第320話 平和の後の危機
こんばんは。
今月初投稿です。
湯川真樹はクラスメートの大和田裕也の下らないプライドと一方的な逆恨みによって、命を狙われた。しかも、裕也は世界最大級の大財閥である大和田コンツェルンの御曹司。圧倒的な権力と財力を前に、真樹の勝ち目はないと思われた。しかし、一度怒った真樹が黙っているわけもなく、反大和田勢力を集めてあっという間に大和田家の悪事を世間に暴き、最終的には財閥を解体させるまで追い込んだのだった。因みに、大和田コンツェルン総帥の圭一郎と執事の山本には死刑判決が下され、美千代夫人も裁判で禁固刑20年の判決が出た。そして、裕也はというと今まで何をやっても許してきた前大谷津学院理事長の上野と校長の日暮里とは違い、水戸大学に買収後に就任した新理事長の笠間が許すわけもなく、即刻退学及び除籍処分が下された。真樹にとって最大の天敵がいなくなった今、彼にとって学校が少しずつではあるが居心地がいいものになりつつあった。
ある日の休日。
「はぁはぁ…。オニィ、この間の自主トレ行けなくて済まん。色々あってな。」
「ふぅ、ふぅ…。全然いいよ。今日は真樹来れたし、あんなことがあったんなら仕方ないよ。」
広い市民公園の中を真樹と慶が息を切らしながらランニングしている。普段二人はよくこうして自主トレを行っているが、この日はいつもと違う所があった。
「全く。湯川君は相変わらず無茶ばかりして。何であんな考えが出るか不思議で仕方ないわ。」
そう言ったのは学級委員長でバレー部エースの美緒である。彼女も今、真樹と慶と共にジャージを着て走っている。圭一郎が逮捕された時に慶と美緒が一緒にトレーニングし、その後美緒の家で逮捕のニュースを知ったのだが、それ以降自主トレには美緒も加わることになった。3人でしばらく走った後、きりのいい所で休憩することにした。
「おーっす、お疲れ!ほら、水持って来たぞ。」
「サンキュー、杜夫。」
水を差しだした杜夫に礼を言う真樹。この日はカメラで動きのキレなどを確認するために、彼にも来てもらった。杜夫は慶と美緒にも水を差しだすと、カメラを持ちながら言った。
「みんないい走りだな。後で映像好きなだけ見ていってくれ。特に鬼越はな。」
「うん、ありがとう杜夫。」
慶は杜夫に礼を言った。その後、3人は様々なウェートトレーニングを済ませた後、練習を終えて近所にあるファミレスに来ていた。
「今日はいっぱい運動できたわね。それにしても、休みの日もあそこまでトレーニングするなんて、湯川君も慶もやるわね。」
冷製パスタを食べながら美緒がそう言った。店内は既にランチタイムが過ぎているせいか、そこまで混んでいる様子はない。
「まぁな。どっかの馬鹿が逮捕されたおかげで、自主トレにも身が入るというわけだ。」
ハンバーグを食べながら真樹が真顔でそう言った。因みにどっかの馬鹿というのは紛れもなく大和田裕也である。
「大和田君も大和田君だけど、家と繋がりがあるからって何でも許していた前の理事長と校長も問題だよね。本当に身売りされてよかった。」
特盛カツカレーを頬張りながら慶がバッサリとそう言った。それに対し杜夫もタコライスを食べながらうんうんと頷きながら言った。
「まぁな。警察の邪魔して逮捕された取り巻き女子も退学になったし、他の奴らもすっかり大人しくなっちまったもんな。」
杜夫の言う通り、新理事長の笠間は取り巻き女子達にも容赦はなかった。そして、それ以外の裕也ファンの女子たちは魂が抜けたかのように大人しくなっている。更に美緒も厳しい表情で続いた。
「サッカー部も大和田君の危険プレーと、賄賂出して審判買収していることがバレて今年度対外試合禁止になったわね。他の3年生や下級生が可哀想ね。」
無論、裕也の危険プレーや審判買収の件も真樹が世間に暴露した。結果、裕也は他のチームメイトに大迷惑をかけてしまったのだ。それに対し、真樹は容赦なく言った。
「俺は散々あいつに癌細胞呼ばわれされてきたが、アイツの方が癌細胞だったな。これで今度こそ学校は平和だ。」
バッサリと裕也を切り捨てた真樹。その後、4人は昼食を取りつつ、杜夫のカメラの映像を確認するなど、何事もなく平和に休日を過ごしたのだった。
-同時刻、都内某所-
「集まってくれて、ありがとう。適当に座って。」
そう言ったのは高校生くらいの少女だった。少女は入ってきた3人の友人と思われる少女を招き入れて、薄暗い部屋の奥に座った。
「早速だけど、話しを始めるわ。」
少女は3人に対して真剣な顔でそう言った。すると、3人が少女に質問する。
「ねぇねぇ、何の話?」
「いい報告が出来るって感じ?」
「聞きたい、聞きたい。」
ワクワクしている3人に対し、少女は真剣な表情で続ける。
「学問には文系と理系があるけど、今の時代も理系はやはり男が圧倒的に多い。でも、女が活躍できないわけではない。現にここにいる4人はみんな女だけど理系分野で優秀な成績を取っている。」
どうやらここにいる4人の少女は全員が理系のようであった。少女は立ち上がって言った。
「そんな私たち理系女子たちは、その頭とか学力を世の為に使わなければならない。無論、世の他の理系女子たちが肩身の狭い思いをしたいためにも、女性が平和に過ごす為にも。」
そして、少女は更に大きな声で言った。
「そう、私達の頭脳と技術で世の女の子の為になることをしなければならない。そのために、まずは女の平和を脅かすものを排除が最優先よ。ついにそれができる目途が立ったわ。みんなはもう、その排除対象が何かは分かるわよね?」
少女がそう言うと、他の3人は声を合わせていった。
「「「勿論よ!湯川真樹!」」」
真樹の名前が出た。どうやら4人とも例にもれず真樹の事が嫌いの様だった。そして、少女は自信満々に胸を張りながら言った。
「そう!全世界の女性の敵、湯川真樹を本格的に消す方法をついに編み出したわ!その名も…『T-計画よ!』」
どうやら、真樹にとっての完全平和はまだまだ遠いようだった。
こんばんは。
忙しくて、投稿が遅れました。
今月は投稿頻度が下がるかもしれませんが、今後もよろしくお願いします。




