第309話 真樹、本気で怒る
こんにちわ!
今月最後の投稿です。
真樹の家のガラスが何者かに割られる事件が発生した。幸い、割られた時はみんな不在で家の者も何も取られていなかったため、被害自体はそこまで大きくはなかった。しかし、その翌日。真樹が寝る前に家の中から異臭がすくことに気付き、1階に降りてみると妙に熱く感じだ。外を見てみると、なんと家の外の壁が炎を上げて燃えていたのだった。
「おい!爺ちゃん、婆ちゃん!マジで早く起きろって!」
「ん~。何だよ真樹、こんな夜中に…。」
「せっかく寝ようとしていたのに…。」
「バカ!そんなこと言っている暇なんかねぇんだよ!火事だよ、火事!家が燃えてるんだっつーの!」
「「ええっ!」」
真樹に起こされた正三と多恵は、彼の言葉に驚いて一気に目が覚めた。そして、3人で火が出ている外の壁を見ると、その状況に愕然としていた。
「ほ、本当だ…家が燃えている。」
「どうしましょう、おじいさん?」
正三と多恵は燃える家を見て完全にし好が混乱していた。そんな中、真樹はすぐに携帯電話を取り出して消防局に通報した。日はみるみる巨大化し、最初は人間の子供位の背丈だったが、5分で3倍ほどの大きさになった。数分後に消防隊が駆けつけ、すぐに消火作業が始められ、20分ほどで鎮火は完了。幸い発見が早かったので大事には至らなかったものの、壁の半分以上と屋根の一部が真っ黒に焦げてしまった。当然ながら、近所の人たちは何事かと集まってきた。
「湯川さんの家、火事だって。」
「何でまた、こんな時間に?」
「昨日は窓ガラスが割られたらしいわよ。」
「怖いわぁ、一体何かしら?」
そんなふうに近隣住民の間にも恐怖心が芽生え始めていた。
「とりあえず、日は完全に消し止めました。発見が早かったので何よりです。」
「お騒がせしました。」
「ありがとうございます。」
「助かりました。」
真樹、正三、多恵の3人は消防隊員に深々と頭を下げながら礼を言った。その数分後には前日と同じ警察官たちが到着し、真樹達に事情聴取をする。
「他の家に被害がない所を見ると、犯人は間違いなく湯川さんのお宅を狙っています。同一犯の可能性も高いでしょう。何か心当たりは…?」
「いやぁ、ここまでされる言われは…。」
「わしは何も知らん。」
「私だって…こっちが聞きたいくらいよ。」
真樹、正三、多恵は首を振りながらそう答えた。その後も、消防隊の確認作業や警察たちの操作が行われ、ボヤ騒ぎはこれでおしまいとなった。もう少しで焼け死にそうになった真樹達は九死に一生を得たのだ。
その翌日。
「真樹、ニュース見たよ!あれ真樹の家だよね!おじいさんやおばあさんたちは大丈夫だったの!」
教室にて、慶がとても心配そうな顔で真樹に聞いた。真樹は少し疲れ切った表情で答える。因みに、昨日の事は既にニュースの速報で放送されており、学校中の噂になっていた。
「家の外壁と屋根が少し焦げた位だからな。宿無しにはならなかったぜ。前の日に家のガラスが割られた次は火事とか、やってられん。」
真樹はがそう言うと、今度は杜夫と伸治が驚きながら言った。
「マジかよ。真樹の家にそんなことするとは、許せんな。」
「ああ。そんな凶悪犯、さっさと警察に捕まって欲しいぜ!」
そして、美緒と武司も険しい表情で続く。
「にしても最低ね、その犯人。ガラス割った上に家に火をつけるとか。一体何なのよ?」
「今度俺が護衛してやろうか、真樹?また来たらぶっ飛ばしてやる。」
皆に心配された真樹は顔を上げて言った。
「心配してくれてありがとうな、みんな。あと武司、危なすぎるからやめとけ。」
そう話していると、教室のドアが勢いよく開く。そこには裕也が大勢の取り巻きの女子を連れてきてご機嫌そうな様子で立っていた。
「よぉ、湯川!聞いたぜ?お前の家燃やされたんだって?貧乏親無しで、家も燃やされるとか終わってるな、お前!」
裕也は真樹を挑発したが、真樹は呆れた表情で適当に返す。
「余計なお世話だ。そのデカい子耳障りだから、引っ込んでてくれ。」
真樹の適当な返事に対し、裕也は逆上し始めた。
「あぁ?今朝のニュース見て、みんなお前が焼け死んでいるの期待してたのに、ノコノコ無傷で学校来やがって!今すぐそこに土下座しろ!そして『生きて帰ってすみませんでした』って謝罪しやがれ!」
裕也の言葉に他の女子生徒達も便乗し始めた。
「そうよ、学校の癌細胞!」
「お前が死ねば、世界中の女性が喜ぶんだよ!」
「早く謝れよ、糞湯川!」
「謝罪しないなら、今度は私が焼き殺してやる!」
好き放題言い続ける裕也や取り巻きの女子たちに、慶と美緒の堪忍袋の緒が切れた。
「ちょっとみんな!いい加減にしなよ!」
「こんな倫理観無い会話しかできない方が終わってるわ!」
「その通りよ!」
ふと後ろから声がすると、そこにはホームルームをしようと教室に来た担任の立石美咲が鬼の形相で立っていた。
「生徒の家が火事になったのに喜ぶなんて、うちの生徒として恥ずかしくないの?あまりに酷いようなら、先生もあなた達を処分することを考えるわ。」
立石がそう言うと、他の生徒はゾロゾロ自分の場所に戻って行った。
「チッ。糞不細工教師が!お前も俺の力で今度こそ首にしてやる。」
裕也はそう捨て台詞を言い、教室に戻って行った。そんな時、杜夫、伸治、武司の3人は真樹を宥める。
「真樹、大丈夫か?気にしなくていいぞ。」
「ああ。あんな馬鹿女の言うことなんか無視、無視。」
「せっかく学校が身売りされて、空気が良くなったんだ。あんなの相手にすんな。」
宥めた3人に、真樹は真顔のまま答えた。
「とりあえず、俺や爺ちゃん婆ちゃんは助かったから気にしてない。だが、そろそろ本気で仕返ししないとな。」
意味深な言葉を残し、真樹はこの日も学校生活を送るのだった。
-同時刻 静岡県警下田警察署-
「ご遺体の確認をお願いします。」
警察署内の霊安室で、立ち合い警官が二人の男女にそう言った。一人は年配の女性、もう一人は30代前半くらいの男性である。顔にかかっていた布が取られると、二人は泣きながらすがった。
「あ、あなた…どうしてぇ…!」
「親父!嘘だよな!目を開けて嘘だと言ってくれよ!」
遺体は先日伊豆半島沖で変死体となって発見された、坂田工業の社長である坂田次郎氏。今回は遺体の確認の為に花子夫人と長男で役員の 雄一氏がやって来たのだった。立ち合い警官が説明を始める。
「上着に遺書のようなものが入っており、内容から推測して業務の行き詰まりでノイローゼになり、自殺した可能性が高いとの事です。」
「そんなはずありません、あの人は自殺するような人じゃありません!」
花子夫人は涙を流しながら強くそう言い切った。長男の雄一氏も反論する。
「うちは大手じゃないですけどね!経営にもそこまで困ってないし、親父は新技術を開発して、これから特許取ろうとしてたんだぞ!何で親父が自殺するんだよ!」
警察は自殺の可能性が高いと踏んでいたが、花子夫人と雄一は納得していない。その後、所定の手続きを終えた帰りに、長男の雄一が何かを思いついたかのように言った。
「そうだ!間違いない!大和田グループだ!親父が死んだ途端に、親父が取るはずだった特許を自分の物として強引に買い取って、会社も勝手に傘下に入れられた!今回の事は、大和田グループが1枚噛んでいるに違いない!」
そう言い切った雄一。これが、後に発生する大騒動の幕開けになるなど誰も思わなかった。
こんにちわ!
暑くて頭がぼーっとして、アイディアが思いつかないことも増えてきましたが、しっかりと書いていきたいと思います!
それではまた8月に!




