余計ではないこと
「武器錬磨……これ絶対必須だよな」
「先にグリーンフォレストに向かったプレイヤーもいるみたいでござるが、絶対に戻ってくるハメになるやつでござるね」
集め終えた素材をジュエに渡し、待つこと数分。
その数分でビルゴートの所へ赴き、新しく手に入れた装備にエンチャント出来る能力と素材とを確認。
結果、【花形の手裏剣】には最大HPも属性追撃も付与できなかった為に命中率を。
【砂の意志】には風属性を付与することに決め。
【サンゴの剣】には水属性追撃、【輝きの砂時計】に敏捷を。
【フレームレスレンズ】は、どうやら眼鏡系の装備には命中以外のエンチャントが出来ないらしく、選択肢なく決定し。
【蜃気楼のマイク】にはばっちり最大MPが付与できることを確認。
マンチは今の自分のステータスと相談し、全部のステータスを平らにするためエンチャントを【砂王の指輪】と【パピルスの人形】に付与することを決めた。
そして、ジュエのもとへと戻ってみると、
「お待たせしました~」
と戻ってきた武器は、攻撃力や命中率などの基本性能が一回り程成長し。
――さらに、
「攻撃時、敵の命中率が一定確率でダウンする……。いや、新たな能力目覚めてるんだが?」
本来武器が持っていた能力とは別に、武器錬磨を行ったことで新たな能力が解放。
しかもそれは、当然のように武器ごとに違うもので。
「拙者のはデバフ時間増加でござるね。これ、錬磨レベル上げたら効果大きくなるパターンだったり?」
「じゃね? 俺の、式神の攻撃力が上昇するって説明の後に、括弧がついて一段階って表記されてるし」
「うちのは歌スキルの効果上昇ね。歌スキルがもっと増えたら爆発しそうな説明ですこと」
それぞれが自分の装備に付いた追加効果を口にする。
そして、続けて次の錬磨のための素材を確認しようとすると……。
「ごめんなさい~。実は次に必要な素材が分かってないんですよ~」
と。
別に申し訳なさそうにもしていないジュエからそう告げられて。
「解放した町の数で錬磨可能レベルが決まってるんじゃね?」
「先に進まないと錬磨素材手に入らないって事か」
「ひとまず鉱石集めをしなくて済むと分かって一安心でござるけどね」
「その代わり素材集めが待ってますよっと」
明らかに安堵するごまイワシを余所に、他の三人はエンチャントの為の素材を落とすモンスターを確認。
「これらのモンスターなら時間かからずに狩れるべ。さくっと終わらせようぜ」
「さんせー」
「どうせごまの素材が残るんだろうし、サクッと行くかは知らんけどな」
「いつまでも素材が集まらない拙者ではないのでござるよ」
「ほんの一時間前まであと一個が出なくてさまよってたけどな」
「過去は振り返らない主義でござる」
そんな三人に引っ張られる形で、ごまイワシもエンチャント素材集めへと向かうのだった。
*
「あー、もう一個忘れてるもん思い出したわ」
六時間ほどかけて素材を集め、エンチャントで理論値を引いたタイミングで、エルメルがそう叫んで天を仰ぐ。
「忘れとけ」
「そうもいかんのよこれが」
「ちなみに何思い出したでござる?」
すかさずマンチが余計なことを思い出すなとけん制するが、思い出した以上そういうわけにもいかないエルメルと。
とりあえず何を思い出したのか、内容を確認してから判断しようというごまイワシ。
「生産」
「知らんぞ! 俺はそんなもの知らんぞ!!」
「ニュータイプ専用音ゲーニキは黙っといて。……確かにあったでござるなぁ」
生産という二文字を聞いただけで、虚無に片足を突っ込んだ時間を思い出して取り乱すマンチ。
そして、そんなマンチを冷たく扱ったごまイワシ。
「色々あり過ぎて忘れてたでござるが。生産も立派に新しい装備手に入る手段でござるね」
「ぶっちゃけマンチのはごまに渡した装備が限界説もあるけど……」
「ユニーク作ってるでござるからね。……けどエルたその金細工なら?」
「ユニークじゃないし? それにグリーンフォレスト開通したってことは、新しいもの作れそうな予感しませんか?」
「する! めっちゃする!」
エルメルの考えに力強く賛同したごまイワシ。
そこで、†フィフィ†がふと口を開く。
「一旦自由行動ってのはどう? ごまさんだけが配信してるわけじゃないし、バラバラになっても大丈夫でしょ? それぞれ生産するなり、補給するなりやることあるかもだし」
「なるほど。一理あるでござるね」
「俺は絶対に生産はしねぇからな!!」
「その辺も自由だろ。ぶっちゃけ俺はガッツリと生産するけど」
そんな†フィフィ†の提案に納得した四人は、とりあえず三時間ごとに一旦集まることを決めて解散。
エルメルはブルーリゾートへと走っていき、†フィフィ†もイエローデザートにいる調合士の師匠のもとへ。
ごまイワシも錬金術の師匠の下へ……は向かわずに、何やら思惑があるのかとある建物を目指し。
一人ポツンと残されたマンチは、
「クソが……」
とだけ呟いて。
ニュータイプ専用音ゲー。通称、よく分からないものに挑む覚悟を決めるのだった。




