第282話 別れ、そして始まり
こんにちわ。
遅くなりましたが、今月初投稿です!
-3月30日 成田空港第2ターミナル-
「みんな、わざわざ見送りに来てくれてありがとう!ここでの事は一生忘れません!」
成田空港の出発ロビーにある保安検査場前で元気よくそう言ったのは、台湾から大谷津学院へ留学してきた陳沙崙である。彼女は1年間の留学期間を終え、台湾に帰国するのだった。空港には真樹を含む野球部全員と、杜夫、慶、美緒、大神達の吹奏楽部1年と宮下達チアリーディング部1年、担任の立石、そしてオリエント通信のジャーナリストの飯田が見送りに来ていた。そして、野球部顧問の関屋が沙崙の前に出て言った。
「陳。うちの野球部の事が気になったら、遠慮なく連絡してくれ。夏休みとかに日本に来る時間があればうちの練習に顔を出していいぞ!」
「また大谷津学院に遊びに来て!先生歓迎するわ!」
「はい。関屋先生も立石先生も、ありがとうございます!」
笑顔で関屋にそう言った沙崙。その後伸治と武司もメッセージを送る。
「練習風景の動画とかも送るから、思うことどんどん言ってくれ!」
「やっぱり、お前のアドバイスがないと俺達寂しいよ!」
「伸治に武司も、ありがとう!じゃあ、私も台湾での暮らしぶりの動画送るわね!」
次は野球部1年の丈、登戸、千葉、幕張が泣きながらメッセージを送った。
「うう…陳先輩。台湾に帰っても元気でいてください!」
「俺たちは先輩が支えてきたことを無駄にしません!」
「また甲子園に行きます!」
「そして、今度こそ優勝したいです!」
涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃになった1年達を見て、沙崙は笑みを崩さず言った。
「みんな泣かないで!みんなが強くなったのは十分わかってるから。甲子園優勝、信じているわよ!」
沙崙がそう言った後、今度は慶と美緒が前に出てきて二人で彼女を思いっきり抱きしめた。2人とも目から大粒の涙を流している。
「ぐずっ…卒業まで一緒にいたかったけど…寂しいけど…また日本に来て一緒に遊ぼう!」
「私達も…台湾行くから…だから…元気で頑張って…!」
泣き続ける二人に沙崙はそれぞれの頭をなでながら優しく言った。
「もう、こんなに泣くなんてらしくないわよ、二人とも。うん。また日本に行きたいし、台湾来るならもちろん大歓迎よ。私の地元、台南は美味しいもの沢山あるし!慶は陸上、美緒はバレーを引き続き頑張って!」
彼女にそう言われても、慶と美緒の涙はまだ止まらなかった。今度は大神と宮下が前に出てきた。やっぱり彼女たちも涙を流している。
「陳先輩。留学お疲れ様です。これ…持って行ってください!」
「吹奏楽部とうちのチア部で寄せ書きしたんです。どうぞ!」
そう言って大神は沙崙に寄せ書きされた色紙を渡した。色紙を受け取った沙崙は嬉しそうに言った。
「嬉しい!ありがとう!家に飾って家宝にするわ!」
沙崙は色紙を鞄の中にしまった。そして、最後に真樹と杜夫が出てきた。
「沙崙。辛いこともいっぱいあっただろうが、よく乗り切った。国は離れていても俺たちは応援している。日本での1年間を誇りに思って欲しい。」
「そうだぜ。俺だって沙崙と一緒に遊んだりして楽しかったからな。俺もいつか台湾行きたいぜ!」
真樹と杜夫の言葉に沙崙はとても喜んだ様子の笑顔を見せた。と、同時に目には微かに涙が溜まっている。
「真樹。今まで本当にありがとう。真樹がいなかったら、どうなるか分からなかったし、感謝してもしきれないわ!杜夫も、ありがとうね!台湾にも写真スポット沢山あるから、是非来て欲しいわ!」
友人たちが一通り別れの言葉を送った後、ジャーナリストの飯田が言った。
「陳さん。台湾帰っても頑張ってね。日本で取材できなくなるのは寂しいけど、僕も陳さんを応援してるから!」
「はい!飯田さんも本当にありがとうございました!」
飯田にも感謝の言葉を述べた沙崙。最後に、飯田と杜夫のカメラでそれぞれ集合写真を撮影した所で空港にアナウンスが流れる。
『中華航空、13:35発高雄行は間もなく搭乗手続きを始めます。ご搭乗のお客様は、速やかに保安検査をお願いします。』
沙崙が乗る飛行機の事だった。飛行機の時間が近づいた沙崙は最後に全員に手を振りながら言った。
「みんな!本当にありがとう!これからも大谷津学院の事は忘れないから!」
沙崙はそう言って保安検査場に入り、検査を終えて搭乗ゲートへ向かった。そして、彼女を乗せた飛行機はそのまま台湾、高雄空港に向けて飛び立っていった。大谷津学院一同は彼女が保安検査を受けるのと同時に展望ラウンジへ移動し、飛行機が飛び立つと皆が声援を送った。そんな様子を見た飯田は心の中で呟いた。
(陳さん、湯川君たちのおかげで楽しい留学になってよかったな。それはよかったけど、大谷津学院の方は大丈夫なのかな…。)
彼には何か引っかかることがあったようだ。
-4月8日 始業式当日-
「行ってきます。」
制服に身を包んだ真樹はいつも通り家を出た。天気は良く、春風が温もりを運んできている。そんな府だまりの道を歩いて真樹は駅に向かい、いつもの電車に乗って成田駅に到着した。そして、改札を出た真樹に慶が話しかけてくる。
「おはよう、真樹。」
「おう。オニィ。おはよう!」
「今日から三年生だね!受験とか、どうしよう…。」
「進路か。そう言えばそうだったな。」
「真樹はもう志望校決めたの?」
「まだかな。まあ、ゆっくり考える。」
「僕もそろそろ決めないと…ああ、悩むなぁ。」
そんな話をしているうちに学校に到着した二人。しかし、真樹は今までの経験上、何か嫌なことが起るんじゃないかと薄々感じていたのだった。
こんにちは。
いよいよ3年生変です!
新年度も頑張ります!




