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真樹VS女子  作者: 東洋連合
Episode6 留学生を救え?!
95/333

第94話 騒ぎは尚も広がる

こんにちわ。

これからどんどん追い詰めていきます。

 大谷津学院の国際科は、現在いじめ問題によって悪い意味で注目を集めてしまっている。このニュースは日本国内だけでなく、沙崙の故郷である台湾は勿論、お隣の中国や韓国、香港といった東洋の主要国各地にまで広まり、大谷津学院は更に大々的なバッシングを受けてしまった。これもまた、オリエント通信が尽力したおかげなのだが、この日オフィスに出社していた飯田は普段の業務をしつつも、どこか浮かない顔だった。

「どうしたんだ、飯田?浮かない顔して。折角お前が書いた留学生いじめの記事、すごい反響呼んでいるのに。」

「いや、まだ解決してないさ。」

 心配そうに声をかけた同僚に、飯田はそう返した。飯田はコーヒーを一口飲んだ後に続ける。

「いじめた生徒やそれを無視した教師への処分が単なる厳重注意だけに終わったら軽すぎると思ってね。陳さんも気持ち良く通学できないだろうし、陳さんの為に体当たりで頑張った湯川君も浮かばれないでしょ。」

 飯田は加害者への処分の事を心配していた。現実問題でもいじめの加害者への処分の甘さが批判されていることもあるが、かつて真間子が嘘告白をネットで晒して、それがきっかけで暴力団がらみの事件が発生した際、真間子は謹慎と指定校推薦取り消しの処分を受けたが、処分が軽すぎると一部で批判されていた。しかも今回の首謀者が、学校期待の星である茉莉奈と大谷津学院の華とも言われる国際科で担任及び英語の教科主任を務める金町なので、学校側が再び軽い処分で済ませる可能性が十分にあった。

「確かにあり得るな。でも、ここまで騒ぎが広がって、そんなことできないだろ。」

「そうだといいんだがな。」

 そう言いながら、飯田は仕事を続けた。今回の事件が全て解決する事を願いながら。


 一方、大谷津学院の2年国際科はすっかり雰囲気が重くなってしまった。主犯の茉莉奈は勿論、クラスの生徒達はまさか自分達がしたことがこんな特大ブーメランになって帰ってくるとは思わなかったのだ。連日マスコミから問い詰められたり、テレビなどで自分たちの事が批判されているのを見てしまえば、元気がなくなるのも無理はない。そしてこの日も、すっかり元気をなくした茉莉奈が登校してきた。

「茉莉奈、おはよう。」

「大丈夫?ニュースで茉莉奈の事めっちゃ叩かれてるけど。」

「うちも、親からめっちゃ怒られた。最悪。」

 友人たちがそう言うと、茉莉奈は溜め息交じりに応えた。

「私も親からめっちゃ怒られたし、SNSも炎上したし、ニュースで自分が映ってる映像見る度に胃が痛くなるわ。どうして、どうしてこんな事に…。」

 茉莉奈は机に座ると、頭を抱えながらそう言った。すると、教室に誰か入ってきて、空気がまた少し変わる。

「「「!!!!!」」」

登校してきたのは沙崙だった。彼女は普通の様子で足を踏み入れて自分の机に向かう。すると、その途中で茉莉奈と目があったので声をかけた。

「おはよう、八広さん。」

「…。」

 茉莉奈は気まずくて、沙崙に何も返すことができなかった。そして、沙崙は落ち着いた様子で席に座ると、心の中でこんな事を呟いた。

(随分参っているわね、八広さん。でも、いっぱい苦しみなさい。私が受けた苦しみはもっと辛かったんだから。)

 沙崙は真樹とオリエント通信と言う強力な味方を得たことにより、すっかり元気を取り戻して気持ちに余裕が生まれていた。一方茉莉奈は自業自得とは言え、世間の批判を集めてしまったが故、心がもう壊れかけてしまっていた。


 放課後、教職員用の玄関の外では立石がマスコミからインタビューを受けていた。

「あなたが飛び降りた留学生と、それを助けた子を病院に連れて行ったんですね?」

「ええ、最初何が起きたか分からなくてびっくりして、でも放っておけないのでタクシー呼んで病院に連れて行きました。」

 立石は、沙崙が自殺未遂を起こして、それを捨て身で助けた真樹の事を話していた。インタビュアーは更に質問を続けた。

「その時に留学生が遺書を持っていたんですね?」

「はい。中にはあの子がどんないじめを受けていたか詳しく書かれていましたが、読んでいて胸が痛くなりました。あの子の担任が何もしてくれなかったみたいなんで、私にできることがあれば助けた言ってその時思いましたね。」

 立石は少しだけ金町に触れた。すると、別の記者が金町に関する質問をする。

「あの子の担任の先生ってどんな人なんですか?」

「何でしょう…面倒くさがりの割に自分ルールが多いって言うか…あとは気に入った生徒を良く贔屓して嫌いな生徒には冷たい所はありましたね。」

 立石もやはり金町の事は良く思っていなかったようだ。こうして立石へのインタビューは終わり、後程ニュースで放送されたのだった。


 報道陣が次に向かったのは野球部のグラウンドだった。丁度真樹達野球部が練習していたのだったが、沙崙の自殺未遂の時は部員全員が飛び降りる所を目撃しており、尚且つ真樹は沙崙を助けた張本人だ。報道陣はインタビューを申し込み、真樹は関屋に断りを入れてから報道陣の前に現れた。

「あなたが飛び降りた留学生を助けたのですか?」

「そうです。まぁ、突然過ぎてびっくりはしましたけど。」

 真樹は顔色一つ変えずすらすらと答えた。更にインタビューは続く。

「留学生の子とは元々親交があったのですか?」

「僕は普通科で向こうは国際科なのでそう言うのは無かったですね。ただ、一度見かけたときは元気が無さそうではありました。」

「虐めていた首謀者の女の子ってどんな子だったか分かりますか?」

 ある記者が茉莉奈に関して質問した。真樹は少し表情を曇らせながら答えた。

「美人で成績だけは良かったですけどね、それを鼻にかけて気に入らない人を見下す所はありました。自分も結構嫌み言われたりしたんで、悪い印象しかありませんでしたね。」

「あと、国際科の担任の先生について何かご存知ですか?」

 別の記者が今度は金町の事を聞いた。

「あの先生は…僕は嫌われてたんであんまり関わりたくは無かったんですけどね。結構自分が正しいみたいなの押し通すんで、正直やりづらかったです。」

 真樹は金町の事は嫌いだったが、金町の方も真樹の事は嫌いだった。金町はあの性格なので、真樹みたいな男子が成績トップを取ることを面白くは思ってはいなかった。こうしてインタビューが終わり、真樹は練習に戻って行った。そして、真樹は最後に少し呟いた。

「よし。八広達に批判の視線が集まっている。処刑完了の日は近いぞ。」

 茉莉奈達にひと泡吹かせられ、真樹は少し微笑みながら練習に戻ったのだった。

こんにちわ。

ささ、真樹たちの追い込みが加速しています。

次回もお楽しみに!

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