第333話 ボロボロになっても…。
こんばんは。
エピソードもいよいよ終盤です!
真樹が女性型アンドロイドであるヴィーナス01に襲撃され、仙台まで逃げてきてから2日目の朝。真樹は体に発信機を埋め込まれたせいで、逃げた後もすぐに場所を特定されて再び襲撃された。そして、ヴィーナス01が仙台市街地で派手に真樹を襲撃したことにより、すぐに通行人に通報されたことによって今回の剣が多くの人物に知られることになった。ニュースでも取り上げられ、真樹のクラスメートである慶たちは勿論、台湾に住んでいるかつて留学していた沙崙にも知られることになった。友人たちが真樹の現状に驚きつつ身を案じる中、真樹は一人でひたすら山の中を逃亡していたのだった。
「はぁ、はぁ…。くそっ。体が痛くなってきた。」
息を切らしながら山道を歩く真樹。既に制服は所々裂けており、そこから赤い血が滲んだ傷口が見えている。そして、前日の疲労も重なり眩暈も起こし始めていた。それでも堀ノ内たちに殺されたくないという執念だけで逃げ続けていた。しかし、彼の心は不安でいっぱいだった。
「さっきは上手く追い払ったが、追いつかれるのも時間の問題だ。次に失敗したら間違いなくもう終わりだ。何とかせねば。」
真樹としては、かなり昔の事で一方的に逆恨みされて、そして殺されることだけは許されなかった。肉体的にも精神的にも限界が近づいている中、真樹は気力だけで歩き続けていた。
「さっさとあんな悪趣味なロボットを破壊して、あのバカ女4人を豚箱送りにしなければ。そして、早く生きて千葉に帰らなければならん。」
追い詰められながらも、まだ諦めていない真樹。無事に帰りたい…ただそれだけが今の真樹願いであった。
一方その頃、堀ノ内達も真樹とヴィーナス01の事を発信機とモニターを頼りに追跡していた。
「何よ、湯川の奴!チェーンソーで反撃するのはともかく、私の可愛いヴィーナス01の顔をハンマーで殴るなんて!本当にサイテーな男よね!」
あと一歩の所で真樹に逃亡されたことに対し、堀ノ内は苛立ちを隠せなくなっていた。隣を歩く長沢も頷いた。
「ホント!いくらロボットって分かってても、可愛い女の子の顔してるヴィーナス01を躊躇いもなく殴るのは異常よね!本当に女の事が嫌いみたいね。」
更に、三浦と津久井による真樹への悪口合戦も止まらない。
「そうよね。いくらモテなくても、女性には優しくすべきよね!ああやって女性を見下して喧嘩売るから女性から嫌われるのよ!湯川は!」
「湯川みたいな社会の産業廃棄物に、一般常識を求めること自体が無謀。さっさと始末して、その後に女のくせに湯川の味方をする鬼越慶を処刑することが最善。そうして世界平和を導くまで、あともう少し。」
4人とも、真樹を早々に始末したいという考えで頭がいっぱいになっていた。
そして同じ頃、ヴィーナス01も逃亡する真樹の事を追っていた。
「私としたことが。あんな古典的な道具に殴り飛ばされるとは。」
ヴィーナス01のAIは非常に優秀であり、生身の人間に限りなく近い感情素子が搭載されているだけでなく、スーパーコンピューター顔負けの演算能力も備わっている。事前に真樹のデータを集めて、人物的な部分を一通り計算した結果、本来であれば襲撃初日におおよそ3分で真樹を殺すことが出来ていたはずだった。しかし、初日に不意打ちを食らって取り逃がし、2日目を迎えても体に怪我をさせるのが手一杯なのは完全に計算外だった。
「湯川真樹は私の計算を完全に凌駕している。でも、このまま作戦が失敗したら私を作ってくれた希美たちに申し訳ないわ。」
優秀過ぎるAI故に真樹に翻弄されている事への焦りと、2度も失敗したことに対して申し訳なさを感じているヴィーナス01。だが、彼女も真樹を死刑することに関しては全く諦めていなかった。
「湯川真樹は恐ろしい奴。希美たちが始末したがるのも分かる。だからこそ、作戦を成功させなければ意味がない。そのために私は生まれたんだし。」
そう言いながら彼女は、発信機の電波を受信しながら真樹の行方を追い続けた。
「さっきの攻撃でカメラにノイズが入っているけど、発信機の追跡は問題なし。動きが遅くなっているということは湯川真樹はもう限界。今度こそ仕留める。」
お互いダメージを受けているとはいえ、今の状況では真樹が圧倒的に不利な状況である。真樹とヴィーナス01。その最後の戦いが、今始まろうとしていた。
こんばんは。
何とか年内に本エピソードを終わらせ、新しいエピソードを書ける状態で新年を迎えたい限りです。
寒くなっていますが、読者の皆様も体にお気をつけて年末をお過ごしください。
それではまた次回。




