第323話 湯川真樹、調査記録
こんにちは。
どんどん冷え込んでいるので、風邪ひかないように気を付けます。
湯川真樹は大和田家との壮絶な死闘に勝利し、平和な学校生活が送れる…と思っていたが実際はそうではなかった。真樹の事を毛嫌いしている理系女子、堀ノ内希美を筆頭に長沢唯奈、三浦有紗、津久井奈々の合わせて4人が真樹を始末すべく、T-計画という物を始動。女性型アンドロイド、ヴィーナス01を開発し、真樹抹殺の為に動き出していたのだった。
-10:15 大谷津学院3年A組の教室-
「じゃあ、湯川。前に出てきてこれを解いてみろ。」
「了解です。」
数学教師でもあり、野球部の顧問でもある関屋が真樹のクラスで授業を行っていた。関屋は真樹を当て、呼ばれた真樹がチョークをもってスラスラと数式を書き込んでいる。
「出来ました。」
「うむ。正解だ。さすが我が部の名一塁手だ!」
真樹を奏褒め称える関屋。真樹は回答を終えると、表情一つ変えずに自分の席へ戻る。その様子を、少し離れた場所にいるヴィーナス01も目に搭載されている望遠カメラ機能で監視していた。
「データ収集。湯川真樹は愛想が悪く、女性から嫌悪されているが、学業に関しては極めて優秀である。」
ヴィーナス01はそう言って真樹のデータを電子頭脳へと保存した。それからも調査は続けられ、昼休憩の時間になった。
-12:00 同教室内-
「おーい、真樹!飯にしようぜ!」
「ああ。」
杜夫にそう声を掛けられ、真樹は鞄から昼食を取り出した。その後、慶、伸治、武司、美緒といつもの面々が集まった。そんな時、真樹が慶の巨大な重箱を見ながら言った。
「オニィ。何だそのデカい弁当は?」
「大会近いからスタミナ付けないとって、お母さんが作ってくれたんだ!やっぱりいっぱい食べれるのって幸せだよね!」
そう言いながら、巨大な弁当を次々と食べ進めていく慶。すると武司と伸治も話し始める。
「大会か。俺達3年だから、今年で最後か。」
「夏の大会終わったら受験勉強かぁ。ああ…先が思いやられる。」
武司と伸治の話を聞いて、杜夫と慶もびくりとする。
「やべ…。俺も忘れてた。どうしよう?」
「僕も…。大会の事ばかりで、受験勉強全然してなかった…!」
そんな一同を見て、今度は美緒が口を開く。
「全く、だらしないわね!」
そう言った美緒は凛とした表情で胸を張りながら続ける。
「部活の日は部活、練習がオフの日は受験勉強すれば問題ないじゃない。何事も切り替えが重要よ!」
そう言い切った美緒に真樹が真顔で言った。
「流石学級委員長は上手い事両立しているな。」
「湯川君はもうこれ以上無茶なことしちゃだめよ!」
「好きで無茶してるわけじゃないんだが…。」
美緒にそう言い返した真樹。その様子も、ヴィーナス01に監視されている。
「大谷津学院は生徒の7割が女性だが、湯川真樹が会話した女子生徒は鬼越慶と菅野美緒の2名のみ。半面、同性の友人には比較的恵まれている。」
こうして、ヴィーナス01のデータ収集は午後も続けられ、放課後になった。
-16:00 大谷津学院グラウンド-
「よし、内野手の1年は全員守備に付け。今からノックを始める。」
放課後、この日は真樹達野球部の練習だったのだが、真樹は1年生の内野ノックを担当することになった。人数が少ないとはいえ監督の関屋だけで全員の練習を回すのは難しいので、3年生が下級生の練習を指導するのはよくある事である。真樹はノックをしながら1年生に指示を出した。
「サード、反応が遅い。もっと早く動いていい。」
「はい!」
「セカンドとショートはもっと前進していいぞ。」
「すみません!」
「分かりました!」
ノックをしながら1年生に的確に指示を出す真樹。その様子を武司と伸治がキャッチボールをしながら微笑んだ様子で見ていた。
「真樹の奴、ちゃんと先輩としての仕事できてんじゃないか。」
「女性から嫌われるところを除けばいい奴なんだけどな。」
「そう言っても、真樹に非が無い場合の方が多いけどな。」
「だよな。みんなほぼ八つ当たりだよ。」
真樹の事を見ながらそう話す伸治と武司。部活がある生徒以外は皆帰宅したが、ヴィーナス01は真樹の監視をまだ続けていた。
「湯川真樹は運動神経も良く、所属する野球部では主力として活躍。尚、昨年は女性客から物を投げられるなど、やはり野球でも女性から嫌われている。…。データ取得完了。これより帰還する。」
そう言ってヴィーナス01は真樹のデータを取り終えると、堀ノ内たちに報告すべく、その場から姿を消した。真樹自身は、再び自分の身に危機が迫っていることにまだ気が付いていない。
こんにちは。
真樹のみに再び危機が!
果たしてどうなるのか?
次回もお楽しみに!




