第276話 夢に向かって
こんばんわ。
このお話で、このエピソードは最後です!
自称人気女子高生ブロガー、香取真奈は敵対視していた木下希美の芸大入試を妨害すべく、都内の自然公園でこっそり迷惑行為を働き、合成写真を利用して木下に罪を擦り付けようとした。しかし、真樹と木下が実行犯を問い詰めた結果、香取の計画を知ることができ、杜夫達写真部の力を駆使して香取の証拠映像を抑えることにも成功。真樹の手によって香取は公園の関係者に取り押さえられ、そのまま彼女は警察に連行された。真樹達はしばらく公演を散策したり、写真を撮るなどしてからそれぞれ帰宅した。そして、真樹は帰宅後にテレビをつけると、ニュースの速報が放送されていた。
『今日午後、都内にある自然公園で枝を切る、進入禁止区域に入り込んで撮影をする等を繰り返したとして、千葉県の高校に通う少女が逮捕されました。逮捕されたのは、千葉県成田市の公立高校に通う18歳の少女で、警察の調べによると少女は公園を訪れた後、園内で栽培されている梅の枝をわざと切断し、その後は菜の花を踏む荒らす所を自ら撮影するなどの迷惑行為を行っていたとの事。その後、その様子に気付いた高校生に通報され、身柄を確保されました。調べに対し少女は、「嫌いな奴がいたから、そいつに罪を擦り付けたかった。自分の写真が一番人気であってほしかった。」と供述しており、容疑を認めております。また、少女は別の学校に通う友人と手を組み、芸大入試を志望していた千葉県内の少女の作品のデータを盗み出し、自身の作品として無断に学校に提出。被害者の少女が受験できなくなることに発展した事案に関しても容疑を認めており、警察では仲間の少女も含めて更なる調査を続けるとの事です。』
真樹はお茶を飲みながら、香取が逮捕されたニュースを真顔で見ていた。そして呟いた。
「どうもバカ女が逮捕されるニュースを見るのはスカッとするね。特に自分が少しでもかかわったものは。」
どこまでも容赦のない真樹のコメントである。しかし、何も人の逮捕を喜んでばかりいるわけではない。
「あのまま写真部の空気が重くなったままじゃ、杜夫がやりづらいからな。まぁ、良しとしよう。」
入学以来の友人の気持ちを考える心は持ち合わせていたのだった。
数日後。写真部の部室にて。
「先輩、今日が合格発表だって言ってたけど…大丈夫かな?」
杜夫は強張った表情でそう言った。木下はその後、何事もなく第一志望である千葉芸大の本試験を受けることが出来た。因みに、香取の仕業だと気づかずに木下を失格にした関東大学芸術学部の入試担当は後に彼女の家に謝罪に訪れ、二次募集の受験を勧めてきたが、第一志望の入試に集中したかった木下はそれを断った。そんな彼女を心配しているのは、杜夫の向かい側に座っている小林も同様だった。
「そうだよなぁ…。湯川先輩が解決してくれたって言っても、色々ドタバタしていたし…。」
二人は木下の事を信じている反面、結果がどうなるかすごく気にしていた。そして、しばらくすると部室のドアが開いた。
「「!!!!」」
2人が驚いて振り向くと、そこには木下がいた。
「公津君に小林君。何よ、そんな怖い顔して?」
木下は首を傾げながら二人に言った。杜夫と小林は少し声を震わせながら言った。
「い、いやぁ…。先輩、今日千葉芸大の合格発表の日でしたよね…?」
「あんなことがあったばかりですし…その…ちょっと気になったっていうか…。」
不安そうな二人を見て、木下は軽くため息をつきながら言った。
「なんだ、そんな事?結果なら今さっき見たわよ。」
「「「!!!!」」
木下の言葉を聞いた二人は、一瞬固まった。木下の方はスマホと受験票を取り出しながら言った。
「無事受かったわよ!色々あったけど、本当に良かった。湯川君にも感謝しないとね!」
彼女のスマホには大学のホームページに乗っている合格者の番号が映し出されていた。そして、彼女が持っていた受験票の番号が、ホームページの合格者一覧にもはっきりと載っている。それを見た杜夫と小林は一瞬沈黙した後…。
「やっ…!」
「やったー!」
飛び上がって喜んだ。杜夫と小林は目を輝かせながら木下にお祝いの言葉を掛ける。
「おめでとうございます、先輩!先輩なら、あんな奴の嫌がらせに負けないって信じてました!」
「俺もです!流石は我が写真部の誇り、木下先輩です!」
「もう、はしゃぎ過ぎよ!でも、嬉しいわ。ありがとう!」
木下も緊張の糸が解けたのか、穏やかな笑顔でそう言った。
「そうだ!先輩、そこ立って!合格の記念写真撮りましょうよ!」
「ええ~、いきなり?まぁ、いいわよ!」
杜夫に言われるがまま木下は部室の真ん中に立って、記念写真を撮ってもらった。そんな賑やかな写真部の様子を、部室の外から聞いている者がいた。そう、真樹である。
「これで写真部も平和か。しかし、俺は女性に味方する気はないが、どうも知らぬ間に女性を助けてしまうことがあるみたいだ。」
そう言った真樹。確かに真樹は筋金入りの女嫌いだが、智子、沙崙、慶、美緒、そして今回の木下も真樹が悪女を成敗した結果助かった女性である。そのことに関して少し複雑な思いを抱いていると、横から話しかけられた。
「真樹、ブツブツ独り言言ってるけど、どうしたの?」
真樹が振り返ると、そこには不思議そうな表情をした慶がいた。隣には美緒もいる。今は放課後で二人ともこの日は練習がないので、これから帰宅するようであった。
「ああ、写真部の事だ。杜夫の言った通り、佐倉駅前にいたバカ女が今回の事件の首謀だよ。」
そう言った真樹。それを聞いた慶は頷きながら言った。
「うんうん。いつ聞いてもひどい話だよね。勝手に逆恨みして、入試の邪魔だけでなく、迷惑行為の罪まで擦り付けるなんて…。」
呆れる慶に対し、隣にいた美緒も頷いた。
「撮影するなら、誰かに迷惑かけずに楽しくやるのが一番よね。妹も色々写真や動画投稿しているから、注意しておくわ。」
「少しは妹を信用してやれ。」
真樹は美緒にそう言った。美緒は少しムッとしたが、すぐ真顔に戻って言った。
「まぁ、でも…湯川君のおかげで犯人も捕まったし、先輩の入試が上手くいったみたいでよかったわ。湯川君、刑事か探偵の仕事が向いてるんじゃない?」
美緒の言葉に慶も微笑みながら続いた。
「真樹!僕もそう思う!僕も真樹に助けてもらったし、真樹が警察か探偵になれば、もっとたくさんの人が助かると思うよ!」
2人にそう言われた真樹は、相変わらず無表情で言う。
「仕事か…。まぁ、大学入って就職の時期になったら考えるわ。」
そう話した真樹だったが、遠くから彼を呼ぶ声がした。
「おーい、真樹ー!何やってんだよー!」
振り向くとそこには伸治がいた。この日は野球部の練習日でもあった。よく見ると真樹も部の練習着を着てファーストミットも手にはめている。更に武司と沙崙も続く。
「練習始まっちまうぞー!早く来いよー!」
「選抜近いんだから、今日からまたビシバシやるわよー!」
野球部の面々に言われ、真樹は「すまん。」と一声言った。そして、慶と美緒の方を向いて話す。
「じゃあ、俺は練習行く。オニィ達も気を付けて帰れよ。」
そう言って彼は伸治たちと合流し、練習に向かった。女嫌いなのに間接的に女性を助けていることに複雑な思いを抱きつつも、悪い気はしていない真樹であった。
こんばんわ。
もう少し派手に成敗してもらおうと思ったのですが、あっさりした展開になってしまい、申し訳ございません。
次回から新章です!
面白く書けるよう頑張りますので、今後もよろしくお願いします!




