第332話 皆が知った時
こんにちは。
今年もあと半日を切りました。
-台湾台南市 現地時間10:00-
「あー、一時間目終わった。トイレ行こ。」
ここは台湾。そして、体を伸ばしながらそう言ったのは、かつて真樹の学校である大谷津学院に1年間交換留学に来ていた陳沙崙である。彼女は日本での留学期間を終え、現在は台湾の高校に戻って普段通りの生活を送っている。この日も何事もなく1時間目の授業を終えて、お手洗いに向かった。そして、出てきた後にふとスマホを起動させる。
「何か面白い事ないかな?ん、なにこれ?」
沙崙はふとネットニュースの国際のカテゴリーの部分に目が行った。かつて留学していた日本に関するニュースがトレンドで上位に挙がっていたからだ。
「日本の事?ちょっと気になるわね。」
そう言って沙崙はページを開く。すると、ニュース映像がページに添付されていた。
『本日、台湾時間午前7:30頃、日本の宮城県仙台市内で刃物と銃を持った女が、若い男性を襲撃するという事件が発生しました。調査によると、仙台市の路上にて、10代と思われる男性が武装した少女によって銃撃されながら逃げる所を大勢の通行人が目撃。少女は執拗に少年に対して所持していたライフルを発砲していた模様。尚、通報を受けた日本警察によると、銃と剣を持った少女と追いかけられている少年の身元は分かっておらず、現在は双方とも行方不明との事。警察では、引き続き捜査を進めるとの事です。』
アナウンサーの言葉と共に流れる映像を見ていた沙崙だったが、それを見た瞬間彼女は驚きを隠せなかった。
「え…ちょっと待って?!これ、真樹?!」
彼女の言う通り、そのネットニュースは間違いなく仙台に逃げてきた真樹と、彼を抹殺すべく追いかけてきたヴィーナス01の事だった。彼女は傷だらけの真樹がヴィーナス01から必死に逃げている所を見て驚きを隠せなかった。
「ちょ、ちょっと!何が起こっているのよ!何で真樹がこうなっているのよ!」
そんな沙崙を見た同級生たちが、気になって寄ってきた。
「どうしたの、沙崙?」
「何か面白いニュースでもあった?」
そんな同級生たちに、沙崙は動揺した様子で説明した。
「私が留学してた日本の学校の友達が、銃と剣を持った女に襲われてるの!しかも、千葉に住んでるはずなのになぜか遠く離れた仙台で!」
その話を聞いた同級生たちは戸惑い始めた。
「え、ちょっと…どういうこと?」
「銃と剣を持った女の子とか、意味わかんないし!」
「沙崙の友達が襲われてるって、一体何なの?」
同級生にそう聞かれたが、沙崙の方もいきなりすぎて訳が分からなくなっていた。
「し、知らないわよ。寧ろこっちが知りたいくらいだし!」
そう言った沙崙だが、一番気になっていたのは真樹の身の安否だった。
(真樹…何でそうなったかは知らないけど、絶対そんな変な女に殺されちゃだめよ!お願い…生きて帰ってきて!)
そう思った沙崙は、その日ずっと真樹の身の安全の事が頭から離れなかったのは言うまでもない。
そして、所変わって大谷津学院。休憩時間にスマホを見ていた杜夫が慌てた様子で言った。
「お、おい!みんな来てくれ!」
杜夫の声に反応した慶、伸治、武司、美緒が集まった。そんな一同に杜夫が動揺した様子で言った。
「や、やばいことになっちまった…。」
それは動画付きのネットニュースだった。そこには勿論真樹がヴィーナス01に襲撃され、逃げている所が動画付きで載せられていた。
「え、ちょっと!これ真樹じゃん!しかも、場所は仙台って一体どういうこと?!」
慶は驚きを隠せない様子でそう言った。そして、美緒も珍しく慌てている様子だ。
「な、何よこれ…?!湯川君、学校無断欠席したと思ったら、何で仙台にいるのよ?っていうか、この女の子誰?」
そして、伸治と武司も驚きを隠せなかった。
「よく見たら、この女の子…腕が武器と一体化してないか?気のせいかもしれないが…。」
「いや、間違いない。もしかしたら人間じゃないかもしれないぜ。だとしたら、真樹が危ないぜ!」
ヴィーナス01の攻撃を必死でよけながら逃げる真樹の動画を、慶たちは息を飲んで見守るしかなかった。
そして、当事者である真樹はボロボロになりながら必死で逃げていた。
「はぁ、はぁ…。さっきは何とか追い払えたけど、俺の体に発信機が埋め込まれている以上、追いつかれるのは時間の問題だな。」
息を切らし、体中傷だらけになりながら山中を歩く真樹。先ほどは、土木作業員の備品であるチェーンソーとハンマーを拝借して何とかヴィーナス01を追い払った真樹だが、前日から逃げ続けていた影響で、肉体的にも精神的にも、最早限界を迎えていた。
「何とかアイツを、完全に破壊できる方法はないのか?」
思うように体も動かず、頭も上手く働いていない真樹。しかし、殺されたくないという気持ちだけは持ち続けて、歩き続けるのであった。
どうも。
果たして真樹は生きて仙台から戻れるのか?
次回もお楽しみに!




