っ込めて周りを見渡したエルメルは、この後のことを考えてそんなことを口にする。
「というと?」
その考えが掴めない†フィフィ†が尋ねれば、
「いや、さっきの砲撃手の蟻が湧く可能性っていかほどだと思うって話」
「あー、つまりこの場を離れたらまた砲台を奪取されちゃうんじゃってこと?」
「そそそ。だからこの場から動かすか、破壊かしときたいって事よ」
と。
エルメルはどうやら、真っ赤に塗られた扉の先を攻略した後。
つまりは、帰り道の心配をしているわけで。
その帰り道の脅威になり得そうな、この砲台をどうにかしたい、という考えらしく。
「普通に砲口真下に向けてぶっ放せばいいでござるよ。足場崩して最下層まで落とせば、他のプレイヤーが悪用してくれるでござろう」
「落としたときに下敷きになるプレイヤーいそうじゃね? 恨まれない?」
「言い出したのごまイワシだから全責任なすろうぜ。視聴者のみなさーん! この作戦考案したのごまイワシで~す!!」
「ちょっ!? 待つでござる!!?」
悲しいかな、既にごまイワシの配信のコメントにすら、
『了解』
『御意』
『広めてくるわ』
などというコメントが溢れ、それは他の三人の配信でも推して知るべし。
静かに心の中で泣く、悪役確定のごまイワシをよそに、三人はせっせと砲弾を運んでくる。
「爆薬とかありゃあ即壊せたんだがな」
「仕方ないから壊れるまで撃つしかないよね」
「おーい、ごま。いつまで呆けてんだ。こっち来い」
しかもどうやら、三人の中では実行もごまイワシ一人にやらせるようで。
「弾は俺らが持ってくる」
「他のこと気にせず、この砲台を下に落とすことだけを考えてね☆」
「多分お前ごと落ちるだろうけど、すぐ戻ってこれるだろ?」
なんて、爽やかな笑顔をごまイワシに向け、サムズアップ。
それを受けてため息を吐いたごまイワシは……。
「こうなりゃ、自棄でござるよ」
と、絞り出したような声を出すのだった。
*
「だぁ~~~っ!! しんどい!!」
「琥珀様! 一旦下がってください!!」
エルメル達が砲台を奪ってヒャッハーとテンションを上げている頃。
エルメル達とは別の蟻塚に入っていた琥珀と黒曜、そして【ベーラヤ・スメルチ】のメンバー達は――。
甲冑と馬鹿でかい盾を装備した、これまた馬鹿でかい蟻に遮られていた。
横幅がプレイヤー三人分。縦も同様の大きさのその蟻は、威圧感と制圧力。そして、攻撃範囲が圧倒的であり。
けれども倒すかどかすかをしなければ先に進めない以上、戦わなければならないのだが……。
「ぜんっぜん距離取れないし、砂のクリ距離確保できやしない!!」
「仕方ありません、建物内なのですから」
「これじゃあ何のためにジョブエクステンドで近距離スキル取ったか分からないじゃない」
自分の得意な距離を保てずに苛立つ琥珀と、そもそも琥珀のサポートに全てを割いている黒曜では思うような成果が出ない。
そして、【ベーラヤ・スメルチ】のメンバー達も似たようなもの。
そもそもこのギルドは、『ある程度の制約と引き換えに高火力』なプレイヤーの集まりで。
遠距離特化の琥珀を筆頭に、紙耐久や一撃特化。果てには所持金を消費して消費した金額でダメージを出すものまで。
瞬間火力で言えば間違いなく最高クラスではあるのだが、その分継戦能力は軒並み低い。
だからこそ、要塞とも言える蟻と、その蟻を回復し続ける呪術師蟻の構成に、驚くほどに苦戦していた。
「せめて回復させてるやつだけでもどうにかならない?」
「ぴったりと盾持ちが張り付いていますが……抜けますか?」
「試す」
そんな状況を打破しようと、スナイパーライフルを構えた琥珀は。
「目標をセンターに入れて、スイッチ」
全く見当外れの方を向いて引き金を引く。
……すると、まるで銃弾が意思でも持つかのように、要塞蟻の背後の呪術師蟻へと向かっていき……。
即座に側にいた甲冑蟻が反応し、銃弾を盾で弾く。
「一発で行けると思ってないよん♪ 有象無象の区別無く、私の銃弾は容赦はしない! ……あれ? なんか違う?」
「銃弾ではなく弾頭。そして容赦しないではなく許しはしない、です」
その光景を見ても何やら余裕な琥珀は、ノリノリで決め台詞を吐きながら。
度々黒曜に訂正されつつ、何度も何度も銃弾を放つ。
それは、あり得ない光景。
放たれ、そして盾に弾かれた銃弾が。
次の銃弾が放たれるときには、一緒になって再度推進力を得て動き出していた。
何度弾かれようと、即座に次弾を発射し、だんだんと密になる攻撃の中で、琥珀は静かに宣言する。
「[バレットダンス]。こんなとこで必殺スキル切るつもりじゃなかったんだけどね。仕方ないね」
そして、ようやく打ち出された全ての銃弾が、揃って地面へと落ちたときには。
その場所で動く蟻の姿は、一匹たりとも残っていなかった。




