第311話 恐ろしいのは誰だ?
こんばんわ。
久々に夜間更新します!
-17:00 東京都港区 列島テレビ本社にて-
「ちょっと、どういうことよこれ!」
都内にある大手テレビ局、列島テレビ本社内にある楽屋の一室。その中で、派手な衣装を他取った女性が数人の男女を怒鳴りつけていた。
「申し訳ございません!」
「謝ってすむなら警察はいらないわ!この私、大和田美千代に失礼を働くのは死刑レベルの大罪よ!」
若い男性を怒鳴りつけているその女性。彼女こそ大和田裕也の母で、女優やモデルとしても活躍していた大和田美千代である。この日美千代はバラエティのスペシャルに出演する為にテレビ局を訪れており、今は楽屋での待機時間だった。そんな彼女は物凄い剣幕で若い番組スタッフ数人に詰め寄っていた。
「お弁当にはシイタケじゃなくってマツタケを入れてって言ったわよね!それに、楽屋の空気がかび臭いわ!こんな所で30分も待てって言うの?!」
「しかし、美千代様!今年はマツタケが不作で、入手が困難になっております。それに、この楽屋は今朝掃除したばかりです。」
今度は若い女性スタッフが弁明する。どうやら美千代は楽屋で出された弁当の中身と、室内のにおいが気に入らない様だった。因みに美千代がテレビに出演する際は各局に彼女専用の広々とした楽屋が用意されており、弁当も他のスタッフや出演者とは全く違う特注品が用意されている。
「うるさい!言い訳なんて聞きたくないわ!上層部に言って、あんたたち全員懲戒解雇にしてやるから!あ、再就職しようと思っても無駄よ!私の力で日本中の企業に圧力掛けて、どの会社にも入れなくしてやるから!」
「そ、そんな…!」
「申し訳ありません、二度としませんので!」
「お許しください!」
「うるさい!あんた達を首にしない限り、今日の収録でないから!」
美千代はすぐにテレビの上層部を呼びつけ、愚痴をこぼし続けた。その結果、番組に穴を開けたくない上層部の判断で、美千代の意見がすんなりと通った。
「申し訳ないけど…そういう訳だから。今までご苦労さん。」
社長は苦笑いしながらそう言った。こうして、その場にいた若手スタッフたちは全員即懲戒解雇になったのだった。
「おーっほっほっほ!それでいいのよ!テレビ業界で私に逆らえる者なんかいないんだから!大和田家の夫人を舐めないでもらいたいわ!」
大和田家の影響はテレビ業界でも絶大だった。
一方その頃、大和田家では…。
「申し訳ありません、坊ちゃん!思ったより早く気づかれました!」
広々とした大和田亭のリビングで、ジュースを飲む裕也に頭を下げた執事の山本。裕也の方も少し悔しそうな表情を浮べた。
「くそぉ、湯川め…。もう少しで丸焼けにできたのに…。お前がしくじるとはな…。」
「私としたことが、初めて殺人に失敗しました!面目ありません。あの湯川という少年、只者ではなさそうです!」
「感心するな!俺だってそんなことわかってる!」
「警察にも火の不始末ではなく、放火だということがバレているようです。どういたしましょう?」
ぺこぺこと頭を下げる山本。実は、真樹の家のガラスを割ったのも火をつけたのも執事の山本であった。裕也は持っていたからのペットボトルを握りしめながら言った。
「仕方ねぇ…。顔はバレてねぇんだろ?」
「はい!カモフラージュは完璧でしたので!」
「じゃあ、アイツんちの近くに住んでいて、お前と背格好が似たやつに擦り付ければいい。山本ならできるだろ!」
「はい、お安い御用です!坊ちゃんの頼みを、こんな所で失敗する訳にはいきません!」
「よし。その後は湯川の家のジジイとババアを消して、最後にアイツを山に埋めるなりすれば完璧だ。」
大和田家としては、真樹を消すことに関して諦める様子はなさそうだった。
そして、真樹の方も…。
「とりあえず、これが証拠映像になります。ばっちり映っているでしょ?」
ここは真樹の地元である千葉県警佐倉警察署。真樹は今回の事件を捜査する刑事たちに隠しカメラで撮った映像を見せるために一人で警察署を訪れていた。
「こ、これは…。」
「顔は見えないが、映っている男性の単独犯で間違いなさそうだな。」
刑事たちは映像を見ながら頷いている。そんな刑事たちに、真樹は更に続けた。
「まぁ、これだけじゃ完全に犯人を特定するのは難しいでしょう。ですが、この機能を使うと…。」
真樹が映像の横にあるアイコンを捜査すると、映っている犯人と思しき男性の骨格がサーモグラフの様に浮かび上がった。更にモードを切り替えると、全身の静脈の流れなども見ることが出来るようになった。
「このカメラは、知り合いから貸してもらった超解像度スコープ搭載カメラです。これでそう探しやすくなると思います。」
そう説明した真樹。実は真樹が飯田にカメラを貸して欲しいと頼んだ際、飯田は相手が大和田家だと簡単に証拠を残さないと踏んだ。そこで、最新型の構成のカメラを真樹に課すことの下のだった。さらに、音声もかなりはっきり録音されており、呼吸音に含まれるわずかな犯人の声も録れていた。
「ちょっと、各県警のデータベースと照合してきます!」
刑事の一人がノートパソコンに映像の解析データをコピーし、近い人物を絞り込んでいく。そして、およそ10分後…。
「警部!有力候補が一件引っ掛かりました!山本友紀夫。あの大和田コンツェルンの大和田会長の右腕で、現在は執事をしている者です!」
刑事の言葉に真樹はうんうんと頷きながら言った。
「やっぱり大和田家の差し金でしたか。あ、刑事さん。実は僕の学校の同級生に大和田コンツェルンの御曹司がいて、学校じゃ対立しています。向こうは僕に死んでほしいと思っていて今までも随分嫌がらせを受けましてね。まぁ、あくまでも推測ですけどそいつが執事に頼んで僕を爺ちゃんと婆ちゃん諸共、火の不始末の火事で焼死したように見せかけるつもりだったんでしょう。うち、木造なんで全部燃えて証拠が残らないと踏んだところでしょうか?」
真樹は冷静にそう刑事たちに質問した。真樹の説明を聞いた刑事たちは難しい顔をしながら話した。
「確かに、これは有力な証拠ですね。」
「しかし、大和田家か…手強いな…。」
「簡単には捜査させてもらえなそうだな…。」
「警察の上層部ですら、大和田コンツェルンに頭上がらない人もいるくらいだからなぁ…。」
大和田コンツェルンの影響は警察にまで及んでいた。かなりの何捜査になりそうだったが、真樹は真顔のまま刑事たちに言った。
「刑事さん。無茶は承知でお願いしますが、必ず犯人を捕まえてください。僕も何かわかったらいくらでも情報提供しますから。」
そう言い終えた後、頭を下げた真樹。そして、心の中でこう呟いていた。
(大和田には金と容姿があるかもしれないが、俺には頭と頼れる仲間がいる。犯人も分かったことだし、後はだるま落としの様に順番に崩すだけだな。)
大和田家の考えも恐ろしいが、真樹の頭の切れ具合の恐ろしさも十分に伝わるような心の声だった。
こんばんわ。
今回も壮大なエピソードになりそうですが、グダグダにならないために展開を少し早めにしました。
次回もお楽しみに!




