どくどくまもみがつきぴか
コーストシェル。それは、岩かと見間違える殻を背負ったヤドカリ型のモンスターである。
ヤドカリ型というぐらいであるから、当然弱点は殻の中。
そして、序盤の敵であるからか、その殻の耐久力も高くない。
具体的に言えば、エルメルが一発殴れば追撃込みで壊れる程度の耐久である。
したがって、四人はスピーディにそのモンスターを狩っていたのだが。
「そういや装備変わったんだったわ。……えーっと? ――[式神召喚:前鬼後鬼]!」
思い出したように、新たなユニーク武器を手に入れ、その武器に刻まれたスキルをマンチが発動。
そのスキル名は、有名な鬼を二体召喚するもので。
斧と盾を持った赤と青の鬼が、マンチの両隣に出現。
「お? 召喚術か?」
「じゃね? とりあえず動かしてみないと何とも言えねぇけどな」
ただ、召喚されただけで動こうとしない二体の鬼を、どう動かせばいいのかと悩んでいると……。
コーストシェルが、マンチへ向けてハサミを向けて――。
伸びてきたハサミを、赤い鬼が盾で防ぎ。
青い鬼が、そのハサミへと斧を振り下ろす。
「あ、特に命令無く動いてくれる感じ? めっちゃ助かるわそれ」
ようやく合点がいったと手を叩いたマンチは、一度後退して[オーラブレード]を放ち。
二体の鬼の合間を縫って、コーストシェルの殻へと命中。
割れる殻と、その中から出てくる弱点へ、[パープルレイン]を追撃し。
さらにその瞬間に、二体の鬼が息ぴったりに斧をコーストシェルの弱点へと振り下ろし。
これまでよりもあっさりと、撃破に成功。
「使い勝手いいなこいつら」
「いいなー召喚。うちもほしー」
「アイドルが何を召喚するんだ? ファンか?」
「マネージャーとか?」
「どこの世界線にアイドルに呼び出されて戦うマネージャーがいるんだよ……」
それを見ていた†フィフィ†が羨ましがるが、流石にアイドルには召喚スキルはないだろうと一蹴。
コーストシェルを撃破後、マンチの両隣へと戻ってきた二体の鬼を確認し、ふと思った疑問。
「そういやそいつら、何分くらい出たまんまなん?」
それを、エルメルが尋ねると。
「時間制限ないぞ? こいつらにも個別に体力が設けられてて、それがなくなったら消滅。消滅から三分がクールタイム」
返ってきたのは、驚きの答え。
「雑魚狩り相手に滅茶苦茶有能じゃね? ……だけじゃねぇか。盾持ってるし、一度限りの身代わりって使い方も……」
「最初に身代わりって使い方が思い浮かぶ当たり、お前相当だぞ?」
初手外道のような使い道を思い浮かべたエルメルにツッコみを入れたマンチは、そういえばと、
「ていうかさっきから静かだけどどうかしたかごま?」
さっきから会話に入ってこない、普通ならば考えられないことをしているごまイワシを気にかけると。
「……出たでござるよ」
「うん? なんて?」
「ユニーク……出たでござるよ」
「またまたー。自分がごまイワシだって忘れてないか? そんな幸運が起こるわけ――マジかよ!?」
報告を受けたエルメルが確認のために移動すると。
そこには、【サンゴの剣】と表示されたユニーク武器が。
「大丈夫ごまさん? 熱とか無い?」
「体調の変化は特にないでござるよ」
「悪い物食べたとか?」
「ホテルでしか食事してないでござる」
「途中から中身変わったんじゃねぇの?」
「拙者が運が良いのそんなに信じられないでござるか!!?」
思わずごまイワシの身を案じた三人に、大きく意義を唱えると。
『うん』
綺麗にハモる三人。
「まぁ……いいでござるよ。まさかの十分でエルたその武器手に入ったでござるし、もうこの場でスキル見せるでござるよ」
「移動ばっかの配信とかつまらんしな。……狩りばっかが楽しいかは知らんけど」
店売りの武器を、拾った【サンゴの剣】へと持ち替えて。
【王家を守護する従僕の剣】と二丁持ちになったエルメルは、適当なコーストシェルへと狙いを定め。
「[クレセントライト]!!」
スキルを発動。
すると、下段から斬り上げ、弧を描く軌道を見せて。
その頂点で、剣の切っ先に光が灯り。
「お、追撃有り系か。[クレセントムーン]!!」
今度は、先程の軌道をなぞるように、弧を描きながら振り下ろし。
最初の一撃で殻が壊れていたコーストシェルは、その一撃を受けて倒れ。
……特にスキルの特性が分かることなく、撃破してしまった。
「今の何ぞや?」
「それ聞くの普通は拙者たちでござるけどね?」
あまりの呆気なさに思わずごまイワシへと問いかけたエルメルに、マジレスでツッコミを入れるごまイワシ。
「んーと、相手を斬り上げ無防備にし、魔法属性の斬り降ろしで追撃する光属性の攻撃。……だそうで」
「二発目が魔法判定ってことでござるか? エルたその魔法力での追撃とかたかが知れてると思うんでござるが……」
「参照ステは攻撃しか書いて無いから、多分攻撃力参照してダメージ判定だけ魔法になってんじゃね? 知らんけど」
「それにさらに追撃が付くんだろ? 強くね?」
「誰も弱いと言ってませんが?」
スキルの試し打ちをしようにも、効果を見るまでもなく倒してしまうコーストシェルでは話にならないと、この後エルメルが移動を提案。
また移動になることを、配信を見ている視聴者に詫びつつ、四人は砂漠に住むハゲワシ型の敵、『バルダスチャー』を目指して、移動を開始するのだった。




