第330話 かつての劣等生
こんばんは。
年内で本エピソードを終わらせるために、ハイペースで書きたいと思います。
過去の恨みから、真樹を心から嫌っている堀ノ内希美とその仲間たちが完成させた女性型アンドロイド、ヴィーナス01を使って真樹を始末する目的のT-計画。それが正に今発動され、真樹は襲撃され、学校を無断欠席してまで仙台まで逃亡してきたのだった。しかし、体に発信機を埋め込まれてしまったため、すぐに場所を特定され、見つかった真樹は、ヴィーナス01の攻撃を避けながら朝の仙台市街を傷だらけで逃亡している最中であった。
「いけー、ヴィーナス01!湯川を殺せー!」
堀ノ内は真樹とヴィーナス01をモニターで見届けながらそう言った。それに対し、長沢が頷きながら同調する。
「湯川みたいに、女から不要とされた男はすぐに死刑にすべきだと私も思うわ。実際、不愉快な思いしたわけだし、アイツも犯罪者同然よね。」
長沢と堀之内は、小学校時代を思い出していた。
-10年前、都内の小学校-
「湯川君、あなたはこんな問題もできないの?この程度の問題出来ないのあなただけよ。やる気あるの?」
「ご、ごめんなさい。」
当時小学校2年生だった真樹は、問題を当てられても答えられず、女性教師から叱責されていた。それに対し、堀ノ内が手を挙げて言った。
「先生ー!湯川君がいると、授業が進みません。私は勉強したいのに、本当に迷惑です。」
それに対し、長沢も続いた。
「私も同じです。もう、湯川君と一緒に授業受けたくありません。正直邪魔です。」
それに対し,女性教師は頷きながら言った。
「湯川君。もう帰ってくれない?あなたがいると、他の子たちの邪魔でしかないから。っていうか、もう学校来ないでくれない?私もあなたに授業するのは時間の無駄だと思うから。」
女性教師にそう言われた真樹は、泣きながら荷物をまとめて教室を飛び出した。それを見た、堀ノ内や長沢だけでなく、三浦と津久井も喜んだ。
「やったー、湯川が帰った!これで安心して授業が受けられる!」
「あいつがいるせいで、いつも授業が止まってたもんね。」
さらに、三浦と津久井もそれの同調する。
「あいつみたいな馬鹿と、私達は頭の出来が違う。同じクラスにいるだけで恥だわ。」
「同感。湯川は人としての価値無し。さっさと退学か死刑にすべき。」
そして、女性教師は彼女たちの言葉に頷きながら機嫌を直しながら言った。
「そうね。邪魔者はもういなくなったし、授業再開するわよ。」
それからしばらくの間、真樹は学校に来なくなった。そして、数か月後に白い目に耐えながらも学校に復帰し、4年生に上がる頃にはリトルリーグのチームに入団したこともあって肥満体系も少しずつ痩せ、勉強にもついていけるようになった。しかし、それが増々女性教師や堀ノ内の反感を買うようになった。
「湯川君。あなた、最近点数はマシになったと思うけど、調子乗らないでね。いくら頑張った所で、私の中では糞馬鹿な問題児であることに変わりないから。」
「そうですか。好きにしてください。」
4年生の時、テストを返された真樹は女性教師からそう言われたものの、悪口を言われ過ぎて耐性が出来てしまった。そして、不愛想な様子でそう返して増々教師から嫌われたのであった。そんなある日、休み時間に堀ノ内、長沢、三浦、津久井が4人で作った発明品をクラスメートに披露している時…。
「見てー、私達でロボット作ったの!すごいでしょー!」
「結構自信あるのよ!見て、この動き!」
「ここまで凄いロボット作れるのは私達だけよー!」
「私たちは、世界一のロボット発明家になる。みんなもとくと見るがいい。」
堀ノ内達は当時から秀才で特に理科に関しては秀でていた。そして、この日は4人で作った遠隔操作式の小型ロボットを教室で披露していた。ロボットは堀ノ内の操作によってキビキビと動き、他のクラスメートたちからは拍手されていたが、真樹だけは違った。
「そのロボット、本当に大丈夫か?ボディから異音も聞こえるし、発熱しているぞ。」
そう指摘した真樹だったが、堀ノ内と長沢は反論した。
「うるさい!馬鹿湯川は黙ってろ!」
「お前に私たちの発明の価値なんか分かるはずがない。学校来るな!」
そう言ったものの、その直後にロボットに異常が発生。突如頭から煙を出したかと思えば、体中から火花を散らしながら暴走し、そのまま壁に激突して動かなくなってしまった。その様子を見て、三浦と津久井が悲鳴を上げながら嘆いた。
「何で!私たちが作った、完璧なロボットだったのに!」
「あり得ない。これは何かの間違い。」
そんな状況を見て他のクラスメートたちはゲラゲラと笑い、真樹は呆れ顔で言った。
「ほら、見ろ。だから言ったのに。嫌いな奴だからって忠告を無視した末路だ。」
そう言って真樹はその場から立ち去り、堀ノ内たちは真樹に対する憎しみを増した。その後、関係は険悪のまま皆小学校を卒業し、真樹は卒業と同時に東京から千葉に引っ越したのだった。
そして今4人は開発したロボットで10年越しに真樹に復讐しようとしている。ヴィーナス01は銃撃の手を緩めず、真樹を追い続けている。その様子を見て、三浦が少し心配そうな表情で言った。
「ねえ、何か攻撃よけられたせいであちこち壊れているけど大丈夫よね…?」
ヴィーナス01は攻撃の手を緩めないものの、止めを刺すには至らず、町の建物等が銃撃を受けて所々破損している。それに対し、津久井が真顔のまま言った。
「大丈夫。私たちは犯罪者を取り締まっているだけ。避ける湯川が悪いから、始末した後に湯川の家族に修理費全額請求すればいい。全部湯川が悪い。」
そんなやり取りを尻目に、ヴィーナス01は攻撃の手を緩めないまま真樹を追い続ける。
「待て、湯川真樹!逃がさないわよ!」
「くそっ!このままじゃ巻き添え食らって関係ない被害が出る!早く人気が少ない郊外に出れれば…。」
ヴィーナス01の追跡を辛うじてかわしながら、真樹はボロボロになりながら必死に逃げ続けるのであった。
こんばんは。
今年もあとひと月を切りました。
エピソードの結末を考えつつ、新しいエピソードの企画もするのは大変ですが頑張ります。
それではまた次回!




