第97話 沙崙VS加害者
おはようございます!
今月最後の投稿です!
大谷津学院は、只今いじめ問題で非常に揉めている状態である。連日テレビで報道される度に金町や茉莉奈達には批判の声が投げかけられ、学校側もクレーム対応に追われて大忙しであった。沙崙一家と秘密の会議をした翌日、真樹は朝のニュースを見ていたのだがその内容は昨日行われた大谷津学院の校長及び教頭による記者会見だった。
『台湾人留学生へのいじめ問題で連日波紋を呼んでいる、千葉県成田市の大谷津学院高校では、昨日夕方に校長と教頭による記者会見が行われました。』
『この度は、本校でこのような騒ぎが起きてしまった事を、校長として深くお詫びいたします。』
『留学生が来たのは4月からだということですが、校長先生はいつから虐め把握していたのですか?』
『本校のとある男子生徒が週刊誌に情報提供するまで私は存じ上げませんでした。申し訳ありません。』
『いじめの原因などは把握していたのですか?』
『加害者生徒によると、態度が気に入らないからと聞いていましたが、それ以上は…。』
『加害者の女子生徒はどのような子だったのですか?』
『えー…本校の華とも言える国際科に所属し、成績も学年トップで我々も大変期待しておりました故に、非常に残念に思っております。』
『その国際科の担任である女性教諭の「たかが生徒」発言が波紋を呼んでいますが、それに関してはどう受け止めているのですか?』
『えー…当該女性教諭は、本校の英語教科主任であって、職務能力も問題ありませんでした。なので、我々も大変困惑しております。』
『以前から生徒の好き嫌いが激しく、一部の学生から不満の声もあったようですが、それに関してはどう思われますか?』
『それは…その…。』
記者から問い詰められ、校長も教頭もたじたじである。そんな様子を真樹は何も言わずに見ながら朝食を食べ終え、準備をして家を出た。電車に乗り、成田駅に到着すると、いつものように改札口で慶が声をかけてきた。
「おはよう、真樹。」
「おう、おはよう。オニィ。」
「昨日はご飯おいしかったね。沙崙のご両親もいい人そうだったし。」
「そうだな。それに、八広や金町達もだいぶ追い込めたからな。」
「そう言えば…今日だっけ?」
「ああ。これが本当の最終決戦だと持っている。」
「…。負けないでね、真樹。」
「当たり前だ。俺を誰だと思ってるんだ?」
「そうだね。信じてるよ。」
そう話しながら、二人は学校に到着し、教室に向かったのだった。
その日の午後。真樹は授業には出ずに学校内にある広めの職員用会議室にいた。少し待っていると、制服を着た沙崙と両親である健豪と玉華も入ってきた。
「湯川君。昨日は来てくれてありがとう。」
「大丈夫だよ、陳さん。今日で全てを終わらせて奴らを成敗しよう。」
真樹は沙崙にそう言った。両親も真樹に感謝の言葉をかける。
「湯川君。本当にありがとう。こんな事にまで突き合わせて悪いね。」
「あなたみたいな人がいて良かったわ。本当にありがとう。」
「いえいえ、お礼なんて結構です。全ては終わってからです。」
真樹がそう言うと、立石が「ごめんなさい、遅くなりました。」と言いながら急いで会議室に駆け込んできた。それからすぐに、校長、教頭、茉莉奈、金町、更には裕也まで入ってきた。そう、これから被害者側と加害者側で話し合いが行われるのであった。校長と教頭は少し動揺しているが、金町、茉莉奈、裕也は不満そうな顔だった。会議室に緊張感が走る中、健豪が加害者サイドに向けて言葉を放った。
「私は娘の為になると思って、お宅への留学を後押ししました。なのに、沙崙がこんな仕打ちを受けていると知ってどれだけ胸が痛くなったか…。それに関してはどう思っているんですか?!」
「そ、それに関しては大変恐縮で…。」
「我々も事態の把握が遅れたのは大変申し訳なく思っております。」
校長と教頭は冷や汗をかきながら謝罪の言葉をかける。しかし、怒りが収まらない玉華は涙を流しながら言い放つ。
「うちの娘が何をしたっていうんですか?!この学校に馴染もうと必死で頑張っていたのに、こんなことするなんてあんまりです!」
玉華の言葉に校長と教頭はたじろいだ。一方で、不満げに言葉を放ったのは裕也だった。
「あーあ、うるせぇなぁバカ親風情が。つーかさ、そっちだって隠しカメラとか汚いマネして、こっちの生活狂わされてんだけど。プライバシーの侵害だよな、これ。お前らまとめて名誉棄損で訴えてやるからな。全員くたばれよ、マジで。」
裕也の言葉が起爆剤となり、茉莉奈と金町も不満の言葉を並べる。
「私はもっと英語を勉強して、自分をレベルアップさせてアメリカの大学に行きたかった。その為に留学生と言語交換して英語が上達するのをどれだけ楽しみにしてたのか分かる?そこの陳さんじゃ、何の役に立たない上にクラスのみんなに馴れ馴れしく愛想振りまいて、どれだけみんな迷惑してたか分かる?楽しくなるはずの学校生活に水を刺したのは陳さん、あんたよ!あんたなんか来なけりゃ良かったのに!」
「私は教師として、将来有望な生徒が最大限成長できるように教育する使命があります。八広さんは国際科で学力トップ、大和田君はサッカー部のエース故に卒業後の未来が非常に楽しみでした。だけどねぇ、湯川君!あんたがこの二人の経歴に泥を塗ったのよ!加えて私まで叩かれて出世街道ふさがれて人生滅茶苦茶よ!あんたみたいな学校の癌、すぐさま退学にしたいわ!校長、お願いします!」
「い、いやぁ、そう言われましても…。」
金町の言葉に校長は戸惑った。そして、裕也にも茉莉奈にも反省の様子が見られない上に、そっちが悪いから処分を受けるのは向こうだと言い張る始末だ。あまりにも滅茶苦茶な主張に健豪と玉華が言葉を失っていると、一番の被害者である沙崙が立ち上がって言った。
「分かりました。あなた達が1ミリも反省していないなら、私ももう許しません。私が苦しんだ分、あなた達にも地獄を見てもらいます。」
沙崙の言葉に対し、裕也と茉莉奈が小馬鹿にするように挑発した。
「ハッ!強がり言っちゃって。俺の将来とお前らクズの将来、どっちが大事か考えれば、擁護されるのは俺だからな。」
「裕也君の言う通りよ。あんたと湯川さえいなければこの学校に平和が戻る。人の将来滅茶苦茶にしたあんた達が地獄に落ちるべきよ!」
「って言ってるけど、湯川君。今の録画出来た?」
「ああ、ばっちりだ。にしても、凄いな。これ。」
沙崙と真樹の会話に加害者サイドは一瞬拍子抜けした。そして、話し合いが始まってからずっと黙っていた真樹が立ち上がって言った。
「同じ手に二度も引っかかる奴らのどこが有能なのか教えて欲しいね。言いたい放題言ってくれたおかげで止めを刺す道具が手に入ってよかったよ。」
そう言うと、真樹はブレザーを脱いで身に着けていた小型カメラを外した。先日、潜入捜査で沙崙が使用した物と同じで、登校前に飯田から渡されていたのだった。それを見た裕也は激高して真樹に掴みかかる。
「てめぇ、二度もこの俺の事を嵌めやがって。こんなもんぶっ壊しちまえば証拠は消えて、処分受けるのはお前らになるからな!」
「そんな自信満々でうらやましいねぇ。でも残念だったな。カメラを壊した所でオリエント通信のパソコンに接続されているからバックアップは万全だ。お前らの悪態は永遠に残り続けるよ!覚悟しとくんだな!」
真樹の言葉に校長と教頭は愕然とし、裕也は机を殴りつけ、茉莉奈は泣きだし、金町はただ無言で立ち尽くしていた。こうして、理不尽ないじめに苦しめられていた沙崙は真樹たちの手助けもあって大逆転勝利を収めることができたのだった。
おはようございます。
さぁ、この章もいよいよクライマックスです。
次回をお楽しみに!




