第316話 大和田コンツェルン大敗北
こんばんは。
9月最初の投稿です。
大和田コンツェルンは今、大パニックに陥っていた。まず、特許を横取りする為に坂田工業社長を殺害した山本が、余罪も全てバレたうえで逮捕され、更に会長夫人である美千代女史もテレビ局員に対する脅迫や不当解雇、名誉棄損などで被害者から訴えを起こして逮捕された。このようなニュースを聞いた大和田裕也と、その父で財閥総帥である圭一郎氏は焦りを覚えていた。
-二人が逮捕された日の夜 大和田家にて-
「おい、親父!どうすんだよ!山本とお袋が逮捕されちまったじゃないか!」
「私もまさかこんなことになるとは思っていなかった。そう、怒るな。裕也。」
身内が逮捕され、今まで隠していた大和田家の悪事も全部バレてしまったことで裕也は圭一郎に詰め寄っていた。そんな圭一郎氏は平静を装って裕也を宥めようとしていたが、内心かなり焦っている。
「でも、まあ。うちは大和田コンツェルンだし、金積めば全部許してもらえるよな、親父!」
「ああ。あの二人にはもう少し我慢してもらって、ほとぼりが冷めたら保釈金積んで家に戻そう。それと、お前が今までにやった、万引き、転売、恐喝、試合中のラフプレーでの暴行等を金で相手を黙らせたこともバレる訳にはいかんからな。」
「確かに。まぁ、でも。俺みたいな完璧男子には当然の権利だし!」
「とにかく大人しくしているんだ。大和田コンツェルンをこんなつまらんことで終わらせるわけにはいかん!」
「さすが親父!」
そんな会話をしていた二人。先ほどの会話の中にもあったように、裕也はサッカーの試合のラフプレー以外にもかなり悪事に手を染めている。立ち読みを注意されたコンビニに仕返しとばかりに万引きをし、自分も金を稼ぐことを覚えたいと、海外からの中古ブランド品密輸し、3倍の値段をつけて不正に転売するなど数えきれない悪事をやらかしている。そして、それがバレるたびに圭一郎が謝罪金という名目で大金を積んで相手を黙らせていたのだった。今回も山本と美千代に保釈金を積めばどうにかなる。しかし、もう手遅れになっていることを二人は気づいていなかった。
-月曜日-
「お、載ってる載ってる!」
真樹は通学中の電車の中で、スマホを見ながらそう呟いた。真樹はネットニュースを読んでいたのだが、勿論その記事は山本と美千代が逮捕された事であった。世界有数の財閥の関係者が逮捕されたこのニュースは連日のように報道され、今や世間はこの話題で持ちきりになっている。記事を読んだ真樹はスマホをポケットにしまうと、またぼそりと呟いた。
「残り二人か。まぁ、もう逃げられないけどな。」
そんなことを考えながら真樹は電車に乗ってそのまま成田駅を目指した。電車が駅に到着すると改札を出た所でいつものように慶が挨拶してきた。
「おはよう、真樹!」
「おう、オニィか。おはよう。」
何気ないいつもの光景。そんな中、慶がふと真樹にあのことを聞いた。
「真樹、昨日美緒と一緒にテレビ見てたら、大和田君の執事とお母さんが逮捕されてたのを見て…。あれやったの、真樹だよね。」
「なんだ。もう気づかれたか。オニィには敵わんな。」
「僕、褒めているんだよ。だって、真樹の家に火を点けるなんて酷すぎるし、大和田君のお母さんも独裁者って感じがして何か嫌だったし。ざまぁみろって感じ。」
「あいつらには昨日刑務所で会ってきた。プライドをズタズタにされてげっそりしていたぜ。」
「でも、大和田君と大和田君のお父さんがまだいるんじゃ、また何か仕掛けてくるんじゃない?」
「今に分かるぜ。もう手遅れだってな。」
そうこう話しているうちに二人は学校に到着。すると、二人の前方がやけに騒がしくなっていた。気になって近寄ってみると、先に到着していた裕也が取り巻きの女子たちに囲まれて何やら話している。
「裕也君、大丈夫?」
「お母さんと執事さんが逮捕されて可哀想!」
「あんなつまんないことで逮捕する警察が頭おかしい!」
「私たちはいつだって裕也君の味方だよ!」
「裕也君の力で、生意気な奴らはみんな消しちゃって!」
取り巻きの女子たちは、大和田家のお家騒動に関して裕也に同情していた。そんな裕也も女子たちに宥められてかなりご機嫌である。
「ありがとう。みんなが慰めてくれたおかげで元気出たよ!そうだ、世界一の美男子で大和田コンツェルンの跡取りの裕也様だ!糞警察共なんかに負けてたまるか!」
どうやら彼は自分だけは大丈夫だと考えて疑っていない様だった。そんな彼を慶と真樹は冷めた目で見ている。
「大和田君、ずいぶん余裕だね。どこからあの自信が湧いてくるのか本当に分からないよ。」
「だが、アイツのビッグマウスも今日で聞き納めだ。まぁ、アイツを地獄に落とすのは最後にしてやるつもりだが。」
そんなことを話しながら、真樹と慶は教室に向かった。
-その日の夜-
「ふむ。用地買収は上手くいっている。後は邪魔な村人を皆殺しにして、地滑りによる事故に偽装すれば大丈夫だ。」
都内にある大和田コンツェルン総本部のビル。30階建てのビルの最上階にある会長室で圭一郎は資料を読みながらそう呟いていた。そんな時、部屋のドアがノックされる。
「入りたまえ。」
圭一郎がそう言うとドアが開く。しかし、入ってきたのは会社関係者ではなかった。圭一郎は顔をしかめながら聞く。
「何だお前らは?」
「警察です。大和田会長。あなたに逮捕状が出ています。」
入ってきたのは警察だった。そして、圭一郎に逮捕状を見せたのだが、当の本人は鼻で笑いながら一瞥した。
「逮捕状だと?フン、愚かな。私は逮捕されるような人間ではない。何せ、世界のトップである大和田コンツェルンの会長なのだから!」
「残念だが、その神話は崩壊した。村人を虐殺した強引な地上げと用地買収、通販サイトの法外な入会金と年会費。関連会社の従業員へのパワハラや不正会計。誤魔化しても無駄だぞ。お前の執事が全部はいたからな。」
「く、くそう…、山本め、余計なことを言いやがって。」
立場が悪くなり始めた圭一郎は、はお食いしばりながらそう呟いた。しかし、すぐに警察の方を向いて言い放つ。
「フ、フン!大和田コンツェルンの力をなめるなよ!私は世界中の警察だって金の力で手玉にとれるんだ!これ以上何かしようものなら、お前たちの頸を飛ばしてやる!」
「残念だが、それはできない。お前から賄賂を受け取っていた警察官たちは、徹底的に調べ上げた上で全員を処罰した。もうそんな威勢を見せても無駄だぞ!」
「そ、そんな…。そんなことはあり得ない!」
「話は署で沢山させてやる。あなたを、殺人、脅迫、詐欺、横領の容疑で逮捕します!」
「こ、この私が!何かの間違いだぁ!」
どうしても負けを認められない圭一郎は、そう叫びながら警察に連行されていった。
こんばんは。
かなり急展開になりました。
もうすぐこのエピソードもクライマックスです!
次回もお楽しみに!




