第300話 ようこそ水戸大学!
こんばんわ!
記念すべき300話目です!
真樹と飯田の手によって、大谷津学院理事長の上野と校長の日暮里、更にこの二人に賄賂を渡して自身が経営する塾生を裏口入学させて無理矢理合格実績を上げようとした山下が逮捕された。無論、このことはすぐさま全国にトップニュースとして報道されて…。
『速報です。学校の不祥事を隠蔽するのに不都合として、男子生徒一人を不当退学しようとしたとして、学校の校長と理事長が逮捕されました。逮捕されたのは、千葉県成田市にある学校法人大谷津学院の理事長である上野富恵容疑者(67)と同校校長の日暮里香里容疑者(59)です。上野容疑者たちは、学校内で起こる不祥事を自力で解決していた3年生の男子生徒を隠蔽の邪魔と判断して不当に退学しようとしており、更に男子生徒の担任教師と所属する野球部の顧問に対しても、生徒の退学に反対なら教員免許を剥奪すると脅迫していたとの事。更に、学校の運営費用も行きつけのホストクラブの料金として横領していたことも発覚しました。調べに対して両容疑者は「学校の人気が下がり続けるのが辛かった。」「何でも暴露する男子生徒を排除すればどうにかなると思った」と供述。更に、千葉県内の学習塾から賄賂を受け取り、裏口入学させようとしていたことも発覚。それにより、千葉県で学習塾の塾長勤める山下明子容疑者(55)も贈賄罪の容疑で逮捕。調べに対して、山下容疑者は「近頃合格実績が下がってきておりお会いになった。大谷津学院への合格実績が上がれば塾の経営が単体になると思った。」と供述。警察では、3人の容疑者に対し、更なる余罪が無いか調査を進めております。』
大谷津学院及び山下塾の評判はもはや地に落ちたも同然だった。
-翌日 千葉県内の刑務所にて-
「上野、日暮里。2人とも面会だ。本来なら一人ずつが基本だが、今日は特別だぞ。」
同じ刑務所に収監された、上野と日暮里に対して看守がそう言った。逮捕されてすっかり落ち込んだ二人は大人しく看守に従った。そして、看守同行の元、面会室に連れて来られたのだが、そこにはすでに3人の面会者が待っていた。
「なっ!」
「あんたはっ!」
そこで待っていたのは、真樹と弁護士の岩本、更に水戸大学の理事長である笠間甚五郎だった。2人を見て真樹が煽るように言った。
「どうも。惨めですね、理事長に校長。どうですか?排除しようとしていた人間に排除される気分は?」
真樹に煽られて、上野と日暮里は怒り始めた。
「あ、あんたって男は…!どこまで私たちに楯突くつもりなの?お陰で、こっちの人生滅茶苦茶じゃない!」
「こんなに人を不幸にして楽しい?余計なことばかりして!だから学校中の女子生徒から嫌われて、学校の癌細胞なんて言われるのです!少しは素直で愛想のいい大和田君を見習いなさい!」
なんとしても真樹を悪者にしたい上野と日暮里。そんな中、弁護士の岩本が厳しい口調で話し始めた。
「どうも。湯川君の弁護士の岩本彬です。はっきり言いまして、お二人の言動は自分勝手以外の何物でもありません。学校内で不祥事があれば、真摯に対応しなければならないのにそれを隠蔽するなんて言語道断。さらに、解決に努めた湯川君を都合が悪いからと退学にしたり、立石先生や関屋先生の教員免許剥奪までちらつかせるなんて、明らかに常軌を逸しています。世界中の弁護士も、あなた達なんて弁護する気なんてならないでしょう。」
岩本にそう言われて、上野と日暮里は言葉を失った。更に、水戸大学理事長の笠間も呆れた口調で二人に尋ねる。
「お二人の考えは良く分かりました。私には全く理解できない考えなんですが、お二人にとって学校教育とはどのような物なのですか?」
笠間の問いに上野と日暮里が不満そうに答えた。
「何よ。田舎の三流大学の分際で…。そうね…あえて言えば世渡りが上手い人を育てる事かしら。愛想がいいことに越したことはありません。」
「どんなに優秀でも、空気を読めない人間は周りを不愉快にするだけです。なので、目上の者には忠実に従い、下の物をこき使える人が上手く人生送れるので、そのような人を教育するのが正しいのです。舐められて生きるものには不幸しかありません。」
二人の答えに対し、笠間は呆れながら言った。
「話になりませんな。あなた方は教育者ではなく、ただの独裁者です。我が水戸大学では、教育者たるもの人の見本たれということをモットーにしています。あなた達みたいな自己中な人間が学校のトップに立っていては、罪もない生徒や教職員が可哀想です。私が全経営権を引き継いで、大谷津学院を真っ当な学校に立て直します。」
笠間の鋭い指摘に対し、真樹も続くように言った。
「そう言うこと。あんたたちは超えてはいけない一線を越えた。世間の反応を見る限り、もうあんたたちの味方はいない。今回は刑事告訴は避けられませんが、さっさと学校の経営を水戸大学に移管するなら、民事裁判を起こさないつもりでもいますがね。」
真樹は退学を盾に脅迫された事を刑事告訴するつもりだが、大谷津学院の水戸大学の身売りを認めるなら民事裁判は起こさないつもりでいた。当然ながら、上野と日暮里は反発する。
「そんなの…認められるわけないでしょ!大谷津学院は私たちの物よ!」
「私たちに嫌がらせするだけでなく、学校まで乗っ取ろうなんて…湯川真樹、あなたは悪魔よ!今すぐ死になさい!」
逆上する二人に対し、岩本は呆れ口調で言った。
「はっきり言います。お二人に関しては、正直どの弁護士が弁護した所で敗訴は確定でしょう。反発すればするほど罪は重くなると思うんで、湯川君の提案に乗るのが身の為ですよ。」
更に、笠間も続いた。
「正直、あなた達が学校経営を手放すとは思っていませんでしたが、もう諦めましょう。うちは買い取りの為にいくらでも出すので、さっさと手を引いてください。まぁ、それも賠償金として消えるでしょうからあなた方の手元には雀の涙ほどの額しか残らないでしょうけどね。」
最後に、真樹は二人に対して止めの言葉を投げかけた。
「残念だったな。お前らの独裁国家もこれで崩壊だ。さっさと地獄に落ちな。後は俺たちと水戸大学で最高の学校に立て直してやるから、安心しろ。」
「そ、そんな…。うちの伝統がなくなるなんて…。」
「わ、私達の大谷津学院が…。」
がっくりと項垂れて膝から崩れ落ちる上野と日暮里の二人。その後、面会終了の時間が来て、二人は看守によって牢屋に連れ戻されたのだった。
刑務所を出た後…。
「いやぁ、爽快爽快。あの気に食わない二人が絶望する顔見れて最高だぜ!」
岩本、笠間と歩きながらそう言った真樹。岩本も微笑みながら真樹に言った。
「上手くいって良かったよ。あの二人はどうあがいても絶対に許されないだろうね。もう心配することはないもないよ。」
さらに、笠間も続いた。
「湯川君。随分辛い思いもしただろう。だが、安心したまえ。我が水戸大学が大谷津学院の経営を引き継ぎ、誰もが過ごしやすい最高の学校に立て直して見せるから。」
親身に話を聞いてくれた二人に対し、真樹は深々とお辞儀をしながら言った。
「お二人共、本当にありがとうございました。僕も、残りの学校生活充実させます。もう、頭が上がりません。」
こうして、真樹は上野と日暮里という独裁者を大谷津学院から追放することに成功したのだった。
3日後。大谷津学院では臨時集会が行われることになり、全校生徒が体育館に集められていた。何事かとざわつく生徒たちの前に、一人の白髪交じりの男性が壇上に現れ、マイクを持って話し始める。
『皆さん初めまして。今日からこの学校の理事長に就任します、学校法人水戸大学の友部京四郎と申します。本日より、大谷津学院の経営は、水戸大学が引き継ぎます。』
新理事長に就任した友部という男は、大学では理事長の笠間の右腕的存在だった。大谷津学院の新理事長の就任に関しても文句ひとつ言わず、快く引き受けている。友部は更に続ける。
『えー、もう新年度が始まっているので今年度は大谷津学院として運営致しますが、1年生と2年生の皆さん、聞いてください。来年度は正式に我が大学の付属校として学校名を水戸大学付属成田高校に変更いたします。そして、制服も来年度より新しいものに変更いたします。デザインは決まり次第全校生徒に通知いたしますので、よろしくお願いいたします。』
あれから、上野と日暮里はどうあがいても勝ち目がないと思い、水戸大学への学校経営の完全移管に同意した。一応は身売りなので大学から譲渡金を受け取ったのだが、それも全て真樹や立石、関屋への慰謝料に消えたので、二人は一文無しに。学校施設に関しても全て水戸大学に名義が移管されたので、大学としては最低限の負担額で念願の付属校設置に成功したのだった。来年度から制服も学校名も変更されることが決まったが、真樹は自身の退学も阻止し、学校の倒産も防ぐことに成功したのだった。そんな真樹は壇上を見ながら微笑んだ表情で言った。
「よかった。これでもう、誰も不幸にならなくて済む。理事長と校長はざまぁないぜ。」
こうして、絶体絶命のピンチだった真樹は心強い協力者の助けもあり、完全勝利を収めたのだった。
こんばんわ。
そろそろ、次回のエピソードに入ろうと思います!
お楽しみに!




